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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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出会い

古塩理生(ふるしおりせい)が駆け付けた時、その女の子は、<獣>に襲われていた。


『……獣……? ってか、魔獣……?』


一目見てそう思ったように、犬のようにも見えたその獣は、額から二本の角が生えた、いかにもアニメとかに出てきそうな<魔獣>ぽい姿をしていた。


けれどさすがに実際に目の当たりにすると迫力は画面越しに見るのとはわけが違った。大きさも、ラブラドールレトリバーよりも遥かに大きかった。二倍くらいはあるだろうか。


『助けなきゃいけないんだろうけど、こんなの、どうやったらいいんだよ……!』


と思う。


正直、怖かった。逃げられるのなら逃げたかった。でも、もう、その魔獣に自分も見付かってる。だから今から逃げ出したら自分の方に向かってきそうな気もして、動けない。


『頼む! どっか行ってくれ……!』


と、古塩理生(ふるしおりせい)は願った。


すると……


何分か(実際には何十秒かだろうけど)そうして睨み合ってると、いつしか魔獣の方がじりじりと下がり始めているのに彼は気付いた。


そして思う。


『あ…そうか。向こうも怖いんだ……


いかにも<魔獣>って感じの見た目をしてるけど、これがもしこの世界の普通の<獣>だったら……


動物って、たとえ猛獣でも基本的には臆病だって聞いたことがある……』


そう思うと少し余裕が出てきた。自分がこうして逃げずに騒がずに睨み合ってることが、向こうを怖がらせることができたのかもしれないと感じて。


「僕はお前を殺す気はない。逃げるんだったら逃げたらいい。でも、その子は置いていけ」


言葉が通じるとは思えなかったものの、なんとかそう口にしてみた。すると、その魔獣は、体はこちらに向けたまま、茂みの中に入っていってしまった。そして完全に姿が見えなくなると、がささっと音を立てながら走り去っていくのが分かった。


そうして気配が完全に消えたのを感じて、


「はあ~……」


と大きな溜め息が漏れた。今になって体が震えてきて、脚に力が入らなくて、その場に座り込んでしまう。


『よかったぁ……』


などと安堵しつつ思う。


『もしかしてこれが、あの<声>が言ってた、


<どんなことでも結果的にあなたの望むとおりになる>


っていう能力なのかな……』


と思った。


実際、『逃げて欲しい』と思ったのがそのとおりになったわけで。


すると、


「あの……大丈夫ですか……?」


不意に声が掛けられて、頭を上げる。視線の先には、さっきの女の子。


優しくて、ふわふわした感じの、いかにも柔らかそうな、本当にアニメのヒロインのような女の子が、彼を見詰めていた。


女の子は言う。


「もしかして、あなたがあのベルフを追い払ってくれたんですか…?」


『…ベルフ…? あの魔獣みたいなのの名前かな……?』


とか思いつつ、


「君こそ大丈夫だった……?」


なんとか訊き返すことができたのだった。



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