前編
アリステリア・ヴェルド・クレノウェールは、上機嫌だった。
軽快なステップでせまりくる男共を避け、指をパチンと鳴らしては彼女特有の魔術を容赦なくぶちかまし、ばたばたと倒れていく敵を満足気に踏みつけていく。
「ちょっと、もう終わりとか言わないわよね?腑抜けにも程があるわ」
あとからあとから出てくる雑兵(と、彼女には見えているが実際はそれなりに力を持った成人男性である)をなぎ倒すのは、アリステリアの趣味といってもいい。
そうして、すべての敵が地面に伸びたことを確認したアリステリアは積み重なって倒れている男共の上に腰を下ろしてふんふんと鼻歌を歌いながら目を閉じていた。
――その刹那、バン、と何かが崩れる音がしたのち、黒づくめの男が額に青筋を浮かべながら現れた。アリステリアは目を開けて、不満げに男の顔を見上げる。
「アリステリア・ヴェルド・クレノウェール!お前はいったい何回言えば気が済むんだ?!俺を置いて出歩くな!勝手に魔術をぶちかますな!せめて被害は最小に抑えろ!!」
「うるさいわよ、ステファン・クロッシード!私の崇高な魔術の邪魔をしないでちょうだい」
「崇高な魔術だあ?寝言は寝ていえ!」
「ああもう!ここのどこかに金蔓が隠されてるの、私はそれを探ってるのよ?あなたが邪魔したらこれからの旅費がもらえなくなるのよ?!」
「金蔓じゃなくて誘拐された子供たちといえ!!」
男の名前は、ステイル・クロッシード。魔術師 アリステリア・ヴェルド・クレノウェールの相棒であり、悪友であり、そして共犯者である。
剣士を名乗る通り、よく手入れされた剣を2剣腰にさし、一分の隙も感じさせない身のこなしでアリステリアに近づいた。もちろん、眉間の皺と額の青筋はそのままで。
気にした様子もなくマイペースに、誘拐された子供たちを探っているらしいアリステリアは目を閉じたまま足をぶらつかせている。
――そしてその数秒のち、彼女は至極楽しそうに目を開けた。
そして、艶やかな笑みを浮かべる。その笑みは、一般の人間にとっては魅力的に映るだろうが、ステイルにとっては凶悪といっていいくらい、危険なものである。ため息を吐き出したステイルは、この暴走魔術師が…と吐き捨てた。
***
アリステリア・ヴェルド・クレノウェールは魔術師である。
そして、彼女に出会った人間は、彼女を【稀代の魔術師】あるいは【神の落とし子】と呼ぶ。
もっとも、彼女の性格を詳しく知るステイルのような人間にとっての彼女の認識は、【悪魔の化身】【横暴の代名詞】である。
彼女をなぜ、稀代の魔術師と人は呼ぶのか。それは世界にとって魔術とは、魔術を使う人間が希少な人種になってきているからである。
世界に人はあふれている。けれど、人が増え知能が発達し、科学分野の研究が進むにつれ魔術あるいは魔法というものが姿を消し始めているのだ。100人に1人が魔術の才を持って生まれるが、それが開花するかの確率は50%以下に近い。
――そんな中でも少数ではあるが魔術師は生まれていく。各国に国立で魔術師学校が誕生し、魔術の才を持つものは問答無用でその要塞にる連れ込まれるのである。少なくなった魔術師を少しでも守るため、という代議名文のもと、国に属し国政を有利にするという条件で国の思考に染まりきった魔術師を作ろうという国の政策である。
もちろん、そんな国に使役される魔術師は国家の要職についているといっても過言ではないため、国からの手厚い保護を受けている。好きなことをして過ごす代わりに必ず契約を結ぶ国の有事の才には協力しろ、という寸法だ。
――そして、そんな体制を嫌悪するアリステリアは魔術学校から逃れ、彼女の祖父(彼は歴代で最も優秀な魔術師と呼ばれていた)に師事し、また彼が没した後は書籍などから独学で魔術を会得したのち、剣士ステイル・クロッシードを引き連れて諸国をふらふらと旅しているのである。
