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懐かしい顔ぶれ

引き続き王都を散策している途中で、よく見知った顔と出会(でくわ)した。


「よぉ、ライ、ヴィル、ステフ! 久しぶりだな」

「「「トール!」」」

「一家総出で王都見物かい?」

「インゲ女史の所の仕事で王都(こっち)に来てるんだ。そっちはクランの新人か?」

「ああ、入ったばかりの新人達さ。初心者向けの武器防具を見繕いに行った帰りなんだ」


暫くぶりに会ったトールは、クランの新人達を引き連れて買い物中だった。トールの後方から身を乗り出す彼等の目がキラキラとして此方を見ている。


「わぁー、上級冒険者の人だ」

「あの人の剣技と火魔法、凄いんだってねぇ」

「隣にいるのって、聖女様だっけ?」

「違うよ! 綺麗だけど男の人だって。確か二つ名が……」


新人達が小声でゴソゴソと噂し合っているのが丸聞こえだ。微妙な気分にさせられる。本人達はこっそり話しているつもりなんだろうが、全く内緒話にはなっていない。


すると、トールの他に彼等の引率をしていた者が苦言を呈した。


「おい、お前ら! ヒソヒソ噂話する前にする事があるだろうが! ほれ、挨拶!!」

「「「「はいーっ! よろしくお願いしますっっ!」」」」


その檄を飛ばした人物をよくよく見ると、トールのクランにいるエルの兄、クリスだった。


クリスとは然程(さほど)面識は無かったが、エルを通して冒険者として身を立てる為に街から王都に出て、トールのクランに入ったと聞いていた。まだ経験も浅い筈だが、新人達を御する手腕はなかなか堂に入っている。面倒見が良いのだろう。


おどおどする新人達をクリスに任せ、トールが話を続けた。


「王都には暫く滞在するのか?」

「ああ。披露会用の衣装の仮縫いが終わる迄はいるよ」

「なら、また遊びに来いよ」

「そうだな。近い内にお邪魔するよ」


トール達と別れて、再び街を見て回る。何軒か店先を冷やかし、歩き疲れた頃にテラス席のある食堂を見付け、其処に入った。


「じゃあ、注文して来るから座ってて」


ステフが店内に行き、ライや従魔達と席を取って待つ。ウルリヒはデューイの抱っこでスヤスヤと眠ってしまった。ルーイが肩に乗って、顔をスリスリと寄せてくる。


「……それ、重くないのか?」

「ルーイが? いや、風魔法の影響か何か知らないけど、見た目程は重さを感じないよ」

「そうか」

「羨ましい? ほれ、ルーイ、ライの所に行ってやれ」


ルーイがフヨフヨと飛んでライの肩に移動し、顔に頭を擦り付ける。ライは『コレジャナイ』と言いた気な顔をして、ルーイを撫でていた。


「お待たせー……おや、珍しいな。ルーイがライに懐いてる」


ステフが戻って来ると、ルーイは直ぐ様ステフの方に移動して首周りに巻き付いき頬擦りした。ルーイは生まれた時からステフを親認定しているので、殊更に慕っている。ライは益々微妙な表情になった。


店員が飲み物や軽食等の注文品を持ってテラス席に来たので、トレーごと受け取りテーブルに並べる。果実水やエールの他に、ウルリヒの好きなミルクや揚げ芋があった。


「ウル寝ちゃったから、コレ余っちゃったなー」

「持ち帰りに出来ないか聞いてみようか」

「飲み物は無理だろーオレ飲むよー」


多いかと思われた飲み物や軽食も、ステフが安々と平らげて持ち帰りにする迄も無かった。


数日後、邸にエルが遊びに来た。案の定、テオを連れて来ている。邸迄は事前に伝言魔法で先触れしてから、ルーイを遣いに出し案内させた。


「ライさんのお家、こんなに直ぐ近くにあったんだねぇ」

「ああ、俺達も来てびっくりだよ」

「ヴィルさん達も知らなかったの?」

「そうだよ。今回、王都に来て初めて知ったんだー」


来て早々、エルとそんな話で盛り上がっていたら、ライが口を挟む。


「俺はエルの住んでる所なんて知らなかったんだ、仕方無いだろ⁉」

「そうだね。ライさんとは、王宮でしか会った事無かったから」

「街中でも会ったよな」

「そう言えば、冒険者協会の前で会ったっけ」


エルが話し込む隣で、テオは側に寄って来たウルリヒを構ってやっている。デューイは見守り体制だ。ルーイは気儘に部屋の中をフヨフヨ漂っている。


「それにしても、広いお邸だね。お庭も広いし、厩舎も大きいから、ヒューイ達もゆったりしてる」

「その点は有難いよ。今迄、定宿にしていた所だと、厩舎が狭くてヒューイが直ぐ自主的な狩りに行ってしまうんだ」

「此処だと管理人さん達のお世話が行き届いてるから、ヒューイも勝手に出掛けたりしないしー」

「広いと言えば──」


エルが思い出した様に、隣のテオに言う。


「此処って、街にいた時テオが住んでたお邸位の広さかな?」

「ああ、あのボロ邸? よく覚えてたな。あれも広いと言えば広かったけど、放ったらかしで人の住める部分が殆ど無かったからな……比較がし辛いよ」

「行った事はあるけど、オレもよく覚えて無いー」

「俺も。人が住んでたんだ、って驚いた印象の方が強くて、広かったかどうか……」


気の合う面々との会話は尽きる事無く、旧交を温めた。







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