坂の上の秘密の場所
あなたにプロポーズされたのは、もう十年も前の話。うら若き中学生の頃。あなたは夢に向かって一生懸命だったね。今も遠い場所で頑張っているの?
私は少しずつだけど、本当に少しずつだけど夢に近づいたよ。足踏みしたり走り出したりのあの頃が何だか懐かしい。
ねぇ、私、あなたに近づくことはできたかな。
私はあなたに出会えたから、決心することができたの。かなり駆け足だったけど、それでも無茶をして良かったと思えるんだ。
私の中の原石に気づけた。磨く努力をし始めた。あなたは二歩も三歩も先を行くけれど、私、もう焦らない。自分のペースで歩んでいくわ。
でも、あなたが隣にいてくれたら、心強いな、なんて。
あの日、あなたと一緒に登った坂道。今は一人で登っている。
でもね、寂しくはないよ。だって、あなたはそこで待っているんでしょ? あの日みたいに迎えに来てくれてもいいのに。出会った時みたいに意地悪ね。
「ずっと空を飛んでいた鳥は、ついに足をつく」
「……」
「なぜって聞かないの?」
「聞いて欲しかったんだ」
「意地悪」
「悪い、続き聞かせて」
「……大地に、大切な人がいたから。今度はその人と一緒に飛び立つ準備をするの。おかしい?」
「いや、すっごくお前らしくて良いよ」
「それは良かった」
「なぁ、俺はまだまだ一人前には程遠いけど」
「……」
「一緒に、来てくれないか」
「あの時の方がもっとストレートだったな」
「結婚してくれ。半人前だけど、絶対にお前を支えてやる」
「嬉しい。私もあなたを、支えたい」
朝もやの海が淡い橙色に染まり始める。私は大きく手を広げた。
さぁ、飛び立とう。
とある映画を久しぶりに見直したら、忘れていることが多くて驚きました。でも、不思議と昔見ていた時の自分に今の自分が重なる感覚がするんですよね。感動するところとか、ニヤニヤしちゃうところとか、全く同じといいますか。あれ、もしかしたら私成長していない??
この小説は、その後を勝手な想像で書いちゃったものなのです。もしかしたら勘の良い方にはわかるかもしれません。結構あからさまです。見終わったすぐ勢いで書いているので、おかしな点などなどあるかと思いますが、どうしても感動を何かに詰めなければいけないと思いこういう形を取らせていただきました。
それではまた。
2014年 8月27日 春風 優華