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番外編-それでも君に恋してた・3-

「和磨!」


翌日――、登校して早々に拓未が俺の教室に飛び込んで来た。




「んー? なんだ?」




「今、すっげぇ可愛い子見っけた!」


拓未は少し……いや、かなり興奮気味に話し始めた。




「あのなあのな! 余計なのが一人くっついてたけど、可愛い子が二人もいたんだよっ♪」




また女の話だ。


女好きの拓未は小学生の頃から可愛い子を見つけるとテンションが高くなる。




「余計なのって男?」




「そう」


俺の質問に思いきり怪訝な顔で答える拓未。




「ははは、だろうと思った」




「笑い事じゃねぇよー」




「でも、そいつは彼氏って訳じゃないんだろ?」




「それがまだ全然何もわかんねぇんだよなー。名前もクラスも……窓から見てた限りじゃ


 一年生の昇降口に向かったから同じ学年だと思うけど」




「じゃ、教室を片っ端から覗いて行きゃわかるんじゃないか?」




「そこでだ……」


拓未はにやりと笑って顔を近づけた。




(う……嫌な予感が……)




「俺一人で覗いてたら完全に“怪しい人”になりそうだから付き合ってくれ♪」




「やっぱ、そうきたか……」




「ささ、行こうぜ♪」


まだ『行く』とも言っていない俺の腕を取る拓未。




「しょうがねぇなぁー」


俺が渋々立ち上がると拓未は隣の六組の教室に向かった。




「う~ん?」


教室の何箇所かに集まって喋っている女子のグルーブをガン見している拓未。




「いたか?」




「いないっぽい……あ、けど男の方がいた」


拓未は眉間に皺を寄せて教室の中央で談笑している男二人に目をやった。




「へー、どっち?」




「眼鏡掛けてない方」




「あー、アイツ、サッカー部の長瀬じゃん」


それはサッカー部の長瀬孝太だった。




「和磨、知り合い?」




「いや、同じクラスにいるサッカー部の奴がすんげぇ上手い奴が入って来たってアイツの事を話してたから」




「へぇ~」


拓未はそう返事をしながら長瀬を一瞥した後、五組の教室に向かった。




そして五組の教室の中を覗くとすぐに小さく口を開けた。


「お?」




「いたのか?」




「うん、でも第二候補の方」




「本命じゃない方って事か?」




「そそ」


――と、そこへ智也が入り口にいる俺達に気がついて近付いてきた。




「どうしたんだ? 二人共」


不思議そうな顔をする智也。




「なぁ、あの一番後ろの席に座ってるポニーテールの子って、なんて名前?」


ニッと笑みを浮かべて智也に小声で訊ねる拓未。


俺もその子に視線を移す。


拓未は“第二候補”だと言っていたがレベルは高いと俺は思う。


ただ気は強そうだ。




「あー、上木さん」




「下の名前は?」




「香奈ちゃんだったと思うけど? なんで?」




「まぁ、ちょっと♪」


拓未はへらっと笑い、四組の教室に向かった。




「アイツ……何しに来たんだ?」


智也は首を捻りながら拓未の後姿を見つめた。




「……そのうちわかるよ」


そう言って俺は拓未の後を追った。






その後、四組と三組の教室を覗いてみたが拓未の“本命”はいなかった。


残るは八組、二組そして一組だが二組は拓未のクラスだから一組か八組のどちらかだ。


しかし、一人の女に対してここまで興味が持てるとは……。




「あ、いたいたっ♪」


そして一組の教室を覗いた拓未が嬉しそうに声を発した。




「おーい、准!」


名前を訊き出す為、准に近寄って行った拓未。




「おう?」




「あの子、名前何? 窓際の一番前に座ってる髪の長い子♪」




「あー、あの子ね。可愛いだろ? 神崎舞ちゃんて言うんだ」


にやっと笑って答える准。




「神崎舞ちゃんかぁ~♪」


ふやけた顔になった拓未は“本命”に視線を移した。




なんとなく俺もその“本命”に目をやる。




「っ!?」


すると、その女の子はつい先日、楽器店のCD売り場で会った子に感じがよく似ていた。


あのThe Salt Of The EarthのCDを買っていた子だ。




(まさか……な)