彼女の魔術は、他の魔術師が必要とする呪文も必要ない。それこそが、彼女が稀代と呼ばれる所以。おこしたい現象をイメージし、それを具現化する。もちろん、対象は外さずに。無関係な人間やものには危害が加わらないように。それがいかに難しいかは、推して知るべし。
そんな彼女たちがふらりと訪れたち小さな港町――アウテンベルクは海の幸が豊富な町だった。治安も比較的よく、人柄もよい人たちが多い。
この土地を任されている侯爵がとても良い人なのだと、町の人々は誇らしげに話す。そして、だからこそ私たちは幸せなのだと。けれど、裏にはどこにでもあるようにその手の筋のものがのさばっている、よくある町である。
それでも穏やかな気候で食べ物のおいしく物価も良心的、宿も清潔なところとくれば気に入らない理由はない。
そんなこんなでアリステリアとステイルは一週間近く滞在していたのだが、そんな穏やかな日々はちょうどこの町に滞在して8日目の昼に起こった。
二人が町の大広場の隅っこ、巨木のすぐ下に座り込み旅で屋台で買った菓子を食べたり(主に大量の屋台のものを買い込んだアリステリアが)、町の人々を観察したり(主にステイルが)して過ごしていた時のことである。
穏やかで幸せな雰囲気が町全体を覆っている。異様なほどに、ゆったりとして、まるで悪いものなどないかのような。
そんな中で、人望を集めるこの町を管理している侯爵とその子息や部下たち、彼らを慕う町の人々が広場にやってきて、交流――この町ではよくあることらしい。人々との交流をはかり、不自由や困ったことはないかと情報交換をしあうというアリステリアにとっては変な儀式――を始めたところで、事件は起こった。まるで喜劇の様にいかつい男たちが現れ、侯爵をはじめとした町の人間たちを取り囲む。
一人くらい武術に秀でた人間がいてもいいはずなのに、平和に染まり切ったこの町はどうやら荒事を処理する能力が下手らしい。自警団とは名ばかりの(ステイルからしてみればお遊び程度の実力の)男たちが対抗しようとして、大人しい少女たちが敵にあっさりと捕まったことでもう身動きなど取れなくなっている。
アリステリアとステイルが呆れるくらいに、あっけなく彼らは犯人たちに取り囲まれている。
部外者、かつ、隅のほうのアリステリアたちは眼中にないのか、二人が傍観しているのを見過ごしたまま話は進んでいく。
「静粛に、諸君。私たちは何も危害を加えたいわけではないのだよ?」
その男たちの手には平和な町には似つかわしくない拳銃、刀、剣などの武器のオンパレード。そんな物騒なものなど見たことのない人が大半だろうことを証明するかのように、怯えた町の人々はパニックを起こし、子供たちは泣きはじめ、一瞬にして広場は幸せな空間から阿鼻叫喚へと姿を変えた。
その男たちのボスであろう、きちんとしたスーツを着た男はゆったりとした言葉で、けれど冷たく吐き出しながら人々を見据える。
武骨な手に握られた拳銃は、まっすぐに侯爵を向いていた。銃口の先は、足元を狙っていることにアリステリアは目を眇める。安定しない銃口は、ただ単に感情が昂ぶっているからかそれとも。
抵抗しようとした人間は、容赦なく捕まえられ、気絶させられている。武器を使わず血を流させないという配慮は、できているようだった。
「ね、ね、見てよステイル、まるで童話みたいよ。きっとこれから子供たちを攫って身代金とかを吹っ掛けるんじゃないかしら」
もぐもぐと屋台の菓子を食べるのをやめないままに異様な雰囲気に包まれた広場の中心の事件に興味を見出したらしいアリステリアに、ため息を吐き出すようにステイルは口を開いた。
