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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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これは隊長と

「リセイ…! お前本当にどうしたんだ? まるで別人じゃねえか!」


療養を終えて復帰した第二隊の詰め所に現れたリセイを見て、レイが思わず声を上げた。


無理もない。レイほどは鍛え上げられていないとは言え、一緒にベルフ捜索に出た時のとは、体つきも顔つきもまったく違っていたのだから。


レイは幼い子供がいるので宿舎ではなく自宅で療養していたこともあって、初日にランニング中に転倒したりしたのを、それをハラハラしながら見詰めていたライラの様子と一緒に見て以降はまったく見ていなかったことも、驚かされる原因になっていただろう。


「確かに、たった二週間でこれとか、どうかしている」


少し頬を染めながら視線を逸らしながら、ライラもそう言った。


と言っても、彼女はここ二週間、ずっと宿舎からリセイの姿を見守ってきたのだが。


最初の頃こそ、


『ダメだ、こりゃ……』


と、リセイの体力のなさに呆れたりもしていたものの、十日目辺りから突然様子が変わり、


『おい! 無茶するな……!』


などと、明らかに無謀とも言えるオーバーワークにハラハラしてしまっていたりもしたのだった。


なのに、そんな彼女の心配とは裏腹に、リセイは、涼しい顔で他の兵士の三倍ほどの鍛錬をこなしていたのである。


もっとも、さすがにそんな短期間では効果的に体は鍛えられることはない。だからまあ、ギリギリ有り得る程度の変化ではあったものの、それでも滅多に見られるものでもなかった。


そもそも、兵士になろうかという者がいきなりこんな短期間で自らを鍛えようとはしない。見習いとしてくる以前からずっと鍛錬は積んでくるので、ここまでの変化を見る機会もないということだ。


ただ、当のリセイの方は、


「これで皆さんの足を引っ張ることもないと思います。だからよろしくお願いします!」


と、今度こそ迷惑を掛けずに済みそうだというのを喜んでいただけだったが。


腹に力が入った、しっかりした発声だった。


そんなリセイを、ライラはちらちらと視線を送りながら頬を染めつつ見ていた。


で、レイを含めた他の隊員達は、そんなライラを、内心ではニヤニヤとあたたかく見守る。


『これはこれは、隊長にもマジで春が来たかな…!』


などと思いながら。


正直、以前のリセイだと、腕は立つのにヒョロヒョロの雛鳥みたいでさすがにどうかと感じていたのだが、今のリセイなら、


『ギリギリ有り得なくもない』


と思えた。


で、実際に一緒に鍛錬をこなすと、それは確信へと変わる。


『マジかよ!?』


『バケモンじゃねえか!』


ジェインとデュラは、自分達を置き去りにして演習場を周回するリセイの姿に度肝を抜かれ。


さらに、実戦形式の<組手>でも、誰一人、リセイに膝をつかせることさえできないという事態に至って、


『いやもう、これは隊長とくっつけるしかないだろ!?』


と思うようになったのだった。



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