表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/166

王都からの迎え

ステフとの関係が進展して間もなく、アベル達のパーティーが護衛依頼を受けることになった。国境付近まで往復する商隊の護衛で、複数のパーティーが参加するらしく、先の合同討伐クエストで知り合った他パーティーにアベルが誘われて受けたものらしい。目的地まではかなり距離があり、おそらく数週間はかかりそうだ。


ステフは街を離れる期間が長いことに難色を示していたが、アベルをはじめパーティーの面々は皆乗り気で断れなかったという。この護衛依頼をこなせば、パーティーのレベルが中級に上がるらしい。意欲的な仲間達を前に、個人的な我が儘は言い出し辛いだろう。


「ヴィルとこんなに長く離れる依頼なんて嫌だな」

「前の合同討伐クエストだって、結構長かったじゃないか」

「あれは、受けた当初はあんなに長くなる筈じゃなかった」

「それもそうだな」


期間の長さはともかく、レベルアップはステフとて望むところだろう。中級に上がって一人前と言われる冒険者にあって、所帯を持つのも初級では憚られる。


「それに、前と今とでは、事情も違うし……ねぇ?」


そう言ってステフは、こちらに意味深な視線を向ける。多分、ステフの出発までは、定宿に帰れそうもない。酒場の二階で夜を明かす度に、二人で暮らせる部屋に早く移るべきか迷う。離れる期間が長いのは寂しいが、ステフの中級昇格が早まるのは、こちらにとっても好都合な話だった。


クエスト以外で度々朝帰りが続くと、定宿の主の妄想と、ダールの暴走を芋蔓式に引き起こす。日に日に、職人組合への足が重くなった。


「おぅ、ヴィル!新婚夫婦はお盛んらしいな」

「仕事の話をしてくれ」

「ヴィルは上級冒険者にも気に入られてたみたいだが、敢えて駆け出しの若いヤツの方を選んだってなぁ?」

「ガセネタに踊らされて、ご苦労なことだ」

「決め手は何だ?若さか、それともアッチ……」

「帰るぞ」


ダールのせいで、他の組合職員の目も心なしか生温かい。この際、他の街に拠点を移すことも視野に入れるべきか、考える。ガリガリと神経をすり減らし、いつものブリーフィングを終えた。


商隊の出発当日、見送りに街の南門へ行く。商人達は商人連盟の建物前に集まって隊列を組み、護衛と合流する。護衛はベテラン冒険者パーティーを中心に、アベル達を含む混成チームで、見たところバランスは良さそうだった。


「気を付けて、ステフ」

「待っててくれ、ヴィル。土産持って帰るよ」

「無事に帰ってくれたら何よりだよ」


旅立つステフを見送ってから冒険者協会に立ち寄ると、エントランス周辺がざわめいている。前の合同討伐の時を思い出して緊張が走り、手空きの窓口職員に尋ねた。


「何かあったのか?」

「あっ、ヴィルさん!ちょうど良かった」


窓口職員に伴われて、以前にも入った協会の応接室に向かう。何でも、王都の協会本部から指名依頼の迎えが来て、協会支部長が対応しているらしい。


「王都から?俺に?何で?」

「詳しいことは、支部長かお迎えにいらした方に聞いて下さい」

「厄介事は勘弁して欲しいんだがな。迎えの人って?」

「上級冒険者の方ですね」

「まさか『紅刃』が来てるのか?」

「いいえ、別の方です」


部屋に入ると、見たことのある人物が待っていた。


「ヴィルヘルムだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