第六章・馬鹿⑤
(まぁ、こんな馬鹿はとりあえず放置するとして)
目線を騎士達に。
未だ必死に人間の常識を超えた攻撃と回避を続けていたが、効果は今一つとみえる。
次に、未だ迫ってこないミアと浪に。
そこにはロボとの交戦に参加していなかったサトルが足止めしていて、様々な武装を繰り出すミアの攻撃を避けず、しかし一番ひどくて擦り傷程度しか被害は見えない。攻撃面でも防御面でもごり押しだが、これが一番の攻略法なのかもしれない。
ちなみに残りの沙良と明は拓海達・創喚者とクラスメイトの護衛にあたっている。
(でも、それがロボたちに通用するわけがない)
だって今それを目の前で証明されている。
そもそも本来なら物理的な意味で破壊できない代物なのだ。ごり押しでどうにかできるわけが――
(…………待て。物理的破壊は、というか、ごり押しの破壊は無理。なら――)
あぁ、全く。何故こんな初歩的な事を忘れていたのか。
機械を壊したい時に有用な方法なんていくらでもあるじゃないか。
――例えば、内部破壊とか。
〈お前達、今から言うことをそれぞれやってみてくれないか〉
思い付いた拓海は即座に心話にて話してみる。
〈オーケー、拓海。やってみよう〉
〈そうね。ここでただ持久戦やってるより、ずっと効率が良く可能性のあるものだと思うわ〉
〈というかこんな簡単なことすら考えつかなかった私達、脳筋過ぎじゃ……〉
〈騎士だからネ仕方ないネ!〉
どういう理屈だ、と苦笑しつつ、「それじゃあ」と肉声を上げ、
「――行けっ」
その言葉と共に、騎士達は弾けるように跳び出した!
「充電、充電、充電!」
「――〝戻れ、元れ、還れ。我らが魔獣が本質へ〟――」
亮と来華が口ずさみ、来華の身体に電流が走り、亮の身体からは瘴気のような妖力が溢れ出す。
そんな彼、彼女らは迫り来る大拳と大剣と砲撃の攻撃を避けながら、来華とミラーナはマゼンタの機体・アルファの元へ、亮と美月はシアンの機体・ヴェータの元へ進路を向ける。
「充電、充電、充電――!」
「――〝それは世界を満たす空気にして見えぬモノ。同時に淘汰された悪なるモノ〟――」
未だ動く口に応えるが如く、亮と来華から溢れる電流と瘴気の量が多くなり、来華は自身が光となっているように。亮は身体が特異者の特性により魔獣化の予兆が出るようになる。
近付く事に、ロボたちの攻撃の激しさは増し、回避不可能な攻撃が出始める。
集中している為、あまり避けること以外に周りへ目を向けることのできない亮と来華が対処できない攻撃を、ミラーナと美月が不慣れながら弾いていく。
「充電、充電……充電、完了ッッッ!」
「――〝ならば今こそ満たし、循環すべく、あるべき姿へと。……さぁ、還ろう〟――」
そうしている間に、ついに来華は溜まりに溜まった電流が来華を隠し、それはユニコーンを模り、亮は妖力が底を着いて半魔獣化するが、何の問題もなく術の完成系となるが変わりに詠唱が長くなる他、消費エネルギーが桁違いの完全詠唱を形にする。
「跳び込めッ!」
推測通り、ちょうど良くそれぞれ目標の足元に到達した亮・来華の二人に拓海は叫ぶ。
その言葉に従い、二人は跳び込み、その先にあった巨大な足に触れる。
「――放出ッッッ‼‼」
「〝――幻すは我が身なり――ッ!〟」
すると来華は溜まった電流を全てアルファの中に流し込んですぐ退避し、亮は半エネルギー体と化し、ヴェータの内部へと入り込んでいった。
そして――
「名付けて、《閃光花火》」
「魔弾装填! 発射、発射、発射ァアッ!」
来華は内部に入り込んだ電流を収縮、花火のように破裂させ、亮は炎の魔弾を片っ端から多方面にぶっ放し内部機器を全て、完膚なきまでに破壊。
内部爆発が起きた瞬間、アルファとヴェータは光となって弾け、消滅した。
残骸である粒子が降り注ぐ様は、星の海のように、とても綺麗で。
耐性を越えるほどの雷を貯めていたせいか身体を震わせている来華も。
完全詠唱の幻すは我が身なりのおかげで命拾いしたものの、未だ激痛ではすまない痛みに襲われていた亮も。
護衛を終えてぐったりしている動けないでいるミラーナと美月も。
その光景を見て、みんな思わず力んでいた身体を緩ませた。これが、自分達の末路だということも忘れて。
――しかしただ一人、拓海だけはそんな暇がなかった。
「チッ!」
陰っていく空から避けるように、跳び退く。すると、残った近接型ロボ・ファーイがブレードを、拓海のいた場所に叩きつけていた。
同じように避けて、避けて、避けて。
しかしドンドン疲れが身体に蓄積されていき、同時に爆風に混じる小石が身体の節々に当たって、鈍くなっていく。
「くそっ! 身体強化・攻撃型!」
そしてついに避けられない一撃が来ることを悟った拓海は、力を主とした身体強化を最大出力で発動し、ブレードをなんちゃって白刃取り。
その時に生じた重さで潰れそうになりながら、投げ飛ばす要領で誰もいない校舎側へ逸らす。
とりあえず危機は脱した、と安堵の息を吐こうとした。
そこに。
「な、なんですかぁ、こ、この騒ぎはぁ…………!」
――怯えた声が響く。
惚けていた皆が揃って我に返ると、靄を払うように頭を振ってすぐ、声をした方向へ目を向け――驚愕する。
だってそこには、キョトンとしたような、不安そうな顔をするクラスの担任・倉沼がいたのだから。
「な、なんで……⁉」
「先生――⁉」
どうして此処に。という疑問が創喚者と騎士達に過る。だがそれはすぐに解消された。
ナタリアが結界を張った時と同じだ。このグラウンドは存在する碧海のものそのもので、一時的にここに転移させられてから改変されたのだろう。そこに、仕事をしていた倉沼が巻き込まれた。
結界の設定によってクラスメイト達がいるのだ。倉沼先生が入ってこれても不思議じゃない。
(いや、そんな事はどうでもいい!)
身体強化・攻撃型を取り消し、すぐさま加速型に変えて倉沼の方へ急ぐ。
そこは彼女がいるのは校舎側――つまり、投げ飛ばしたファーイのブレードの進路だったのだ。
「先生っ、逃げろぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお‼‼」
「へっ?」
倉沼は拓海の言葉にキョトンと間抜けな顔をするが、迫る巨大なモノをみてすぐに青ざめる。だが、身体が恐怖で動かなくなっているようだ。
間に合わない。
そう分かっていても、拓海は諦めたくなくて、歯を食い縛って跳び続ける。もうあんな光景を観たくないと思いながら、目は一切逸らせない。
(――誰か)
拓海が必死に手を伸ばし続ける中、誰かが願う。
(誰かくーちゃんを……先生を助けて!)
だがそんな願いは届くはずもなく、倉沼は成す術なく、ブレードによって押し潰される。
〈仕方ないにゃー〉
寸前。どこか聞き覚えのある平坦な声が、脳内に響いて……。
倉沼がいた場所に、ブレードが堕ち、爆発したように高く砂煙が舞った。




