続編 -和磨の本音、唯の本音・7-
「もしもし」
夜、事務所で打ち合わせが終わり、マンションに帰ろうと
地下駐車場に向かっていると唯から電話が掛かってきた。
『もしもし……あのね……』
「うん?」
『今日、お仕事何時くらいに終わりそうかな?』
「今、ちょうど終わって帰ろうと思ってたところだよ」
『あの……じゃあ、今からかず君のマンションに行ってもいい……?』
(えっ!?)
唯の方からこんな事言うなんて……びっくりだ。
「唯、仕事もう終わったの?」
『うん』
「今、どこ?」
『ホテルの部屋』
「じゃあ、俺が行くよ。ちょうど話したい事もあるし」
昨夜、話せなかった事を話す絶好のチャンス!
“酔った勢い”という手は使えないけれど……なんとかなる!
ホテルに着いて地下駐車場に車を停めて一応、キャップを被り、サングラスをした。
昨夜は酔っ払っていて全く顔を隠さないで来たから、
今朝はロビーを通る時にかなり焦ったけれど。
唯の部屋のドアチャイムを鳴らすと、すぐにドアが開いた。
「……」
「……」
とりあえず部屋には来たものの、なんて話を切り出そうか……?
俺が悩んで黙っていると、唯も何か話したそうな顔をしているものの、
なかなか口を開かないでいた。
「……かず君」
そして何か別の話題でもして、“そっち”に話の流れを持っていこうかと
考えていると、唯が先に口を開いた。
「あの、ね……」
「うん」
「私、日本に帰って来ようと思ってるんだけど……」
「えっ!?」
(まさか、俺と同じ事考えてたなんて……)
「あ、でも、あの……スケジュールの事とかあるから、すぐに帰れる訳じゃなくて、
もう少し先の話なんだけど、かず君はどう思うかなー? って……」
「もちろん、嬉しいよっ」
「ホ、ホント?」
唯は俺の反応が意外だったのか驚いている。
「当たり前だろっ?」
「だ、だって……前にかず君“会えなくても唯が俺のものでいてくれるなら
それだけでいい”って言ってたから……あんまり会いたいとか
思ってないのかと思って……」
(えぇーっ!?)
「それに、電話とかメールでもいつも会いたいとか言わなかったし……」
「あ、いや、それは……」
確かに俺は電話でもメールでも“会いたい”と口にした事はなかった。
「だから、私が日本に帰って来ない方がいいなら……と思って、
聞いてみたんだけどー……」
「そんなわけないだろっ」
その言葉に唯はパッと顔をあげた。
「俺もずっとその話をしようと思ってたところだったんだ」
「え……」
「俺が会いたいって言わなかったのは、なんか……言っちゃったら
感情が抑えきれなくなって仕事とか全部放り出して
唯に会いに行ってしまいそうだったから……。
“会えなくても唯が俺のものでいてくれるならそれだけでいい”って
言ったのだって……あの時ホントにそう思ってた。
ただ、唯を取り戻したくて、戻って来てくれるなら会えない事くらい
何でもないって思ってた。
……でも、やっぱり俺はいつだって唯と会いたいって思ってる」
「……」
俺がそう言うと唯は驚いたような、でも嬉しそうな顔をしていた。