まるで、というかどこからどう見ても、野次馬でしかない。
「………アリステリア、縁起でもないことを言うな。それから、もしそうなったとしても事情がない限り、頼まれない限り首を突っ込むな。俺たちはこの町には縁もゆかりもない、他人だってことを忘れるなよ?首突っ込んで面倒なことになるのは御免だぜ」
「ええ、もちろん、面倒くさいことは私だって嫌いよ。でも、私は面白いことに飢えているの」
「…お前な、人が生きるか死ぬかの瀬戸際であれだけパニックに陥ってるってのに面白いことに変換してやるなよ」
「貴方だって欠片も興味持ってないじゃない?アレは私にとっては関係ない出来事だし、私に売られた喧嘩でもないし、たぶん何もしないわよお。あーあ、魔術をぶちかます機会が最近なくて腕がなまり始めてるから発散したかったんだけど。…まあ、貴方は別に、木でも切ってりゃいいんだろうけど、私はほら魔術じゃない」
「俺の剣は木を切るためのもんじゃねえよ叩き切るぞ!!」
「やだ、こわあい」
「他人の神経逆なでする特技は認めてやるよこの暴走魔術師…!」
ぎり、と額に青筋を浮かべながらステイルが腰の剣に手をかける。
この女、どうやら相当斬られたいらしいなと、浮かべている凶悪な表情はしかし、アリステリアにとっては大したことのないものだ。
「何よ、喧嘩する?買うわよ、魔術ぶちかますわよ?っていうか、ステイル最近キレやすくなったわよ。栄養足りてないんじゃないの」
「てめえ相方に向かって魔術ぶちかますって人じゃねえ!お前の血は何色だ」
「相棒でか弱い乙女に対して叩き斬るとか言ってる人に言われたくないわ!それに、私はれっきとした人間で、赤い血が流れてるわよ!」
そんな彼女たちのくだらない口喧嘩が中断されたのは、一発の銃声からだった。
パン、という乾いた音が響いたのちに、広場が騒然とする。アリステリアたちも口を噤み、広場に注目する。
知らないうちに話は進んでいたらしく、屈強な男たちが怯える大人たちを尻目に泣きわめく子供たちを幾人か抱えていた。
広場の中央、首謀者の男の向かいに立っていた侯爵は肩を抑えてうずくまっていた。
シャツに滲む血から、撃たれたのだとわかる。
「わかってもらえないとは、残念だ。この町を私が支配したほうが国からの覚えも目出度くもっと裕福な暮らしができるとどうして理解してもらえないのか。貴方が私にその権利を譲る、と一言いえばいいだけなのだよ?」
そうして男は、拳銃をしまい込むと侯爵を見下すようにしながら言葉を紡ぐ。
「この子供たちは人質としていただいていきましょう。貴方がその権利のすべてを私に譲ると一言、告げに来なさい。そうすれば子供たちは無傷で返しますよ」
「…こ、の…!」
にたり、嗤った男は馬車に乗り込むと、子供を抱えた男たちもすぐに姿を消した。
残された呆然とする人々。先ほどの幸せな雰囲気とは真逆の空気に、やるせない怒りと、悲しみがあふれている。
「途中経過は全く聞いてなかったけど、この町のトップに立ちたいからこの機会を狙って実力行使で交渉に出たってことみたいね」
「あの犯人の人柄は国を牛耳る腐ったやつらと同じく、だと聞いたが。この町を担う侯爵は国からのは任命で選ばれるそうだからな。――ただし、侯爵が後任を指名することが特例で許されていて、その決定は絶対。今の侯爵が、あの男を指名すれば法を犯さずトップにつける。そのやり方がどうであれ、決まってしまえば【この町のトップ】が死ぬか辞退するまでは変わらないそうだ」
「…ふうん?あなたどこからその情報を仕入れてきたのよ。それにしても、そういう昔気質な制度残してるのねえ。まあでもろくでもない後継者が来るよりは自分が見込んだ人をというのはわからないでもない。――ろくでもないやつに脅されて屈してしまう可能性も、無きにしも非ずだけれど」
