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SF・ホラー短編

僕とあの人と僕とあの人

作者: 相戯陽大

午後7時58分、塾からの帰り道。塾に筆記用具を忘れてきたことを思い出して急いで塾に引き返そうとしているとき、どこからか呼ばれているような気がした。


「おーい、君だよ君!」


道の向こう側から僕を呼んでいたのは見知らぬ人。落し物でも届けに来てくれたのだろうか。


「実は…僕は超能力者なんだ。」


一体この人は何を言っているのだろう。仮にこの人が超能力だったとしても僕に打ち明ける理由がない。


「急にこんなこと言われて戸惑うかもしれないけど、本当に僕は過去に戻ることができる超能力者なんだ。」


過去に戻る。本当にそうなら確かに超能力かもしれない。未来でこの人と知り合っていたとすれば、この人が僕に話しかけるのも無理はない。


「それで、この能力で他人を過去へ飛ばすこともできるんだけど、そうすると飛ばされた人に能力が移って、元々の超能力者から能力がなくなっちゃうんだよね。」


なんて不便な能力なんだろう。他人のために使うと消えてしまう能力だったら無闇矢鱈に人助けができるわけでもない。超能力を持つことで世間から気持ち悪がられたりもするだろう。その能力を他人に押し付けることにもなりかねないのだ。


「僕はそうやって君からこの能力をもらったんだけど、正直こんな能力邪魔なんだ。僕は普通の人生を送りたい。だからこの能力を過去の君に渡すことにするよ。」


その瞬間、周りにいた人が消えて、別の人が現れた。時間がほんの少し戻ったのだろう。能力を人に押し付けるなんて、なんと自分勝手な人なんだろう。時計を見ると午後7時41分。とりあえず能力のことは忘れて筆記用具を取りに戻ることにした。


塾から2回目の帰り道。少しずつ「あの人」と会った場所に近づいていく。少しずつ「あの人」と会った時間に近づいていく。


午後7時58分。道の向こう側からこっちに近づいてくる「あの人」を見つけた。今度は僕があの人に声をかける。


「おーい、君だよ君!」

ループものです。一度書いてみたいと思っていたのですが、少し変わったループものを作りたかったのでループの規模を小さくしてみました。ループの始めから終わりまで数分です。ちなみに午後7時58分の塾からの帰り道はこの物語のアイデアが思い浮かんだ時間と場所です。


日常の生活に数分間の非日常、体験してみたいと思いませんか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 凄い! 僕、ループが好きなんですけど、ただのループは好きじゃないんです。 僕が好きなループは、『あること』が最初は意味わかんなかったけど、その話がループと分かった瞬間に最初の『あること』の意…
[一言] こういうのってタイムパラドックスがどうしても気になってしまいます。 この話の場合だとループを続けると、外から見てる人には二人がどんどん年を取ってく様になるのかな? 時間移動のSFって難しいで…
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