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国境地帯の攻防

魔物の制圧が一通り済んだ頃、軍の本隊が先遣部隊に合流した。冒険者達も前線基地に移動する。此処で態勢を整えて、明日にも国境に向け進軍開始するだろう。


基地は、冒険者協会が大規模討伐の時に設ける前線拠点と似た様なものだが、規模が大きい。それに、軍人ばかりなので冒険者の集まりとは違い、統制がとれている。


基地の休息エリアの隅に、持ち込みの個人用テントを張って一息つく。相変わらず二人用テントに三人でぎゅうぎゅう詰めだ。他の面々は、トールの持ち込んだ大型テントに収まった。


「幾ら何でも狭いよな。テントの買い替え、考えておこう」

「えー、コレでいいよー」

「俺もこれで構わん」

「……仲いいな、お前ら……」


ステフとライが結託して、狭いテントを維持しようとする。何を企んでいるやら、分かる様な、分かりたくない様な。


暫くすると、休息エリアに伝令が来た。予め放っていた斥候が戻って来たというので、軍議が開かれるという。情報を求め、我々冒険者も軍議に顔を出した。


「隣国側の兵も、国境の向こうに集結しております。が、我が方と比べ、戦力的にかなり劣る数と装備で、全体的に疲弊している様であります」

「魔物の出所はあちら側だ、当然被害もこちらを上回るだろう」

「最前線の兵力を見るに、敵軍は戦略的撤退を狙っているのかも知れない。こちらの兵を魔物の出所にぶつけて潰し合えば重畳、少なくとも自軍のみで魔物に対処するのは避けられる」

「ならば、素直に誘い込まれてやる事も無かろう。国境線を越えないまま適当に相手をしていれば、魔物相手に敵軍は勝手に自滅する」

「その後でゆっくり国境線を押し上げれば良い。魔物の出所は、自軍の領域となってから対処する」


軍人達の話は当たり前だがキナ臭い事ばかりで、聞いていると気が滅入る。取り敢えず、国境を挟んで暫く動かない方針なのは分かった。


トールが冒険者側の代表として、前線指揮官に問い掛ける。


「一つ質問しても?」

「よろしい。聞こう」

「魔物の出所への対処ですが、それも冒険者側(我々)で?」

「未だ国境の向こう側の話だ。細かい話は出所の正体が知れてからで良かろう」

「了解しました。但し、出所がダンジョンであった場合、我々だけでは対処しかねます。人数が足りません。そこはご承知おき下さい」


何やら含みを持った言い回しをされたが、基本的に冒険者側への指示は変わらず、引き続き魔物への対処という事で、軍議はお開きとなった。トールがしっかりと軍側に釘刺してくれた事に、ホッとする。


瘴気溜まりなら、この人数でもなんとか対処出来るだろうが、流石にダンジョンの魔物流出(スタンピード)は無理だ。協会で大規模討伐を組むレベルを、上級冒険者とはいえたった六人ではどうにもならない。


翌朝、早くから軍が動き始めた。国境に広く展開し、隣国を牽制している。隣国側は、時折挑発する様に遠距離攻撃を仕掛けるが、積極的に押し込む事は無い。やはり、自国内に引き込む作戦らしい。


事前の打ち合わせ通り、こちら側も動かない。攻撃されれば弾き返し、遠距離魔法で反撃はするものの、それ以上の対処はしない。戦況は膠着状態だ。


冒険者達は、国境を越えて来る魔物の対処のみ動く。相手側への牽制になる様に派手な攻撃魔法で仕留めていった。


トールは得物の大鎚を揮い、魔物を斃すと共に地面に打ち付けて土槍(アースランス)を出して槍衾の様にしている。攻撃と防御を兼ねた堅実なトールらしい技だ。


遠征中は大人しかったレフも、故郷で吹っ切れたのか活き活きと魔物を屠っている。周囲に展開する氷針(アイスニードル)も、双剣と共に繰り出す氷槍(アイスランス)も通常より大きく、動きも派手だ。


サイラスは風術の使い手な為、魔法自体は目立たないが、鉄爪から発する風の刃や竜巻(トルネード)で魔物を複数巻き込み舞い上げて見せる。まさに(ブラッディ)(カーニバル)だ。


ライは大剣で繰り出す火炎斬(ファイアスラッシュ)や、得意の火炎障壁(ファイアウォール)で目立っている。王都最強と言われるだけの事はある。


ステフはヒューイに単独で乗り、(シールド)で魔物を跳ね返しヒューイが止めを刺す連携が見事だ。翼犬が翼を広げ飛翔するだけで、周りの目を奪う。うん、派手だ。


「みんな、気合い入ってるな。依頼で派手にって言われてるからか?」

「うわー、無自覚ー」

「一番派手にやってる奴が言ってもよ、何だかな」


つい仲間達の戦い振りに感想が口をついて出たのだが、ステフとライに突っ込まれた。何処が派手だと言うのか。


成り行きでテイムしてしまった銀狼に跨がり、銀狼配下の白狼達を引き連れて、全て狼達任せの魔物討伐だ。確かに数は多いが、地味なもんだろうに。


「何処が地味だ! 銀狼自体が滅多にテイムされない種だし、群れ単位のテイムなんぞ聞いた事も無い‼」

「別に白狼の群れはテイムして無いぞ」

「頭の銀狼を抑えてるんだ、配下が従うのは当然だろうが!」

「へぇ、そういうもんか」

「ヴィルって、周りはよく見てるのに、自分は見えてないとこあるよねー」


ライに散々突っ込みを受け、ステフに止めを刺される。反論の仕様も無いが、何だか納得出来ない。


「お任せ討伐の何処が派手なんだ? 地味なもんじゃないか」

「……まぁ、いいか。ヴィルだし」

「ヴィルだしねー」


其処で頷き合うな、何を納得している、二人共。




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