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ダンジョンアタック

打ち合わせを終えると、ダンジョン班の面々は直ぐ様ダンジョンの入口へと向かった。その入口は今まで未発見だっただけあり整備されておらず、山間(やまあい)の潅木が繁る合間にひっそりとあった。


魔物流出(スタンピード)中のダンジョンは、通常と違い階層毎の魔物の区分が無い。普段ならダンジョン内の魔物は階層を跨ぐ事は無いのに、下層にしか出ない様な強い魔物も浅い階層に出るという。


なので今回のダンジョン調査班は魔物分布の調査を見送り、ダンジョンの地形や罠等の調査に絞る。後に協会へ報告を上げる為に、要所でメモをとる必要もあるだろう。


入口前に着き集まった面々に、リーダー格のライが檄を飛ばす。


「よし、いいかお前ら! 中は魔物が階層に関係無く入り乱れて出るぞ、此処から陣形組んで進むからな! 気を引き締めて行け!」

「「「おう‼」」」

「中に入ったら、全体の指揮はヴィルに任せる」

「は?」


聞き捨てならない台詞が混じっていた。ダンジョン班のリーダーはライの筈だが。


「何、どういう事?」

「俺は先頭に立って攻撃に専念するから、後方から全体を見渡せるヴィルが采配を(ふる)ってくれ」

「そういう事か。任された」


成る程、適材適所という訳か。どちらかと言うと脳筋なライが指揮に回るよりも、元々後衛だし従魔達への指示にも慣れている自分の方が戦闘中の指揮には向いているだろう。握った拳をライと打ち合わせ、気合を入れる。ライを先頭に、前衛から順次ダンジョンへと入って行った。


このダンジョンは、自然発生の洞窟型らしい。人一人やっと通れるくらいの狭い入口を抜けると、かなり広い空間があり、先へと続く通路の口が幾つか覗いていた。そして、その空間いっぱいに魔物がうじゃうじゃ(ひし)めいている。


魔物は、この辺りによく居る様なゴブリンやコボルトが主で、それぞれに小グループで固まって攻めて来た。他にスライムやら芋虫、蜥蜴の類も少し混じっている。まさに混沌(カオス)状態だ。


「盾役、前へ! ライ、ルーイ、広範囲攻撃!」

「任せろ!」

「ギャオー‼」


ライが嬉々として火術を纏わせた大剣を振る。ルーイはふよふよ飛び回りながらブレス攻撃を放っていた。同行パーティーの前衛が後衛を護るように盾を構え、その後ろから攻撃役の剣士や弓使いが魔物を叩く。デューイは直ぐ側に居て護衛してくれていた。


「ディート、見える範囲でいいから、罠察知を」

「こういう自然発生型は罠が少ないから、心配無いよ」

「了解。じゃあ、我々は取りこぼしのヤツを浚えようか」


何しろ数が多い。大半はライやルーイの広範囲攻撃で仕留められるが、それを回潜って後方に流れて来る魔物も少なからず居る。投げナイフで応戦する隣でディートが短剣を揮い魔物を退け、デューイが拳を振り上げる。


総当たり戦を繰り広げ、一刻程で入口付近の魔物は一掃された。広間の一角に結界(バリア)を張り小休止する。その間にディートが通路の先を下見に行った。ルーイはふよふよと付いて行く。デューイと並び座って休んでいると、隣にライがドカッと腰を下ろした。


「いきなり乱戦だったな」

魔物流出(スタンピード)中だ、有り得るさ」

「ヴィルは指示も的確だし判断が早い。指揮官に向いてると思うぞ」

「普段から従魔達に指示を出しているからな。慣れだ」


雑談しながら、ライはこちらの肩に顎を乗せて寄り掛かって来る。重い、と文句を言おうと何処吹く風だ。そうこうする内にディートが戻って来た。ディートに躰を休めて貰いながら報告を聞く。


「この先、通路は二股に分かれてたよ。どっちにも魔物の気配がした。罠は見当たらなかった」

「どっちの方が魔物が多い?」

「右かな」

「じゃ、左側から行ってみるか」


小休止の後、調査を再開した。通路は狭いので、一列で進む。ディートを先頭にライと同行パーティーが続き、自分はデューイと殿(しんがり)を歩く。ルーイは列の上をふよふよ飛んでいた。


暫く歩くと、入口の広間よりもやや小さめな空間があった。手前から中を伺う。中には様々な色や大きさのスライムがあちこちに蠢いていた。先程の広間にも数匹居たが、一つ二つならともかく、こうも数が多いと厄介だ。


「スライムか……物理攻撃が効き難いんだよな。弱い割に手間が掛かって」

「なら、俺とルーイでさっさと一掃してやるよ」


ライはそう言うなり、ルーイを伴ってスライムの間に飛び込んで行く。入口付近での初撃を彷彿とさせるように、二人共嬉々として無双していた。火術もブレスも効果は抜群で、あっという間にスライムは一掃された。


「気分いいな、ルーイ!」

「ギョエー」


いつの間にかライとルーイは意気投合したらしい。まさかルーイに戦闘狂(バトルジャンキー)のケでもあるのだろうか。ウチの子に限ってそれは無い、と信じたい。


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