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パラケルススの巫女  作者: 一野 ろん
アセビの花はピンクに色づく
5/7

その男はイケメンだった3


4人が外へ出た時には、太陽は西へ沈みきるところで、西の方から橙色の光がぼんやりとのぞいている。


ウェインは3人を連れて大鳥の宴亭へ向かった。そこは首都シルフの住人たち行きつけの大衆料理店で朝昼夜と営業されている。夜にはお酒も出しており、ウェインは部下を連れて飲みに行くのだ。


大鳥の宴亭へ行く途中、華と紅葉は思わず街をきょろきょろと見渡してしまった。賽子型の石畳で舗装された道、基本はトルコ風の建築ではあるが、中華風や西洋風の建築もちらほら見当たり、統一感のない景観にも関わらず上手く合わさっているのが面白い。街を行き交う人々の格好もそうである。街の外観と一緒でみんなばらばらの文化の衣服を纏っている様に見えるが一つだけ共通していることはみんな身軽さを重視した衣服という事だ。特に若い女性は膝丈か膝上以上のスカートやパンツを履いている人が多い。

建物や人も日本では見られない風景で面白いのだがもっと珍しいのは、沢山の人が空に浮いてる事である。道を歩く人と同じくらい、空を飛んでいる人間たちが沢山いて本当に驚いた。


紅葉はところどころに細くて高い塔がある事が気になった。白の外壁にコバルトブルーの屋根で、屋根の下から人間が入れる程の大きさの穴があるのだ。


「エイベルさん、あの高い塔はなんですか?」


「あれはね、風の民は空を飛んで移動するでしょう?だからあそこで皆んな休憩をするんだよ。」


「風の民、、、この国の人は皆んな空を飛べるんですか?」


「そうだよ。ヒューリア王国の民は風を操るヒューリア神を信仰しているからね。」


「神さまを信仰すると恩恵が与えられる、という事なのでしょうか?この世界の人たちは皆んなああいう力を持っているんですか?」


「うん。詳しい事はちゃんとした専門家が知っているけど、ここではそれが普通だね。マウルス神は地、滄華神は水、アフィス神は火の信仰を与えてくれる。向き不向きはあるけど皆んなが使える力だよ。皆んな生まれた国の神を信仰する。」


なるほど、と紅葉はエイベルに頷いたが内心では夢見たいな話だなと思っているとウェインがこちらを振り返った。


「さあ着いたぞ、ここが大鳥の宴亭だ。ここの飯と酒は美味いぞ!」


店の中からは肉の焼けたいい匂いがする。これは期待大だ。


店内に入ると中央には大きな吹き抜けがあり、最上階の天井からは沢山の鳥籠が吊り下げられている。鳥籠の中には動物や植物が入れられている。


「あら!隊長さんいらっしゃい!いつものお席空いてますよ!」


「いや、今日は3階の露台がいいな。」


「そうですか。案内致しますね。」


露台とはバルコニーの事だったようで、3階に上がったら外の席へ通された。

空を見上げて見れば満天の星空が見えた。なんて美しい光景だろう。その光景に思わず華と紅葉は露台の手摺に駆け寄った。


「すごい!満天の星空だよ!」


「そうね、とっても綺麗、、、」


可愛いらしい驚嘆とうっとりしたような感嘆をそれぞれ漏らした。


「空がとっても近い気がするね!」


華に言われて、紅葉は確かにと思った。そんな事を話しているとウェインが会話に加わって来た。


「ここは世界中で1番高い所に浮かぶ都だからな。そりゃあ地上から見上げるより近くに見えるだろ。」


「浮かぶ都、、、」


さっきもそんな事を言っていた気がすると2人は思った。華は不意に下を見て驚いた。


「紅葉ちゃん!下を見て!」


華に促されて下を向くと、暗くて見えにくいが海や緑が見える。どうやらここは本当に空中の都であったようだ。


「何を驚いている?」


「隊長、この2人は本当にこの世界の事が分からないらしいです。説明をしてあげた方が良いですよ。」


そうか、とウェインは頷いた。そして飯を食ってからなと付け足した。

ウェインは店員を呼びつけるとすらすらと注文をし始めた。


「麦酒を2杯にザクロジュースを2杯、鳥の串焼きを8本、チャバン・サラタスとビベル・ドルマスのスープを人数分、後はシミットも人数分頼む!」


ウェイン意気揚々と注文を終えると、華は初めてきく料理ばかりだけど楽しみだなと思い、紅葉はそんなに食べられないわと思い、エイベルは隊長は相変わらず大食いだなと思った。


飲み物がすぐに運ばれて来たので華はザクロジュースを飲んで見たが思ったより甘くて美味しかった。料理が運ばれて来るまでにそう時間はかからず、あっという間にテーブルは料理で埋め尽くされた。


「いい匂い〜!美味しそう!」


「そうだろう、そうだろうここの飯は何を食っても美味いぞ?」


華は今にもよだれが垂れそうな勢いで、ウェインは今日見た中で一番いい笑顔だった。

華は、ハッとウェインを見て、言葉遣いとかちょっと荒くて雰囲気では分からなかったけどこの人イケメンだ!しかもよく見たら繊細な感じの!なんだかウェインの笑顔を見るとなんだか恥ずかしくなって来た。


そんな2人を見たエイベルは、隊長って普段は頼れる兄貴風だけど見た目だけなら貴公子みたいだからな、ああいう飯なんかで無邪気に笑ってるところとかが女にとってポイント高いだろうな。と思い、紅葉はあざといわね。と思った。


「誰も食べないのか?遠慮しなくていいぞ?」


ウェインはそういうと、麦酒をぐいっと飲んだ。

他の3人も料理に手をつける事にした。


「始めてきく名前ばっかりでわかんなかったけど案外見た事あるやつ多いね!」


「そうね、鳥の串焼きは香辛料と塩で味付けしてあるけど要は焼き鳥ね。」


「このチャバン・サラタスって言うのもトマトときゅうりの角切りと玉ねぎのスライスを味付けしたサラダみたいだよ!」


「こっちのビベル・ドルマスも要はピーマンの肉詰めを煮込んだトマトスープみたいよ。」


「このシミットって言うのもドーナツの表面に胡麻が沢山ついてるパンみたいだよ!」


しかし、どれも量が多い。

料理の内容を把握すると華はパクパクと料理を食べ始めた。紅葉も食べ始めたが元々少食なので、すぐにお腹いっぱいになってしまい、困っていたら華とウェインが残すなら自分にくれと言い出したので差し出した。それにしても2人共よく食べる。エイベルは2人の様に要求はしてこなかったが、どうやらウェインに料理を取られないか警戒しているらしかった。


全員が食べ終わったあと、一息着くとエイベルは華と紅葉にこの世界についての説明を始めた。





タイトルのオチが無理矢理過ぎて申し訳ないです。今回も少なめの投稿になります。

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