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あの人は今

体調不良の為、集中力が続かず更新が滞り、申し訳無いですm(_ _)m


夏バテに、他の様々な不調が重なってしまって、思いの外長引いてしまいました(TдT)


皆様も、体調管理にはお気をつけくださいね(;^ω^)

エルを邸に招いた数日後、今度はトールの所に皆で出向いた。文字通り、従魔達も含めた全員だ。トールのクランにいる冒険者達は騎獣に慣れているし、翼犬を連れて行くと喜ばれる。


大所帯での移動は目立つ所為(せい)か、家に近付くと訪いを告げる前にトールの方から出迎えてくれた。


「よく来たな」

「お言葉に甘えて押し掛けて来たよ」


敷地に入るなり、クランの面々が押し寄せる。皆一様に目を輝かせて騎獣達を見ていた。その中から年嵩の者数人が、騎獣の手綱を預かろうと前に出る。


「騎獣を厩舎にお連れします」

「手綱、お預かりしますね」

「ああ、宜しく」


セスから降りたライはごく自然に手綱を預けていたが、ヒューイから降りたステフは自ら手綱を曳き厩舎に向かう。


「ごめーん。ヒューイってばこう見えて人見知りなんだー。後でヴィルが仲立ちしてくれたら、相性のいい人はお世話出来るかもー」


ステフはクランの面々へのフォローをしながら、共に厩舎へ歩いて行った。


「立ち話も何だ、中に入ろう」


トールに促され、玄関を潜り居間に落ち着いた。部屋にはトールの家族やクランの面々の他、上級冒険者仲間のサイラスも居た。


「やあ、サイラス。久しぶり」

「ヴィル達が来るからってトールに呼ばれたんだんだ」

「ちょっと痩せたか?」

「まぁね。ファイが行っちゃってから、気が抜けてさ……」


サイラスは、恋人のファイベルが勾留中、ずっと拘置所に通っていたという。そして、ファイベルの裁判が終わり、鉱山行きとなってしまって以降、張り詰めた糸が切れた様にぼんやり暮らしているらしい。


「あんまり引き籠もってばかりいると、こうして古巣から声が掛かるのさ」

「そう言えば、サイラスは此処のクラン出身だったな」

「後輩の指導とか、騎獣狩りの付き添いなんかは、いい気晴らしになるよ」


話している内に、厩舎へ行っていたステフ達が戻って来て、全員揃った処で賑やかに食事会が始まった。


トールの家の大きな食卓に、所狭しと料理が並ぶ。それらは、トールの妻や嫁いだ娘達が腕を奮った物だ。大人数で囲む食事は賑やかで、弾む話に笑顔も綻ぶ。


「そうそう! インゲ女史の所で、意外な人物を見掛けたよ」

「誰だ?」

「西の辺境伯三男坊さ」

「えっ、あのバカ息子⁉」

「インゲ女史の秘書に付いて、見習いをしていたよ」

「随分と地味な格好で、ぱっと見、誰だか分からなかった位だな」


次々と棚卸しされる噂話のついでに、サイラスがふと思い立ったという風に問い掛けた。


「ライ、最近、王都で顔を見ないけど、何処か長期の依頼でも請けたの?」

「偶々、この処王都付近で大規模討伐が無かったからいいが、協会本部の連中もライの所在確認が出来ないと嘆いていたぞ」


トールも付け加えた。それに対し、ライは飄々とした調子で返答する。


「いや。街に居着いてる」

「街?」

「ヴィル達の家に転がり込んだんだ」


ライの台詞(セリフ)に、その場に居た全員が目を剥いた。


「「「えぇーっっっ⁉」」」

「「何、どういう事?」」

「「「ヴィルさん、ステフさんのラブラブカップルに(ヒビを入れるつもりか⁉」」」」

「おい、ライ、ちゃんと説明しろ‼」


皆の気迫にも動じず、ライは淡々と同居に至った経緯を語る。


「南都に遠征した時、帰りに街へ寄っただろう? その時、ヴィル達に同居を持ち掛けて、そのまま転がり込んだのさ」

「南都遠征って、かなり前の話じゃないか! そんな話、聞いてないぞ⁉」

「ヴィル、ステフ、よく同居なんか許したな」


トールはやや興奮気味に、サイラスは呆れ半分に言う。ステフが苦笑しながら答えた。


「南都から帰って、いきなり同居の打診をされた時は驚いたよー」

「まぁ、ライが強引なのは何時もの事だ。最初はお試しって言って、俺達の住んでる借家を買い取り大家になっちまうわ、敷地内に離れを建てて住み込むわ、あれよあれよと言う間に事を運んだよな」

「ねー」


こちらの補足説明に、ステフと頷き合う。トールは少しほっとした様に聞いた。


「じゃあ、同居とは言っても、ライは敷地内の離れにいるんだな?」

「最初はねー」

「今はなんのかんの理屈付けて、母屋に潜り込んでるな」

「「何ーっっ⁉」」


トールとサイラスはほぼ同時に叫び声を上げた。他のクランの面々も、何やら口々に囁き合っている。(うるさ)い。


そんな中で、トールの夫人と娘がやたらとキラキラした目でこちらを見ていた。その表情は、何だか街の冒険者協会にいる受付職員と似ている気がする。


「あ、また同士が増えたみたいー」


ステフの呑気な声が、喧騒に消えていった。







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