第五話
「……て」
うぅん。まだ寝るの〜。
「……きて、とおる」
やー。むぅ。……お休みなさい〜。
「とおる。起きて」
うぅー。もうちょっと〜。……あと五分〜。
「と・お・る・お・き・て」
ふぇ?だれ?
「おはよう、とおる。朝ごはん作ったから、食べましょう。今日中に町に行くわよ!」
「……う?……まどか?」
「そうよ。目覚めた?とおるは、朝は弱いの?」
「まどか?……あー、転生したんだっけ。おはようございます。ご飯作ってくれたの?」
「おはよう。先に目が覚めたから、作っておいたわ。起きてすぐに、食べれる?」
グゥウウ
返事はオレのお腹が先にしちゃったよ。はずかしいな〜、もう。
「あはは、大丈夫そうね。朝ごはんにしましょ。荷物から、スープボールにスプーンとコップを出して」
「は〜い。」
外套と毛布をたたむ。うーん。体中がピキピキなってる。……地面が柔らかい分、野宿でも、まだマシなのかな。今日はベットで寝たいな〜。
リュックの中を探す。んー、見当たらない。どこだ?あと見てないとこは……鍋の中?蓋をあけてみる。あった。フォークもあるけど、これはいいや。
「まどか、お待たせ〜」
「しっかり、食べてね。今日は、宿に泊まりたいわ」
「しっかり食べる〜。昨日、頑張って乗りこなしたもんね。自分で飛ぶほうが難しいなんて、思わなかったよ」
「バランスとる練習したら、かっこよく飛べるようになるわ。うふふ」
「むー。」
まどかが、スープをよそってくれた。水もコップに入れてくれる。
「はい、どうぞ」
「頂きま〜す。あれ?パンもスープに入ってるよ?」
「あんまり硬いから、スープと一緒に煮て、柔らかくしたの。食べてみて」
「はーい」
おいしそう〜。ふぅふぅ、冷まして、ぱくっと一口。
濃厚な味だ〜。パンも味がしみて、美味しい!これ野菜?ちょっと甘い?こっちは肉だ。うーんん?牛肉?……和牛じゃないや。でも、美味しい!
「まどか、美味しいよ〜。ありがと〜。」
「口に合ったのなら、よかったわ。とおるは味が濃くても大丈夫?」
「大丈夫〜。甘いのも好き〜。炭酸も好き〜。ポテチも大好き〜」
「私も!食事の好みも一緒みたいね。旅用の保存食は味が濃いのよね。町に着いても、ここ気温が高いから、香辛料を多く使っているかも。香辛料も平気?」
「平気〜。でも辛いのはちょっと苦手〜」
「私も。食事処は注意して探さないとね。町に着くまでは、このスープがメインになるわ。今日町に着けなかったら、夕食も明日の朝食もこのスープよ。だから、今日は移動に集中しましょ」
「はーい」
ふう。お腹いっぱいになった。ふっくらしたお腹をさすりながら、まどかを見る。
「とおる、足りてる?足りなかったら、昨日食べた果物があるわ」
「大丈夫。もういっぱいです〜。果物はお昼に食べようよ」
「そうね。料理する時間も惜しいもの。お昼は果物ね」
「ラジャ!」
「ご馳走様でした」
「ごちそうさまでっす!」
「片付けて、移動の準備をしましょう。洗い物するから、とおるは荷物を纏めてね」
「ガッテンだ!」
食器をまどかにお願いして、荷物を纏める。
昨日の成果を出す時がきた!!MAXで風のボール出しておいて、少しずつ蹴り出す方法も編み出したし、今日中に着くかな〜。
お風呂も入りたいし〜、魔法使いの人はいるのかな〜。フレンドリーな人ならいいな〜。
「とおる、洗いおわったから、これリュックに入れてね」
「ありがと。こっちの準備は、あとこれと、身支度だけだよ」
「お昼は果物、何個食べる?それと手ぬぐいは、1枚は持っててね」
「二つ食べたい。お昼はオレのから出すよ。手ぬぐいは、ポケットないから、まどかの袋に入れてもらってもいい?」
「了解」
リュックから、果物4つと手ぬぐいを取り出して、まどかに渡す。
「お願いします〜」
「水は私のを出しておくわ。能力把握の画面出しておいてね。残り6魔力になったら、着陸して交代しましょ」
「わかった〜」
食器をリュックに入れて、荷物はこれで完成。能力把握の画面を出しておく。
魔力は全快だし、昨日だけで、氷魔法に雷魔法、それに結界もLV1!ちょっと意外なのは、引力魔法がスキルにならなかったことか。
参考にするのは新規スキルになって、核にするのでは新規スキルにはならない。もうちょっとデータがほしいな〜。
魔法開発のギルド発足にむけて頑張らなきゃ!今日もいっぱい魔法使って、魔力の探知ができるようにならないと!
昨日みたいに、腰にロープを巻いて、短剣を差す。外套を被って、出来上がり!
「お待たせ。とおる。準備はいい?」
「OK〜。任せて〜」
まどかのリュックとオレのリュックを並べて、上にまどかの杖を置く。
「魔法の出番よ!」
まどかに頷く。
もう、無詠唱でできるもんね。こころを落ち着かせて〜。
グラヴィテイションボール!
