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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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戸惑いながらも

認識だけとはいえ元の世界に飛ばしたというのに自力で帰還し、しかも今度は、味方全体を強化するなど、これまで彼女が戯れに連れてきた<転生者>達には見られなかったことをやってみせるリセイに、クォ=ヨ=ムイは大喜びだった。


「あはははは♡ あははははっはははははは♡」


魔王の直上に浮かび、扇情的な恰好をして、淫猥な表情で高らかに嗤う得体のしれない女に兵士達は、


「なんだありゃ……!?」


「狂ってやがる……!」


などと口にして、戸惑いながらも魔王の軍勢であることは察し、指示がなくても、


<倒すべき敵>


と認識はした。


加えて、今はとにかく目の前の魔獣を倒さなければまったく届かないので、まずはできることに集中する。


その冷静さが、リセイにとってもプラスに働いた。彼らが狂乱に呑まれていれば、リセイもその影響を受けずにはいられなかっただろう。


『心は熱く、頭は冷静に』


とはいかなかったかもしれない。


この点でも、リセイはとても恵まれていたと言える。


出逢いに。


だから彼は、魔王との戦いにも集中できた。


「うおおおおおっ!!」


と声を上げ、自分の体とまったく同じ動きをする<透明な巨人>をイメージして、力を振るった。


舞い上がる土埃が月光を浴びて、巨人の姿をぼんやりと浮かび上がらせる。それはどこか、<巨大ロボット>のようにも見えた。


おそらく、リセイのイメージする巨人が、どうしてもロボット的なものになっているからだろう。


見る者が見れば、それこそ有名なアニメに登場する巨大ロボットであることが分かってしまう程度には。


しかし魔王の方も、無数の腕をまとめて巨大な腕にし、対抗する。


その力は完全に拮抗しているようだった。


魔獣の群れも、ライラ達が抑えている。


するとクォ=ヨ=ムイはそれを見て、


「頑張るわねえ、じゃあ、これでどう?」


邪悪な笑みを浮かべつつ、踊るように両手を振った。


瞬間、ライラ達オトィクの軍の背後に、地面から湧き出るようにして無数の魔獣が。


本当に出鱈目な力だった。魔王は自らが放つ魔素によって獣を魔獣に変えるのかもしれないが、クォ=ヨ=ムイはまったく何もないところから魔獣を生み出すのだから。


そうして生み出された魔獣は、背後からライラ達に襲い掛かるのかと思いきや、それには目もくれず、一斉に街に向かって走り出した。


ルブセンを含む、万が一討ち漏らした魔獣の一部が街へと向かった場合を想定して最低限の守りとして残した部隊しかいないそこへ、遥かに数が上回る魔獣の群れが。


それに気付いたトランが、


「やめろおおーっ!!」


と叫んだ。


その声がリセイにも届き、振り返る。


「な……っ!?」


しかしその時にはもう、ルブセン達が魔獣の群れに飲み込まれるようにして見えなくなるところなのだった。




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