続編 -和磨の本音、唯の本音・5-
酔った勢いで突然ホテルまで来た俺を唯は怒る事もしないで話を聞いてくれた。
“愛してる”と言って欲しくてそのまま勢いに任せて聞くと、
真っ直ぐに俺を見つめて「うん、愛してる……」と、
少しだけ恥ずかしそうに言ってくれた。
「かず君、結構飲んでる?」
「うん、ごめん……」
唯が言ったとおり、俺は結構……いや、かなり飲んでいた。
『ニューイヤー音楽祭』が終わった後、唯と澤田は共演者の人達と打ち上げに行った。
仕事を終えてマンションに戻った俺は唯と澤田の事でずっとモヤモヤしていた。
唯も何も言わないし、と言うか俺が聞かないから何も言わなかったのだろう。
かと言って橘さんと別れた直後に聞くのもどうかと思い、
黙っていたらついつい聞くタイミングをすっかり失くしていた。
……で、今日に至ったわけだ。
飲んで寝てしまおうと酒を呷ったはいいが、元々酒に強い俺は
いくら飲んでもまったく酔わなかった。
モヤモヤした思いだけが頭の中をグルグルしていて、
それを振り払いたくて、忘れたくてまた酒を呷り、
そんな事を繰り返す内、しばらくしてからどういう訳か一気に酔いが回った。
そして気がついた時にはタクシーに乗って唯が泊まっているホテルまで来ていたのだ。
「唯……」
俺はこの勢いのままもう一つ、唯に言いたい事があった。
「うん?」
「……」
でも、頭が上手く回ってくれない……。
「……かず君」
気がついたら唯の声が聞こえ、微かに体を揺すられていた。
「かず君、起きてー」
「……?」
目を開けると窓から太陽の光が射し込んでいた。
「っ!?」
慌てて体を起こすと「かず君、電話。望月くんからだよ」と、唯に携帯を渡された。
どうやら俺は眠ってしまっていたみたいだ。
「え? あ、うん……」
どうして唯の携帯を渡されたのか一瞬わからなかったけれど、
そう言えば携帯を持ってきた記憶がないなと思い、
部屋に置きっぱなしにしている事を思い出した。
「……もしもし?」
『やっぱ、おまえ、唯ちゃんの所に行ってたのか』
完璧に二日酔い。
拓未の声がガンガン頭に響く。
「ちょ……声……」
『あ?』
「いや、なんでも……つーか、俺、ちょっと遅れるから先に行っててくれ」
拓未とはだいたいいつも一緒に仕事に行っている。
だから、俺が時間になっても現れないし、携帯にも出ないから
おかしいと思って唯の携帯に電話を掛けてきたのだろう。
『まだ唯ちゃんのところにいるって……なんかあったのか?』
「後で話す」
『わかった。んじゃ、先に行っとくから』
「おぅ、悪いな」
(やってもーた……)