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ダンジョン浄化作戦

間もなく視界に入ってきた魔物は、荒れ地でよく見掛ける節足動物の様な姿をしていた。蜈蚣ムカデ)に似たその魔物は、地上にいるのよりも一回り大きく、皆一様に瘴気を纏い、黒っぽくおどろおどろしい感じだ。見るからに禍々しいし、絶対に素手では触りたくない。


「ルーイ、ブレスだ。ライ、広範囲攻撃よろしく!」

「ギャオー」

「任せろ!」


何時もの如く先陣を切るコンビが攻撃を放ち、同行パーティーがそれに続く。素手では触りたくないのは一緒のようで、ディートとデューイも接近戦を避けて、離れた所から術や投擲で応戦していた。


「奴等、瘴気溜まりから湧いたっぽいな」

「地上の瘴気溜まりから湧いた魔物よりも凶悪な感じがする」


群れを一掃した処で、ディートと魔物の所感を話し合っていると、戻って来たライが魔物から剥ぎ取った魔石を掲げて言った。


「斃した魔物から取れる魔石も、通常より大きいぜ」

「それだけ溜まった瘴気が多いって事か」

「そう思うと、喜べないな」


ライに返答すると、溜め息混じりに返された。確かにこの尋常じゃない濃さの瘴気溜まりは厄介そうだが、それを浄化するのは誰だと思っているんだ。ステフの補助なしに浄化しなければならないのはキツそうだし、溜め息をつきたいのはこっちの方だと言いたい。


陣形を立て直し、再び瘴気溜まりを目指して移動する。益々瘴気が濃くなり、周囲がどんよりとして視界が悪くなってきた。


「近いな。そろそろ見えて来そうだが」

「あれじゃないか?」


ライの指し示す方向に、黒く澱んだ瘴気の塊があった。規模は中程度だが、濃さは地上の比ではない。何時もなら瘴気溜まりの中心部に入ってから浄化を始めるのだが、今回は浄化しながらでなければ奥まで進めそうにない。従魔達は近付く事も無理そうだ。


「デューイは此処で後方支援、ルーイは上空から補助攻撃してくれ。皆は瘴気から湧いて来た魔物を浚えて。ライ、瘴気溜まりの中での護衛と補助を」

「「「「了解ー!」」」」

「ウホッ」

「ギョエー」

「俺に任せとけ」


指示を出す側から、続々と魔物が瘴気から湧いて来る。此処の瘴気溜まりは、昆虫系や節足動物がメインのようだ。もしヒューイが居たら、鼻に皺を寄せて嫌がるだろう。


「行くぞ‼」

「「「「「おう‼‼」」」」」


ライの掛け声に皆が応じ、瘴気溜まりを取り囲む様に散って行く。こちらも、中心部に向かって駆け出した。


浄化を展開しながらの移動は初めてだが、思ったよりも消耗する。つい眉根に皺を寄せ表情を歪めていると、それを見咎めたライに心配された。


「魔力譲渡しながら行くか?」

「そんな器用な事出来るのかよ」

「やった事ないから知らん。やってみるだけだ」


そう言うなり、ライに引き寄せられた。胴回りにぐるりと腕を絡められ、触れた所からじわりと魔力が入って来る。


「あれ? そんなに痛くない」

「何度も魔力操作訓練やら譲渡やらやってるし、慣れたんだろ」

「慣れるもんなんだな……」


以前はその熱さとピリつく刺激の強さに耐え難かったライの魔力が、慣れもあってかそんなに辛く感じない。お陰で浄化しながら瘴気の中を然程(さほど)消耗せずに進む事が出来た。


「ルーイ、瘴気達の真ん中あたりに来たら教えて」

「ギャオー」

「え、着いたのか?」

「ギャオッ!」


調子良く進んでいた為、いつの間にか中心部に届いていたらしい。ルーイに確認して、立ち位置を微調整する。その間、ライは周囲を警戒しながらも、魔力譲渡を兼ねべったり張り付いていた。不思議と、鬱陶しい感じはしない。これも慣れだろうか。


「じゃあ、さっさと浄化してしまおう。早く帰りたい」

「なら、魔力をセーブせずに思いっきり流していいか?」

「……今までセーブしてたのか。痛くない訳だ」


配慮は有難いが、ユルユル浄化していたのでは帰りが遅くなる。魔力操作訓練の辛さを思い出し少し怯んだが、背に腹は変えられない。覚悟を決めてライに頼む。


「思いっきりやってくれ」

「よっしゃー!」


ライは了承するなり、こちらの首筋に噛み付く様に口付けて、其処から全開で魔力を流して来た。初期の頃並みの熱さと刺激を伴った魔力の奔流を受け、ぐらりと気が遠くなる。魔力酔いを起こしそうだ。


何とか正気を保ち、浄化を展開し広げる。じわじわと瘴気が霧散していき、周囲がどんよりとした空気からクリアな視界に変わっていった。やがて、浄化が瘴気溜まりの端まで到達すると、待機していたデューイとルーイが飛んで来た。


流石にライも魔力切れ寸前でふらついている。こちらもライ以上にヘロヘロだ。力尽きて、デューイの懐に倒れ込んだ。ライはルーイに支えられている。


「もう限界。少し休む」

「了解。後は任せて寝てろ」


ライに瞼を覆う様に手を置かれ、デューイに抱え込まれたまま意識を手放した。



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