表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

二番が一番

私はなんでも二番が好き。一番は目立ってしまうから、私には二番がちょうどいい。成績だって、二番でいるのが心地よい。

だから私は常に二番を目指した。もちろん、全く手の届かないものもある。けど、少しでも可能性があるのなら、二番になるため努力した。

私はいつしかみんなの二番になっていた。一番中の良い友達は別にいるけど、その子に言い辛いことがある時は、二番の私に相談する。やっぱり二番は心地よい。


高校時代、私は一番になるべく人と出会った。その人は一つのことで一番になる努力をしていた。私とは違う、輝くために生まれてきた人だ。私はその姿に惹かれ、その人を応援したい思った。

結果その人を支える立場になることができた。全く面識のない私を、その人は側に置いてくれた。私は二番目の立場から、応援することを許された。


最後の年、その人は一番になれなかった。周りは皆落胆したし、私もとても悔しかった。そして今までの時を思い返し、ふと、その人はいつの間にか私にとって一番になっていたことに気づいたのだ。初めて見た時から感じていた、一番になるべく人というのは間違っていなかった。


「俺の一番になってください」

帰り道に言われたこと。

「いや、あの、一番はちょっと……私には荷が重すぎて」

慌てすぎて(どぶ)にはまってしまう私。その人は私を抱え起こすと、芝生に座らせてくれた。

「俺の一番は、嫌なのか」

とても悲しそうな声で呟きながら、溝に入った方の足を真っ白なタオルで拭いてくれる。

「靴、脱がすぞ」

そう言うと、私の返事も聞かずに、どろどろのローファーを足から抜き取り、靴下を脱がし、また丁寧に拭いてくれた。その最中、私は一言も発せなかった。ただ身体中が熱くなるのを感じていた。

「やっと、言えたんだ。今までは部活が一番で、お前の存在は大きかったけど、一番にはできなかった。けど、これからは一番にお前を大切にしたい。でもお前が嫌だと言うなら」

「い、嫌じゃないよ!」

やっと絞り出した声は、焦りすぎて裏返ってしまった。耳まで真っ赤なのが自分でわかる。それは恥ずかしさのためもあるし、きっと嬉しくて興奮していたためでもあるだろう。

その人は私の声に驚いて顔を上げると、そのままじっと私を見つめた。私は耐えきれずに視線をそらす。

「それって、つまりどういうことだ」

その人は私の視線を追いかけて、落ち着かせるように優しく尋ねた。

「あの、あなたは私にとっての一番だから、私があなたにとって特別な存在でいられるのはすごくすごく嬉しいです。けど、私は二番目でいたいんです」

「どうして、一番じゃダメなんだ」

「だって、一番なんて、私にはもったいないから……」

「でも、お前にとっても俺が一番なんだろ。だったら、良いじゃないか」

その人はとても嬉しそうにニコッと笑って私を抱き上げた。力持ちなその人は、平均より小さい私を持ち上げるのなんて楽勝で、そのまま自転車の荷台に私を乗せると、ゆっくり引き出した。

「荷物じゃないんだから、ちゃんと歩くよ」

「いいのいいの、俺が好きでやってんだから。こう見えて俺、独占欲強いからさ、これからは皆にお前は俺のものだって堂々と示したい」

「でも、なんで私?」

「そんなん決まってんだろ、好きになったからだよ。感情に理由をつけるなんて野暮なこと、俺はしないよ」

「それって、直感ってことじゃないの」

「違うって、この三年間一緒にいてそう思ったんだ。気の迷いなんかじゃないよ、絶対に」

「……じゃあさ、せめて二番目に私を」

「やだね。そういや、前から思ってたけど、お前って二番好きだよな。一番とってもおかしくないのに」

「私に一番なんて向いてないから、だから二番が良いの! そうだ、一番はさ、家族とかご両親とかに」

「まだ言うか。おとなしく諦めて、俺の一番でいれば良いんだよ。親も大切、けどお前も大切なんだから、な」

結局、その後彼は私を二番にするとは言ってくれなかった。だから自分の中で勝手に二番という位置づけにして納得することでなんとか落ち着いた。一番だなんて思っていると、プレッシャーで身が持たない。でもそんなことを彼に言うと、また笑って気にしすぎと言われるから、私は自分の中だけに収めている。


数年後、やっと私は心から二番になれたと落ち着くことができた。彼に抱かれてきゃっきゃと声を上げる二つの小さな命。彼は間違いなく、この二つの命を一番に大切にするだろう。

一人が彼を離れ私の足に飛びついてきた。だっこだっことせがむその子を私は笑って抱き上げると、彼に近寄る。

私にとっては、彼も、この二つの小さな命も、どちらも一番だ。

けど、彼にそんなことを話そうものなら、俺だって同じさと返されて、私を二番にはしてくれないんだろうなと思い、苦笑して自分の中にとどめておくことにした。


二番が一番。

引き続きまして二作品目です。

一話より少し長めですが、すぐに読める簡単な話ですね。セリフと語りがはっきり別れすぎてしまったなと少し反省。まだまだ面白さへの道のりは長いです。


今後もどんどん増やして行く予定です。こんな話どう? などありましたら教えていただきたい。幅広い恋愛を書きたいですね。


ではまた。


2014年 8月6日 春風 優華

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