DR-01
私はアナザストーリーによって救われた。
だから今日も、もう1人の自分に会いに行く。
会って確認する。その人は必ずこっちにもいるってことを。
SMクラブ「異存」で働き始めてどれくらい経つか。
この業界じゃそこそこ伝説になっている店だ。
伝説の理由は色々あるがその理由の大きな一つは、
ここが正式な医療機関であるということだ。
精神病院の一種である。私はそこでいわゆる女王様を
やっている。医療機関でもあるので、女医と言うことにも
なるのだが。数年前リア充仕様に刷新された秋葉原(仮)を
素通りして、中央通りを渡って裏アキバと言われるように
なった「本家アキバ」エリアに入った。自分で言うのも
何だが、私はこのエリアには似付かわしくない。
「異存」はこの本家エリアにある。
1Fと2Fがなぜ本格的スピリチュアルグッズや魔法道具も
扱っている、本家感丸出しのジャンク屋ショップ、
3Fが同人誌が読める喫茶店、4FがメイドBAR、
5Fが私の住居になっていている、そのB1が異存だ。
薄暗い照明にマトリックスのサントラが掛かる
紅と黒の店内で、店長の好美に今日の指名客確認を
してプレイルーム兼カウンセリングルームに入った。
今日最初の指名客は、バイトの面接の女の子ようだ。