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ナイトメア:落ちる銀嶺は夢の中 アイナ


 アイナはエレナという新たに生活の中に入ってきた存在を、警戒心も含め気にかけていた。

 ルフィナが『全員ナで終わる繋がりでまとまりもいいな!』などとお気楽であるというのもあってはなおさらだ。

 明るく細かいことを気にしない傾向のあるところがルフィナのいいところではあるとはアイナは思いつつも、もうちょっと警戒しろとも思う。

 全てを失ったような絶望した顔で転移してきたエレナを見つけたのはルフィナだった。

 現在は、パーティーを汲んで行動しつつも保護という形だ。


(あれは見たことがある)


 エレナという目が死んでいるようで、奥底で自分という炎がくすぶり続ける存在を、アイナは以前の日常の中で確かにみたことがある。

 それは少なくない数。

 あるいは、直接姿を見れるわけではないが大量に。


(自意識過剰で、被害者意識が強く、そのくせ……いや、そうだからこそ? 自分から突進するように自己アピールをする――珍しくもない、承認欲求が暴走しがちな人間。でもその通りだけでなく、それがねじ曲がった姿。見たことはあっても、予測はしづらい)


 年頃の少女らしい感覚で、見栄えのいい写真等をSNSで上げて少なからず満たされる気持ちになるような行為はアイナ自身したことがないわけではない。

 だが、恐らくエレナは写真映えのためなら躊躇なく迷惑がかかる行為をして、そして、自分ならそうして当然だ、文句をいうやつが間違っていると()()()()()()()()()で思うタイプだとアイナは観察と直感で見抜く。


 ――面倒な。


 と、正直アイナは思っている。

 今は、どうしたか()()てしまっていいるようで大人しいが、それが歪であろうがそのままでなく新しい支柱ができるのは推測だが断言できるレベルだった。

 エレナは年頃では珍しくもない、根拠なく見境ない自信を持っているタイプでもあるのがはしばしから感じ取れたが、それでも大人しい。実際、自信を持ってもおかしくない程度の容姿は確かにしているとアイナも思っている。アイナも、自分がある程度の容姿を持っているとは思っているし、そこに自信がないわけでもないからこそよくわかる。自分よりも深く、ナチュラルに他人を容姿で見下せるタイプだという事も。

 折れたからか、最初からそうなのか。

 どちらかはわかりはしない。

 しかし、感謝はどうやらしているらしい。そこがどうにもアイナには気持ち悪い。


(変なねじれ方をしている。事故承認欲求が強いくせに、他人を玩具か人形とでも思っているわかりやすいタイプなら、独断ででもはじいた。そうできた)


 助けた。

 良心に従って。他にも理由があって。

 それを間違いだったとは思わないし、思いたくない。

 ルフィナとはコンセサスが取れているわけではないが――アイナは、帰ることを一番に考えている。

 今までの現実に。

 今までの日常に。

 今思えば、圧倒的に守られていて平和だったあの陽だまりに。

 帰りたいと、願い続けて居る。

 ルフィナにしても、この状況に適合はしていていも『気持ち悪い』とは感じている発言をアイナはよく聞いている。

 ここから抜け出したいという事は、お互い口に出さなくてもわかる共通事項。


(ルフィナは()()()だった。直感に従って良かったといえる。合わないタイプらしい態度、言動だから躊躇したけれど――よかったと思う。友人になれた、と思う。ここから共にでて、日常でまた友人になれたらと思えるレベルの認識)


 アイナは奇妙に直感に囁かれるようなことがある。

 明らかに今までは避けてきたような人間に己から積極的に接したのはその直感がいったほうがいいと囁いたからで、そうしなければ嫌な予感もセットでついてきていたからだ。だから、苦手で、嫌で、ストレスが溜まる行為だろうが我慢した。

 打算ありきの汚い行為だと、もしかして内心を知られたら他人には言われるかもしれない。アイナにとってはどうでもいいことだった。

 誰しもが、苦手な相手というのはいるし、苦手な人間と接するのはストレスに違いない。

 それでも利害関係以上を結ぼうというなら、ストレスは必要以上に発生する。むしろ、ストレスがないという人間こそ信用ならないとアイナは思う。


(苛立つ発言は多かった。今でもないわけではない。考え無しすぎるところはいつも怒っている――それでも、会話を試みるだけで過剰にストレスを覚えることはなくなったし、楽しいと思えるタイミングも増えた。素直によかったと思う――けど、()()()()()()()()()()()。)


 直感が、見た瞬間から壊れた警報のように止まらない。

 頭痛が役目を終えられずにずっと残業している。

 回復薬で癒すことも、スキルという超常の力で癒すこともできない、魂という内部から発せられる警報。

 しかし、追い出す事ができないでいた。


(ルフィナと別れることは避けたい。割り切れていると思ってた、そんなことはなかった)


 アイナは日常に戻りたい。

 だから、戻った時のことを考えて体が変化するようなスキルは実装しないし、止める。

 体に異常に効果があるようなアイテムは使用しないし、止める。

 同じ人間を殺し慣れた場合日常に戻れないと考えているから、しないし、止める。

 盗みも、争いも、今までの日常を基準に考えてきたのだ。

 モンスターを殺すのは、狩りをするように。

 あまり慣れすぎることはしないように、せめて精神的にそれが当たり前だと思いすぎないように毎日自戒に努めてきた。

 努力をしている。

 帰るための努力にダンジョン探索を。

 帰った時のための努力に浸りすぎないことを。

 それでも、それはここで出会ったものとの友情を破壊したいという事ではない。

 恐れている。アイナは、嫌われることを。

 

(壊されてしまいそう)


 情がない人間だと思われたくはない。

 エレナを助けたのは、そういったこともあった。


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