この世界について
またまた短めです。
「まずは基本的な事を説明しますね?質問は区切りのいいところで受け付けますか、とりあえずは私の話を聞いて下さい。と、その前に、君たちはどんな所に住んでいたかざっくりでいいから教えてもらってもいいかな?」
その問いに対しては紅葉が出来るだけ簡潔に答えた。まず、基本的にはこちらと同じだが、こちらの世界には100を超える国がある事、様々な人種がいて瞳、髪、肌の色が違う者達がいる事、だいたいは同じ人種の人間達が集まり、国家や文化を形成している事、文化と同じ数の言語がある事、人間は風などをを操つる力を持たない事、神を信仰している者はいるが実在しているかは不明である事を説明した。
「なるほど、では今度はこちらの世界について説明をしよう。」
エイベルはそう言ってこの世界について解説を始めた。
「まずは国家についてです。この世界には国家が4つあります。屯所でも言いましたが今度はもう少し詳しく。」
「まず貴女たちが今いるこの国は風のヒューリア公国、そして他にも地の国マウルス帝国、火の国アフィス王国、水の国滄華帝国があります。
4つの国はそれぞれに神を信仰しています。ここへ来る前に紅葉さんにも説明しましたけど、私たちはそれぞれの国の名前の由来となっている神から恩恵を受けています。この恩恵を受ける事で私たちは風や地、火や水を操る力をパラケルススから借りています。」
「ここまでで質問はありますか?」
紅葉が質問をした。
「この世界の人間たちに信仰の自由はあるのですか?」
「信仰の自由、ですか。」
エイベル言葉の意味がわからないようだったので紅葉はもう一度質問し直す。
「例えば、この国で生まれた人が他の国の神さまを信仰して力を得る事はできるのでしょうか?」
「そうですね、そういった前例はあるにはありますが、それは何処の国のでもあまり良しとはされませんね。これは昔話になりますがね」
そう言って、エイベルは飲み物を口に含んだ。喉を潤すと、彼は続きを話し始めた。
「昔、この世界は混沌そのものだったそうです。そこで人間たちを憐れんだ4人の神はそれぞれ空と海、大地と砂漠に国を築いて下さいました。彼らの築き上げた国は誰にも犯されない安住の地、我々の祖先は神に導かれて現在までの文明を作り、子孫の我々に至るまでその恩恵を受けています。
各国の神々は我々にとっては恩人、あるいは国の親の様なもの。そんな神さまに背く様な行為は許されない、と言うのがこの世界の常識なのです。」
「つまり、みんな神さまが大好きなんだね〜」
華が呑気に感想を言った。
「、、、エイベルさんはかいつまんで話してくれたのだとは思うのですけど、なんだか曖昧なお話ですね。」
紅葉は歴史上の話しにしては大雑把な話しだと思った。するとウェインが補足をしてくれた。
「いや、今のは別にかいつまんで話したわけじゃない。本当にこんな感じの文章が建国以来からある神殿に刻まれているんだ。この話は不明瞭な部分が多くて学者たちの間でも事実なのかどうか意見が分かれているんだよ。」
「ですが、我々は現に神から力を授かっています。空や海の上に建造物を浮かせるなどと言うことは我々人間に出来ることではありません。なので、多くの者がこの話しを事実としています。」
「すいません、大分話を戻してしまうのですがパラケルススというのはどう言った存在なのでしょうか?」
そういえば言っていなかったな、と思いエイベルは話し始めた。
「パラケルススと言うのは我々が使う力の源の様な物だとされています。先程、神々が私たちに力を与えてくれると説明しましたね?神々はパラケルススの力を自在操る事が出来る存在です。私たちは祈る事で神さまから刻印を得ます。それが神さまからの恩恵の証になります。私たちはこの神から与えられた刻印を通じてパラケルススを操る力を得るのです。」
なんとなく理解出来る仕組みにはないってる。しかし、紅葉は夢を見ている様な感覚だった。そう紅葉が感じていると、華が困った様な声で話し始めた。
「あのー?この世界は私たちの世界とは全然違うって言うのはわかったんですけど、私たちって元の世界に戻れるんでしょうか?」
紅葉は目から鱗、と言う感が拭えない。この世界は不思議なことばかりで、好奇心と知識欲が優先されて元の世界に戻る方法など頭から抜けていた。
ウェインとエイベルはその言葉に目を点にしていた。そういえばこの娘たちはこの世界の人間ではないのだ。自分たちの世界に戻りたいと思うのは当然の事だ。
しかし、彼らはヒューリア公国でも優秀な軍人たちだった。それでも一介の軍人に過ぎない彼らには彼女たちを元の世界に戻す方法など少しも浮かばなかった。
ウェインとエイベルは顔を見合わせてとりあえずある提案をした。
「此処を出たら、神殿へ行こう。」
質問などあったら答えられる範囲でお答えします。