その男はイケメンだった
初めて投稿させて頂いたので読んでくれる方たちがいて驚きました。拙い文章ですがこれからも読んでいただけたら嬉しいです。
「この子たち、まだ目覚めないんですけど大丈夫ですかね?」
「さあな、亜麻色の方に声を掛けてみたらどうだ?黒髪の方は駄目だ。ずっとうなされている。」
そうですねと応じてエイベルは亜麻色の髪の少女を起こす為に声を掛けた。黒い髪の少女はずっとうなされていた。ウェインがずっと大丈夫かと声を掛けていたが、未だに眠ったままうなされ続けている。
「お嬢さん、起きて下さい。お嬢さん。」
エイベルが声掛けても中々起きる様子がない。少女は何やら口をむごむごさせている。するとウェインが少女の顔を覗き込んで少女の小さい鼻をぎゅっと摘んだのだ。
「あっ!何するんですか隊長!」
「いや、可愛いなと思ってな。」
「隊長!それじゃ只の変態じゃないですか!」
「誰が変態だエイベル。これは犬や猫が可愛いといった部類の可愛いだぞ。何を勘違いしている。」
私の近くで誰かが言い争いをしている気がする。しかも何だか息苦しい。鼻から息ができない。
「んー、んー!」
華は自分の鼻を摘んでいた誰かの腕を掴み、苦しいと訴える。
「すまんすまん。それにしてもやっと起きたのか」
やっと男の指から解放されたので、息ができる様になった華は、ぷはーっと息を吐いて、深呼吸をする。
それにしても、ここは何処で目の前の男の人2人は誰で、なんで鼻を摘まれていたのか、そもそも私は何故こんな所いるのか、兎に角わからない事だらけで目が回りそうだ。しかもそれ以上に私はすっごく大変な目に遭った気がする。
「そうだ!わたし、クレープ食べようと歩いてたら急に道路が光って、スカイダイビングが始まった様な?」
華は自分に起こった事を声に出して余計に混乱した。急に道路が光ってスカイダイビングってなんだ?華の目はぐるぐるしだした。
混乱している様子の華を見てウェインは取り敢えずは落ち着かせようと、華に声を掛けた。
「落ち着け、深呼吸だ。さっきは華を摘んで悪かったな。」
ウェインは優しい声で華を落ち着けさせると、華の両肩を優しくぽんぽんした。華は言われ通りにすぅーはぁーと深呼吸をする。
深呼吸をして落ち着いた様子の華に、ウェインは自己紹介をしようと言った。
「俺の名前はウェイン、そっちにいるのは俺の部下のエイベルだ。お嬢さんの名前は?」
「わたしは、香椎華。」
「カシー・ハナ?名前はカシーか?」
「違います、名前は華です…」
「そうか、では何と呼べばいい?」
「華でいいです。」
華が答えると、ウェインはそうか、と言って華の頭を撫でた。ウェインの手は大きくて、優しく撫でられたので何だかどきどきしてしまう。
「それにしても、変わった名前ですね。ウェイン隊長。」
「そうだなあ、でも滄華の方では氏が先で名が後ろに来るからなあ。お前たちの容姿からしてももしかして滄華の人間か?でもお前はマウルス風の顔でもあるな。」
ウェインが何を言っているのか理解が出来なかった。私の名前が珍しい?ソウカ?マウルス?何の話しだ。そういうばウェインもエイベルも日本人ぽくない気がする。
「あのぉ、ここは日本ではないんですか?」
「日本?それは街の名前か何かか?」
ウェインが不思議そうな顔で問うてきた。
「違います!私が住んでいた国の名前です!ここは何処なんですか!」
ウェインとエイベルは驚いた表情で顔を見合わせた。ウェインがエイベルの耳元で日本という国を知っているか?と囁く。エイベルはそんなのきいたこともありませんよ!大体そんなのありえないでしょ!と返す。取り敢えずエイベルは華の疑問に対して答えた。
「ハナさん?でしたね。貴女の疑問に答えるならばここはヒューリア公国という国にある軍の屯所の仮眠室です。お分りいただけましたか?」
「ヒューリア?屯所?」
エイベルは華の「ここは何処?」という問いに対してありのままの答えを返したが、華はますます混乱を深めた様だ。だが華にも分かる事が1つだけあった。
「ここは日本じゃないんですね?」
「ええそうです。ニホンという場所が何処にあるのかは分りませんが、ここは間違いなく風の国、ヒューリア公国です。」
「私、そんな名前の国、初めて聞きました‥‥。」
「お前たちは突然、俺たちが巡回していた王都の空より更に上の空から落ちて来たんだよ。」
「落ちて来た貴女たちをウェイン隊長が助けたんですよ。」
どうやら華は自分がウェインに助けられたらしいという事を分り、彼にお礼を言った。
「助けて頂きありがとうございました。」
華は深々と頭を下げた。ウェインはまあ気にするな、と言ってくれた。
「お前たちは何だか空の上から落ちて来るより大変な事になっている気がするしな…」
エイベルはそうですねぇと上司に同意した。
「それより華とやら、お前の黒髪のお友達が眠ったままうなされ続けてるんだ。起こしてやってくれないか?」
「紅葉ちゃん!そうだ!私、五月ちゃんにずっとしがみついてたんだ!」
ウェインに言われて紅葉の事を思い出した華は急いで隣のベッドで寝ていた紅葉の方へ移動した。ウェインの言う通り五月はうなされいた。
「紅葉ちゃん!大丈夫?紅葉ちゃん!起きて!」
華が何度も紅葉の名前を呼んでいると、楽になった様で紅葉はうなされなくなった。それに安心した華が紅葉を起こそうと紅葉の体を軽く揺する。
「んんん?華ぁ?」
紅葉の意識が戻ってきた様だ。
「紅葉ちゃん!華だよ!起きて!大変なの!」
意識を取り戻しつつある紅葉を華は容赦なく揺すり続けた。
「もお、あんまり揺らさないでよ。気持ち悪いじゃない。」
紅葉が気だるそうに起きると華はがばっと紅葉に抱きついた。勢い余って紅葉はベッドに倒れてしまった。
「よかったあ。ずっとうなされてたから心配したんだよお。」
半泣きになりながらも自分に抱きついて心配してくれた華を見て紅葉は思わず笑みが零れた。
「あのねえ、あんな高い所から落ちてうなされない方がおかしいのよ。」
「でも、大丈夫そうで本当に良かったあ」
華よりいっそう紅葉を抱きしめた。紅葉もそれに応じて華を抱き締め返す。
「ねえ、隊長。可愛い女の子たちが仲良く抱き締めあってるってなんかいいっすね〜」
「そうだな。何にせよどっちのお嬢さんも起きてくれて良かったよ。」
「そうっすね〜」
2人を見てほかほかしてるエイベルには、そう言う趣味があるのではないかと思えて来たウェインだがひとまずは安心だ。
これから2人には色々と聞かなければならないことがある。