それによくよく考えてみればあの子が着ていた制服はうちの学校のじゃなかった。


うちの学校の女子の制服は上は白のブラウスと胸にリボンと紺のブレザー、下はチェックのスカートだ。


しかし、あの子が着ていた制服の色は確か上下グレーだった。




「お? 和磨も見惚れてるなんて珍しいな?」


俺が神崎さんをじっと見つめていると隣から拓未の声がした。




「いや、そういう訳じゃ……」




「まぁまぁ、なんてったってあれだけ可愛けりゃなー?」


拓未はそう言って再び神崎さんに視線を戻した。




確かに神崎さんは可愛い。


拓未のテンションが上がるのもわかる気がした――。






     ◆  ◆  ◆






――数日後。




気持ちの良い五月晴れの青空が広がる中、俺達の高校では体育祭が行われていた。




「舞ちゃん、足細いなぁ~♪」


いろんな種目に神崎さんが出る度、鼻の下を伸ばす拓未。




「香奈ちゃん、また一着だ~♪」


当然、上木さんの時も。


まったく……忙しい奴だ。




神崎さんと上木さんの二人は運動神経が良いらしい。


出場した種目は殆ど一着か二着でゴールしている。






そして、最後のフォークダンスでは――、


「俺、舞ちゃん誘ってみる♪」


拓未は軽い足取りで彼女の元へ行った。




その様子を遠巻きに見つめる。




ニコニコしながら神崎さんに声を掛ける拓未。


少し驚いて、怪訝な顔になる神崎さん。


彼女の隣にいる上木さんも眉間に皺を寄せている。


すると、そこへ長瀬がやって来た。


神崎さんを背にして拓未に何か文句を言っている。




(あ~ぁ……)




長瀬は拓未を睨み付け、神崎さんの手を引いてどこかへ連れ去った。


その様子を上木さんが笑いながら見ている。


……で、今度はその上木さんに声を掛ける拓未。


だが、当然断られる――、と。




(やれやれ……)






「むー、玉砕したー」


テンションが急激に下がった拓未が戻って来た。




「話した事もない相手から誘われてもなー、普通断るだろ」




「つーか、舞ちゃん、彼氏がいた」




「へぇー、ひょっとして長瀬?」




「うん。舞ちゃんに『俺と踊らない?』って声掛けたら『人の彼女に手ぇ出してんじゃねぇよ』って、長瀬に怒られた」




「まぁ、あれだけ可愛いんだから彼氏がいてもおかしくないだろ」




「だよなー」


がっくり肩を落とす拓未。




「しかも、香奈ちゃんにも声掛けてみたけど駄目だった……」




「『二兎追う者は一兎をも得ず』ってか?」




「う……」




「まぁ、元気出せよ。帰りに『失恋記念』って事で奢ってやるから」




「じゃあ、アップルパイ……甘酸っぱい失恋の味……」


拓未はいつも失恋をするとアップルパイを食べる。


過去数回、それで立ち直っているのだ――。






     ◆  ◆  ◆






翌日、昼休憩――。




「ちょっと聞いてくれよ、和磨ー」


一緒に学食で昼飯を食おうと誘ってきた拓未がテーブルに着くなり口を開いた。




「今朝、登校してる時にさ、会ったんだ。香奈ちゃんに」




「へぇ? 三人一緒じゃなかったんだ?」




「長瀬はサッカー部の朝練で、舞ちゃんは香奈ちゃんが寝坊したから先に行ったって言ってた。


 そんで香奈ちゃんに『舞ちゃんてホントに長瀬と付き合ってんの?』って訊いたら、


 中二の時から付き合ってんだってさ」




「じゃあ、もう長いんだ?」




「そうみたい」




「つーか、まだ諦めてなかったのか?」




「いやまぁ、それは単なる“確認”だから。長瀬がほざいてるだけなのかどうかのな。


 でさ、『それなら香奈ちゃんでもいいや』って言ったら『ふざけるな』って怒られた」




「当たり前だろ」


普通に考えてもわかる事だ。






そして、その日の帰り道――、


「なぁ、俺達とお茶しないー?」


「その後、映画とかもどぉ~?」


ナンパされた。


……神崎さんと上木さんが。




チャラそうな大学生くらいの男二人が彼女達の後ろを追いながら話し掛けている。




「……助けるか?」


拓未が珍しく真顔になった。




「ヤバそうなら行くか?」


俺と拓未は愈々ヤバそうなら助けに入ろうと、しばし様子を窺った。




「ねぇ、行こうよ?」


「楽しませてあげるからさぁ?」


彼女達の肩に手を伸ばすチャラ男二人。




「触らないで!」


しかし、肩に手が触れた瞬間、神崎さんが怪訝な顔で言い放った。




「あたし達、忙しいの。これ以上しつこくするなら大声で『痴漢です』って叫ぶわよっ?」


上木さんもそう言ってチャラ男達を睨み付ける。




「「……っ」」


怯んだチャラ男二人はあっさり彼女達を諦めた。




「やるぅ~♪」


その様子を見ていた拓未はますます彼女達の事が気に入ったのか、ニッと笑った――。

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