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北部辺境の町

誤字等、一部修正しました(;´∀`)

北の砦への移動中、少し大きな町に立ち寄った。町中を移動しながら辺りを見回し、その閑散とした雰囲気に驚く。思わず近くを歩くサイラスに溢した。


先刻(さっき)通り過ぎた村よりは大きいけど、寂しい感じの町だな。人通りもあまり無いし、店も少ないし」

「これでも、一応領都なんだ。ここら辺では大きい町だよ」

「本当に?」


其処が北辺境の領都だと聞き驚く。これでは、先の浄化依頼で寄った東の町と変わらない。同じ辺境の領都と言っても、西とは規模が大違いだ。


「紛争は北の方が多いが、睨み合う相手の規模が西の方が大きい。その分、国の力の入れ方も違ってくるさ」

「成程ね」


疑問を口にすると、ライからそう説明された。何気に、ライは知識人だ。やはり育ちがいいからだろうか。


「テオはこの町の出身だったっけ?」

「……うん、そう」

「身内に挨拶とかしなくていいか?」

「……俺、親とかいないし……世話になった孤児院も、代替わりしてる」

「そうかぁ」


テオに話し掛けるも、余計に気落ちさせてしまった。今回の北への遠征依頼は、どうも空気が良く無い。


気分を変えようと、トールに話し掛けてみた。


「此処から北の砦まで、あとどの位だ?」

「俺達だけなら半日で着くだろうがな……歩兵を連れての行軍じゃ、二日位は見ないと駄目だろうよ」

「かったるい」

「国軍の依頼なんて、こんなもんさ。冒険者側にはあまり旨みの無い話ばかりだ。まぁ、国に貸し作ってやる位の気持ちでやろうぜ」

「分かった」


変えようとした気分はあまり変わらなかった。一体何なんだ、どうしてこうなった。


その日は町外れの空き地で野営する事になった。町の宿では全員泊まるのは無理だろう。町の人からすれば、せめて幹部クラスぐらいは宿泊して金を落として欲しい処だろうに。


そんな話をトールから軍の方に振ってみて貰ったが、それなら冒険者側が宿を取れと言われたそうだ。


「どうする、宿に行くか?」

「部屋数次第だな」


こんな時に何時も真っ先に動くレフが、今も静かなままだ。そう言えば、レフとテオは同郷の出身だった筈だ。なら、レフにとっても此処は故郷という事になる。


故郷というものが、ただ懐かしく慕わしいものでは無いという事は、身を以って知っている。レフも故郷に対し何某かの事情を抱えているのだろう。


レフに関してはそっとしておく事にし、ステフと連れ立って宿の様子を見に行く。ぱっと見に、あまり大きくは無い。一階に食堂を併設している、よくあるタイプの宿だ。


「部屋、空いてるー?」

「一人部屋が三、二人部屋がニ、続き部屋が一だ」

「騎獣はー? 従魔は部屋に入れるー?」

「騎獣も従魔も厩舎なら入れる」


ステフが宿主と交渉する所を後ろから眺めた。宿主は小柄で小太りの中年男性で、愛想の無い受け答えをしている。田舎ではこんなものだろうが、商売っ気の無い事だ。他に泊まり客は見当たらなかった。


「どうするー?」

「一泊だし、いいか」

「じゃ、オジサン。一人部屋三つと二人部屋一つに予備寝台(エキストラベッド)ねー」


宿主から鍵を受け取ると、皆の所に戻った。テオ達魔術師見習いは、野営地に移動している。トール達に鍵を渡し、荷物を置いたら食堂に集合する事にした。


「何、ヴィル達三人で二人部屋? もっと大きい部屋無かったのか?」

「続き部屋ならあるが、一泊だしいいだろ」


食堂で顔を合わすなり、サイラスからそう言われた。こんな田舎の安宿で中途半端な贅沢をする気は無い。続き部屋と言っても恐らく家族用だろうし、二人部屋と然程(さほど)格の違いは無いと思われた。


皆が揃うと、給仕が注文を取りに来た。適当にお勧めとエールも人数分頼む。元気の無かったレフも、酒だけはちゃっかり好みの蒸留酒に替えていた。


食事の合間に、トールが皆に問う。


「これまでの移動で、何か気付いた事はあるか」

「レフが異様に静かな事以外は、特に無い」


サイラスがしれっと返答する。それを聞いても、レフは黙って酒を飲んでいた。皆に事情を明かす気は無さそうだ。


「まぁ、レフが静かな分には問題無い」


トールがその場を締めて、食事を終えた。それぞれ部屋に引っ込む。久しぶりにベッドで躰を伸ばして眠れると思うと、少し気分が上がった。軍の関係者は、今夜もテント泊だ。


「じゃあ、誰が予備寝台に寝る?」


ステフやライと、ベッドの争奪戦が始まるのは、この後の話だ。




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