すかさず、まどかが結界を張った。丸みを帯びたフォルムになってる。これで着陸もスムーズになる〜。
「さぁ、ロープで持ち手をつくりましょ。まずは位置を決めましょ」
「ラジャ!」
前後に跨って設置の場所を決める。
「まどか。荷物は真ん中に固定しようよ」
「そうね。後ろの持ち手を作るときに、荷物を取り外しできるように輪っか部分を作りましょ」
二人がかりで、しっかり縛る。よし、外れない!!
「準備OK〜。まどか、出発しよう!最初はオレから!!」
「じゃ、私が前ね」
まどかが、しっかりロープを握ったことを確認する。
「じゃあ、カウントするね〜」
「OK」
「3、2、1、0、発射ー!!」
風のボールをMAXでだして、一部を下に蹴り飛ばす。1m程、真上に浮かび上がる。すかさず、今度は後ろに蹴り飛ばす。
飛んだ!!自転車より少し早いくらい。気持ちいい!!
スピードが落ちてきたら、また蹴り飛ばす。
「まどか!このぐらいのスピードでいい?」
「大丈夫!このままいけるわ!きつくなったら、魔力が残っていてもすぐ交代するわ。ちゃんと言ってね」
「大丈夫〜。この調子なら、1回で1kmは進めると思う〜。風きつくない〜?」
「このくらいなら、大丈夫!今日は、風が追い風よ。今のうちに進みましょ」
「ラジャー!!」
結構、飛べたな〜。そろそろ風のボールが無くなる。
「まどか〜。そろそろ着陸姿勢とって〜」
「わかった!いつでもいいわ!」
「あとね〜4回蹴ったら、無くなる〜」
最後のボールを蹴り飛ばす。
「まどか。もうないよ〜」
「着陸ね!前傾姿勢をとって!しっかり掴まって!!」
「ラジャ!!」
少しずつ高度が下がる。うまく水平になっている。姿勢と重心を維持する。
ズズズズザアァァゴンッ
うわっ!跳ねた!バランスを崩さないようにしがみつく。
ズザアアアアアァァァァァァ
止まった。ふぅ。結構滑ったな〜。うわっ!草原が割れてる!うーん。着地方法なにかないかな〜。
「まどか。大丈夫?」
「大丈夫よ。少し休憩しましょ。それと着地方法考えましょう。思ったところに着地できるようにしたいわ」
「OK〜。ちょっと休憩してから、話し合おうよ。それまでに、各自考えようよ」
「じゃ、休憩ね。とおる、水飲む?」
「欲しい!」
まどかが、袋から水を出し、コップに入れてくれた。
「とおる、はい、お水」
「ありがと〜」
暑いから、お水もぬるい〜。今日は飛行に魔力を使うから、氷はお預けだな〜。
「ごちそうさま!二人乗り初飛行、成功だね!!」
「二人そろえば、何でもできそうね!!」
「えへへ。魔法って楽しいね〜。」
「ホントね。うふふ。魔法で飛べる日がくるなんて!!」
まどかもご機嫌だ。オレもテンションあがってるけど。
周りを見渡す。目印の町は少し大きく見えるようになった。町より向こう、かなり遠くに山が見える。
草原もゆるやかな起伏があるみたい。追い風もあって、飛べたのは10kmぐらいかな?時間は30分ぐらい?
えへへ、いい感じ!
あとは〜、着陸か〜。うーん、地面の状態で跳ねちゃうから、滑らないようにしたほうがいいか。
そしたら〜、前方に風のボールを蹴り飛ばす?ブレーキになるかな?
うぅん。他には……風で全体を包んでエアーボールみたいにして、着地?それだと滑るのは止まらない?エアーボールを壁みたいにして、そこに突っ込むか。
あとは精霊魔法?精霊に止めてもらう?案としてはこんなものかな。
背伸びして、体を伸ばす。長時間の飛行は魔力の問題もあるけど、職人さんに乗り物作ってもらわないと、無理だろうな〜。
配達のお仕事するんなら、どんなもの運ぶかで積載サイズ変わるよね。町での情報収集次第かな。
「まどか、考えた〜」
「こっちもいいわ」
「オレからね。一つ目、ブレーキ代わりに、前方に蹴り飛ばす。二つ目、風の塊を壁にみたてて、そこに突っ込んで止まる。三つ目、精霊魔法で、精霊に止めてもらう。こんな感じ〜」
「一つ目は一緒ね。二つ目は、そんなに高く飛んでるわけじゃないから、飛び降りて、止める。壁を作る案は私も考えたんだけど、衝撃で怪我しかねないと思うの。一押しは私の二つ目ね」
「確かに、そうだね〜。高度とスピードが落ちてきたら、飛び降りて、捕まえとけば、ちょっと引きずられて走っても、大丈夫そう〜。次はそうしてみようよ」
「決まりね。今度は私が、後ろね」
「オレが、前〜。スピード上げてみる?もうちょっと上がっても、大丈夫だよ。」
「様子を見ながらにしましょう。私もどこまでスピード出せるか、わかんないし」
「ラジャ!」
「そろそろ行く?」
「OK〜」
まどかが後ろで、オレが、前に乗る。
くふふ。風を切るぜ!!
「とおる。準備はいい?」
「バッチリでっす」
「3、2、1、0、行くわよー!!」
おぉ!浮き上がった!加速する!
広大な草原を、飛んでいく。気持ちいい!
あっ!?風の向きが少し変わった?バランスを取りながら、微妙に進路を変える。追い風にしたほうがいいよね〜。
これ以上スピード出すのは、ゴーグルがないと厳しいな〜。作れる職人さんいないかな〜。