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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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申し開き

『黙っていなさい』


リセイを擁護しようとしたティコナをルブセンは毅然とした態度で制した。ただ横柄で横暴なだけじゃない、筋の通った<圧>がその場の空気をピリリと緊張させる。


でも不思議とリセイは自分がむしろ落ち着いていくのを感じていた。道理の通じない暴君のような支配者的な相手じゃないことが分かったからかもしれない。


さっきのティコナへの態度もそうだし、少なくとも彼女に対して酷いことはしないと思えたことも良かったのかもしれない。


何か問題があるとすればきっとそれは余所者である自分だ。右も左も分からない自分を助けてくれたティコナにもしものことがあったら、シンやミコナにも申し訳ない。あの優しい人達を悲しませたり苦しませたりしたくなかった。


だから責められるのなら自分だけでいいと思った。


そんな彼に、ルブセンは言う。


「お前は私が預かっているこの街の者に狼藉を働いた疑いが掛けられている。


なにかここで申し開きすることはあるか?」


どこまでも冷静で落ち着いたその問い掛けに、リセイも、


「あのトランって人とのことなら、向こうから絡んできたから僕は自分の身を守っただけです。


だけど、もし、それがこの国では<罪>になるって言うんだったら、そのとおりです」


と真っ直ぐ視線を返しながらはっきりと返せた。


こんなこと、向こうの世界じゃ絶対にできなかった。こんな感じで詰問されたらそれこそ頭が真っ白になってしまって何も言えなくなってしまったはずだった。


なのに、ここではこんな風に言えてしまった。


自分でも信じられない。でも、なんだかすっきりした気分だ。ずっと思い描いてきた<理想の自分>になれた気がしたからかもしれない。


そんなリセイの頭の中まで見通そうとするかのような鋭いルブセンの視線についても、しっかりと受け止められる。


この時、リセイがそういう態度が取れたのは、先も言ったとおり、その姿そのものが彼の<理想像>だったからだろう。そういう自分になりたいといつも思っていたから、それが具現化したのだ。


ここで理不尽な仕打ちにブチ切れて暴れるような姿を思い描いてたなら、おそらくそちらが具現化していたに違いない。彼に与えられていたのはそういう<能力>だった。


それは、どんな嘘も詭弁も退けてみせることを決意していたルブセンにとっても意外なものだった。明らかにやっと一人前になるかどうかという<若造>が自分の視線を真っ直ぐに受け止めきって、うろたえる様子さえ見せないのだ。


こうなるとルブセンとしても、言いがかりをつけて屈服させるような真似をするわけにもいかなかった。ここでそんなことをすればむしろ自分の方がこの余所者に『呑まれた』のを認めることになるのだから。



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