最後になった菓子をぽい、と口に放り込んでアリステリアは立ち上がる。
パンパン、とスカートをはらい、座布団代わりにベンチに敷いていた深紅のローブを身にまとう。真直ぐな金髪は背中の真ん中あたりまで流れており、意志の強い瞳はローブと同じ深紅。そして、その瞳は力強い光を持つ。
やれやれ、とステイルも立ち上がる。黒い髪、黒い瞳、全身も黒づくめの男は整った顔立ちをしているが冷たい印象が目立つ。
「こういう絶体絶命の危機、に現れるのは、やっぱりヒーローでしょう?」
「………貴重な薬草買い込んでやがったもんなあ?それからあの大量の菓子、装飾品も買ってやがったみたいだが、いくら使ったんだ」
「あら、これからその分以上を稼ぎにいくんじゃないの。賭けでイカサマしながら勝ちまくるより簡単な、合法なお金儲け」
語尾にハートマークが付きそうなほどご機嫌に、そしてにやりとあくどい表情で笑うアリステリアが考えていることなどステイルにはお見通しである。
――金蔓発見、カモがネギしょって目の前をよたよた歩いている。きっとそんなところだ。
大金をはたいた後で心もとない財布の中身を満たすために、アリステリアは親切な魔術師の猫を被って金を儲けようという算段である。この裕福な町に君臨している侯爵ならば、たんまりと持っているだろうという確信から。全くもって実に、ろくでもない。
ステイルはどうしてこんな女と旅をしているのかと自分自身に呆れながらも、自身もまた久しぶりに暴れられるらしい予感に少しだけ楽しみを感じているので、お相子であるのだが。
「…話は聞かせていただきました、おいたわしいことです」
青い顔で手当てを受ける町長と、沈んだ面持ちで呆然としている人々の前に、アリステリアは沈痛な面持ちで語りかけた。
貴方は、と弱弱しい声でどこからか聞こえてきた声に、アリステリアはゆったりと嫣然にほほ笑んだ。その瞳の強い輝きは、町の人々には好意的に映ったらしい。しかして実際は、金にくらんでいるのであるが。
「私たちは旅の合間にここに滞在させていただいているものです。私はアリステリア・ヴェルド・クレノウェール、魔術師です。そしてこちらはステイル・クロッシード、腕の立つ剣士。私たちに、今回の事をお任せいただけませんか」
「…その言葉、感謝します。しかし、無関係な貴方がたを巻き込むわけには…」
難色を示した侯爵に、町の人々は戸惑いながらもうなづく。彼女たちが本当に自分たちの味方であるか、疑っている様子である。
アリステリアが全く立場がわかっていないと眉間に皺を寄せるより早く、一人の少年がぱ、っと顔をあげてアリステリアを見上げる。
「稀代の魔術師、アリステリア・ヴェルド・クレノウェール!」
「あら、そんな名前がついてるの私ってば」
「稀代の、なんてたいそうな女かお前は」
つい口に出したステイルの足を思い切り蹴飛ばして、アリステリアはにっこりと少年に笑いかける。
そんな彼女に少年は、泣きそうな顔で言葉を発した。
「お願いします、助けてください!僕の妹を助けてください!」
「……立派な正義感ねえ、」
ぼそり、とつぶやいた言葉は風に溶けて消える。
笑みを崩さないままで、アリステリアは口々に助けを乞う町の人々から目を話、侯爵を見据えた。
「貴方たちのかわいい子たちを傷をつけず、そしてあの男たちを片付けることをお約束します」
「……貴方のような方に出会えたことは幸運です。お礼は、いくらでも差し上げます。助けていただけますか。私は、この町を、この人々をあの男たちから守りたい。けれど、今の私には、それは難しい」
それに何も答えず、アリステリアは歩き出す。
ステイルもそれについていきながら、一番初めに助けを求めた少年の頭に手を置いた。
