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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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正解だったことが

行けども行けども廃墟ばかり。元は市場だったと思しき場所の突き当たりは船着場らしき施設だったものの、そこにも人の姿はなかった。多少人骨らしきものが散らばってるだけで。


たぶん、鳥や獣が遺体のほとんどを持ち去ってしまったとかなのだろう。


それを悟っても、不思議なくらいに気持ちは落ち着いていた。と言うか、この場合は『冷めていた』と表現した方が近いかもしれない。


正直、閉園したテーマパークのセットだと言われれば、


『すごく良くできてるな』


くらいの感想は抱いたかもしれないが。死臭こそは濃密なものの、リアルな<死>を感じ取るにはさすがに時間が経過しすぎていたのだろう。


その一方で、街に放置されていた日用品や建物そのものの造りから、オトィクの街とは少し違う印象があった。


<外国>なのか、それとも……


『一万何千年も暦が続くような世界だから、もしかしたら<過去>ってことも……』


という考えがよぎる。


ただ、地形的に見ると<山>までは結構な距離がある感じなので、ここがそのままオトィクの街になったというのとは違う気もする。


いずれにせよ、大きな手掛かりは得られそうにもなかったことで、まずは草原の方へ戻ることにした。


ここでは逆に魔人の少女の<餌>も得られそうになかったし。それを思えば草原の方がマシな気がした。


そうしてまたあの<粗末な小屋>がある辺りに戻ると、


「……?」


リセイはそのうちの一つに目が留まった。


何かが動いた気がしたのだ。


「え…と、まあ…いいか……」


「……?」


魔人の少女の方に目をやると少女も見上げてて目が合ってしまい、


『待たせておいた方がいいかな?』


と一旦は思ったものの、


『僕の傍にいてもらった方が安全か……』


そう思い直して少女と一緒に小屋の一つに近付いていった。


その小屋も完全に屋根が落ちていて壁も大きく傾き、とても人が住んでいるようには見えなかった。


と言うか、リセイが気になったのは、小屋そのものじゃなかった。その小屋の脇に小さく土が盛り上がった部分があって、そっちに意識が引かれたと言うべきか。


誘われるようにしてリセイがこちらに歩くと、


「!?」


ゾワッとした感覚が背筋を奔り抜けた。体の方が先に危険を察知したのだ。


が、さらに先にそれを察知して動いた者がいた。


「あ、待って…!!」


リセイが少女を制するために声を上げようとした時には、すでに、


「ガアッ!!」


少女は咆哮を上げながら<それ>の首筋らしきところに喰らいついていた。


彼女がレストランに現れた時に、敵意を向けて攻撃しなかったのは正解だったことがこれで確認できてしまった。


もし攻撃を仕掛けていたら、その瞬間にこうなっていただろうから。



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