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パラケルススの巫女  作者: 一野 ろん
アセビの花はピンクに色づく
2/7

始まりは空の上から


食後のお茶を飲み終えて華と紅葉は部屋へ戻った。


「はぁ〜、危なかったね!助けてくれてありがと!紅葉ちゃん!」


「華、あなたは少し気をつけなさい。」


華ははあいと少し落ち込んだ様子で返事をした。


何が危なかったかというと、先程安らぎの兎亭の息子が言っていた「普通」や「ジョーシキ」は彼女たちにとってはそうではない。つまり、人が中を浮いていたり、不思議な力で土人形を操ったり、という事は彼女たちがいた世界ではあり得ないことだった。


そう、彼女たちはこの世界の人間ではない。つまりここは彼女たちにとっては異世界で、この世界の人間にとって彼女たちは異世界人という事になる。


何故こんなことになったのか、彼女たちには分からない。華と紅葉は友人同士で16歳、同じ学園に通う普通の学生だった。夏から秋へと移行し、制服も夏服から冬服へ衣替えをしたばかりの季節だった。


華と紅葉は一緒に下校をしていた。明日は学校が休みのなので駅前でクレープでも食べようかと話しつつ、2人はゆっくり歩いていた。周りの、特に異性の目をよく惹きつける2人は、学園でも有名な美少女コンビだ。


「そうだ!私、クレープ屋さんの半額券持ってたんだった!これがあればクレープ2つ食べれるね!」


目をキラキラさせながら、いちごクリームとチョコバナナがいいかな?でもおかず系も捨てがたい!でもアイスがのってるやつもいいかも!などと言いながら歩いている華を見て微笑ましく思いつつ、紅葉は聞いているだけでお腹いっぱいになりそうね、と思っていた。


「華、お腹壊さないように…」


紅葉が華に食べ過ぎないように注意しようしたが、その言葉は足元に突如現れた、眩しい光によって遮られた。何事かと思いきや今度は浮遊感に襲われたのも束の間、2人は空から地上へと落下していた。


「華っ!」


紅葉は絶叫している華の名前を叫んで、自分の方へ抱きしめた。


「紅葉ちゃあああん」


華の目に恐怖で涙が滲んでいた。


「華っ、落ち着いてっ、」


「そんなのむりいいいいいいいっ」


紅葉は華を抱き寄せたものの、どうしていいか分からず恐怖もあり目をぎゅっと瞑った。


2人がただただ落下していると、雲の向こうから凄まじい速さで人影が飛んで来た。その人影は2人が落ちて来る先で手を広げ、大きな衝撃が2人を襲った。その衝撃と同時に男の腕の中に収まっていた。


「ふう、地上に落ちるまでにキャッチ出来て良かった。2人共、大丈夫か?」


「はあ、‥‥助かったの?」


男が声を掛けると、黒髪の少女はそう残して安心したのか、気絶してしまった。


「おい、大丈夫か?」


2人が地上か海へ落ちる事から助けてくれたのは、騎士の様な格好の男だった。


男は不自然な形で落ちてきた少女たちに声を掛けたが、どちらの少女からも返事がない。どうやら、お互いにしがみついたまま気絶している様だ。どうしようかなと考えていると、遠くからおーいと声が聞こえてきた。


「隊長ぉーーー、どうしたんですかー?巡回中にいきなり1人で飛んでいくなんてー!」


声の主は彼の部下だ。


「うるさいぞ、エイベル。」


エイベルは隊長と呼ばれた男の副官である。


「んなっ、うるさいとはなんですか!ウェイン隊長!」


ウェインとは2人を受け止めた男の名前だ。


「これを見ろ」


「ん?女の子が2人?」


「そうだ、この2人…」


ウェインの言葉は部下であるエイベルの不名誉な言葉で遮られた。


「隊長ぉーーー!どっからこの子たち拐かして来たんですか!犯罪ですよ!」


「なんでそうなる…」


「じゃあこの女の子たちはどうしたんですか!」


「落ちて来たんだよ!ここよりさらに上の空からな!」


「はあ、ここより高い空に街なんてありましたっけ?」


「少なくとも俺は知らないな。大体、王の城より高い位置にある街なんてないだろ。」


「そうですよねえ。何処から落ちて来たんでしょうねこの子たち。ヒューリアでは見ない格好ですし、マウルス帝国っぽいかな?」


「まあ、何にせよこのままにはしておけないな。2人共体温が低い。」


「そうですね。では都に戻りますか。」


エイベルの言葉にウェインはそうだな、と応じた。




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