短く、任せておけと告げて。
ぱあ、と輝く笑顔を背に、ステイルは久しぶりに剣をふるえることに笑いながら、アリステリアは謝礼ははずむという言質をとれたことにニヤつきながら。
広場をでて少し歩いたところで、アリステリアは立ち止まり、ステイルに向き合ってにっこりと笑った。
「じゃあ、ステイル。歩くのもたるいし、私先に行くわね」
「…っはあ?!ふざけるなよ俺は奴等の拠点なんてわかんねえんだぞ!?」
「大丈夫よお、走れば。ちゃんと到着地点まで目印つけてあげるから」
歌うような口調で言うと、パチンと指を鳴らしてアリステリアは姿を消した。
使役している式で探り出した拠点を見つけたらしいが、一人で突っ込む気満々なようだ。というよりも、ステイルを一緒に術で運ぶという考えが、彼女からは欠如しているのである。
そしてもちろん、こういうことは旅をしている中で四六時中起こっていることなのであるが。
「あの横暴魔術師今日こそ叩き切る切り刻んでやる…!!」
低い声で唸りながら、青筋を立てつつステイルは走り出す。
ご丁寧に、可愛らしい砂糖菓子を一定の間隔をあけて目印の代わりに落としていくという高度なテクニック付きで。もちろんそれは、ステイルの怒りを助長するもの以外に他ならない。
そして、冒頭に戻るのである。
***
犯人たちの拠点とされるのは、町の外れにある廃墟と化した屋敷だった。
人は滅多に立ち寄らないこの場所は、拠点とするにはちょうどよかったのだろうが、どうも場所選びが滑稽である。小物感が否めない。
「地下の一番奥の部屋、にいるみたいよ」
「次に置いていったらお前も一緒に叩き切るからな」
場所を告げたアリステリアをステイルは睨みながら告げた。
たいして気にもしていない様子でアリステリアは誤魔化すように肩をすくめた。
そうして二人、歩き出しながら他愛もない会話を続ける。
「わかるかったわよう、あの可愛いお菓子が気に入らなかったの?」
「…そういう問題じゃねえ。っていうか食べ物を粗末にするな」
「だって賞味期限切れてるやつだったんだもの。それに、英雄は遅れて登場するものって道理が決まってるじゃない、歩いていくわよ、もちろん。そして派手に登場するの」
「そういう小説の真似事好きだな。その前にガキどもが傷でもつけられてたらどうすんだ」
「あら、そんなことになるわけないでしょう?そこまでできる男じゃないのはさっきのではっきりしてるわ。
気付かなかった?少し銃を持つ手が震えてたわ。それに、武器持ってたってアイツの部下たち、対人での戦闘経験皆無よ。威嚇射撃もしなかったし、ただ単に持っていれば脅すために用意したものだと思う」
「ああ?じゃあ雑魚じゃねえか」
「そういうことになるわねえ」
「……一般人相手に、容赦なく魔術ぶちかましたの、お前」
「【一般人だろうがなかろうが、悪人には鉄槌を。情けは無用、二度と逆らう気が起きないように容赦しないことが大切である】と、私の祖父は今際の際に言っていたわ。遺言には、忠実に生きないとね」
何でもないことのように言い切って、アリステリアはゆっくりと立ち止まる。
目の前には扉。そして、それはこの屋敷の最後の部屋の前。
「…お前もお前の爺さんも国に首輪つけて管理してもらったほうが世のためになると思ってしまうのは俺だけじゃないはずだ…」
「いつまでもうるさいわねえ、私の相棒になった時点で共犯よ!さあ、金蔓を取り戻しに行きましょう、野宿なんて真っ平御免だものね」
「……ったく、お前に巻き込まれた時から覚悟はしてるが」
その答えに満足したのか、ローブをはためかせながら、アリステリアはステイルに目くばせをし、二人そろって足を上げると――、そのまま扉を蹴破った。