新たな知己
また誤変換を見付け修整しました(・_・;)
スミマセンm(_ _)m
ダールの先導で森の奥へと進んで行く。自分の知る薬草の群生地とは違う区域に入った。初心者向けと言われる東の森も、ここまで奥まるとかなり雰囲気が違い、鬱蒼とした木立の其処此処で魔物の気配がする。
しかし、連れている従魔達の気配に怯えてか、小物が顔を出す事は無い。それでも近付く強者は、従魔達が先を争って仕留めた。こちらの仕事は専らそれらの魔物を解体し、魔石等の回収し終わった物を従魔達に還元する事だった。
従魔達の仕留めて来る魔物は、森の入口付近で見掛けるような角兎や灰色狼とは違い、もっと大型のものばかりだった。捌くのは骨が折れるが、採れる魔石や素材が段違いに良い。魔猪や魔熊など東の森で獲れるとは思わなかった。
「我は従魔を持った事がなかったが、随分と道行きが楽になるのだな」
「とても頼れる仲間ですよ」
「ウチのコ達は特に優秀だからねー」
従魔達の働きに驚くアーヴァインに、思わずステフとウチのコ自慢をしてしまった。こちらの親バカ振りにアーヴァインも生温い笑みを浮かべている。
「ヴィルは意外と身贔屓の激しいヤツだったんだな」
ダールにまで苦笑混じりに言われた。気恥ずかしさから、ついムキになって言い返す。
「意外とは何だよ?」
「いや、ずっとソロでいたから、てっきり人嫌いかと思ってたんだ。その頃を思えば、ヴィルも随分と変わったもんだよ」
そんな風にしみじみと言われると、それ以上は照れ隠しも出来ずに口を噤んだ。
もう暫く先に進むと、木々の隙間に、チラリと草原が見えた。その草原は少し小高い丘一面に薬草の繁る所だった。目に映る範囲だけでも、かなりの種類が揃っているのが見て取れる。
「此処が俺達の秘蔵する薬草群生地さ!」
ダールが誇らしげに胸を張る。
「これは凄いな」
「流石は専門家だ。スケールが違う」
ステフと二人で手放しに誉めそやすと、さしもの面の皮が厚いダールも照れていた。その隣で、アーヴァインは平素と変わらぬ表情でポツリと呟く。
「我の元いた同胞の住む森は、もっと豊かであったがの」
その呟きを耳で拾ったダールが、傍らの伴侶を顧みた。
「珍しいな、イルが故郷のことを言うなんて」
「同胞の森は故郷では無い、元いた場所というだけだ。我の居場所は此処であろう?」
「イル……」
見詰め合うダールとアーヴァインに、ステフは目を爛々と光らせて見守っている。出刃亀根性丸出しだ。居たたまれずに、咳払いして注意を引く。
「薬草採集を始めようか」
各々、草原に散らばり薬草を摘む。その途中でアーヴァインと採集場所が被った。先程耳にしたダールとの会話が気になり、水を向けてみる。
「アーヴァインはハーフエルフと言ったな。先刻聞こえてきたんだが、同胞の森と言うのは、エルフの郷の事か?」
「如何にも」
「其処が故郷じゃないってのは何故だ? いや、話したくないならいい。俺もステフも訳有で帰る所が無い身だから、気になって……」
俯くアーヴァインに、踏み込み過ぎたかと言い訳地味た事を口にして引き下がる。暫く沈黙していたアーヴァインが、やおら顔を上げ話し始めた。
「別に黙秘するような話でも無い。エルフという者共は、おしなべて閉鎖的なのだ。我はハーフエルフ、つまり半分は人の子の血が入っている。然して、かの者共には同胞と見做されぬのだ。村八分に遭って親共々、郷を後にした」
「そうか……俺と似てるな……」
アーヴァインは黙したまま問うような目で見てくる。重い話をさせてしまった後なので、次は自分の番かと話す。
「俺の母親は、身重で辺境の村に流れて来たそうだ。俺を産んだ後、無理が祟って亡くなったと聞いている。俺は長老の所で育てられたんだ。その長老が亡くなった途端、村の連中に取り囲まれて無体な真似をされかけて逃げ出したって訳さ」
「お主も苦労したようだの」
アーヴァインと顔を見合わせ、何方からともなく笑い合った。