第三話
「ねぇ、まどか。まず、何からする?」
「そうね。できれば氷魔法を創りたいわ。ここ湿気はあまりないようだけど、気温が高いもの。需要もあると思うの」
「じゃあ、氷魔法からだね。オレ、他には雷創りたい!」
「いいわね。スタンガンがわりにもなるし。後は……重力に関する魔法と空間に関する魔法が欲しいわ」
「重力……ブシャッって押しつぶすやつ?……スプラッタにならない?オレ……スプラッタきらい」
「その使い方もあるけど、自分を軽くしたり、物を軽くしたり、重量をコントロールして移動の際の負担軽減に使えると思うの。中世とか戦国時代って、移動とか大変よ。どう?」
「じゃあ、重力は、まどかがメインで!オレお手伝いで!」
「空間魔法は?興味ない?」
「次元収納とかは欲しい。ドロボー対策にいいと思う!」
「ええ。できればその方向で創りたいわ。後は、対象物をそのまま時間を止めて収納できれば、なお良しね」
「時間魔法との組み合わせでいけると思うな〜。まずは、一つずつ創っていこうよ」
「方針がこんなに早く決まるなんて!やっぱり魔法使い同士だと話が合うわ!」
「オレもそう思う!残り時間13分で決まったから、頑張って念じたら、魔法大好きさんとペアにするって、言ってくれたんだ」
「私も!基本属性が6個だったから、派生魔法は創れると思ったのよね。でも一人じゃ難しいかもって思って、ペアになる人を魔法使いになることを選んだ人でお願いしますって念じたの。とおるとペアでうれしいわ」
「まどかとペアでよかった!感謝だよね」
会話しながら、周囲を見渡す。
「周り、なんにもないね〜」
「草ばっかり、広大な草原ね。……今日中に着くと思う?」
「歩いても、全然見える大きさ変わんないね。……着かなかったら野宿?」
「野宿しかないわね。結界を取ってるから、安全は確保できると思うの。ただ、木らしきものも無いから、薪がないわ。灯りらしきものも、リュックにはなかったから、日が暮れたら真っ暗よ。その前に野宿の準備しなきゃ」
「日が沈むまでどのくらい?」
「影が出来てるし、感じ的には午後じゃないかしら?……そうなると後数時間?」
「今日中に着くなんて無理じゃん!!」
「……出来るだけ近づきましょ。あそこしかないんだから」
「もうちょっと、近くに転生させてくれたらよかったのに〜」
「同感ね。……とおる、スキルに取ったもの以外ってあった?」
「あったよ。直感LV4が入ってた」
「私は暗算がLV4で、直感LV1だったわ。歩きながら、スキルの使い方を確認しましょ」
「OK〜。ここで魔法使っていい?」
「それは、待って。草原に被害を与えるのは、まずいわ。スキルのレベルも違うし、どのぐらいのことができるか把握してからにしましょ」
「うー。わかった。終わったら、声かける?」
「とおるが終わったら、声かけて。私のほうが時間かかると思うから」
「ラジャー!」
確認……やっぱり魔法からだよね〜。
まずは、水魔法。おおぅ!使い方がわかる!やっぱり呪文はないのか〜。杖もいらないのか〜。イメージ次第で何でも出来そうだけど、うーん。
呪文とかあったほうが、安定するんじゃ?……LV5で1mぐらい発現できるのか〜。ふんふん。
火魔法から続けて、確認していく。……LV5が1mぐらい。LV4で70cmぐらい。
精霊魔法は……精霊に呼びかけて、力を借りて発現するのか〜。LV1で20cmぐらいか。呼びかけも決まった形はないと。ん?精霊の力を借りられなかったら、発現しないの??……ひとまず、おいとこ。
後は、鑑定。実際に使ってみたほうが、わかるよね〜。
鑑定!
カジュン草:常夏の場所でしか育たない良質の牧草。食べさせると、肉とミルクの味が甘くなる。
おおぅ、やばかった!ここで火魔法使ったらダメじゃん!!セーフセーフ。……オレひとりなら、確実に試し撃ちしてた。
名前と説明文が2個……レベルによって表示される情報数が違うのかな?まどかもLV3だったから、これは確認できないや。
直感は直感だよね〜。自分にとっていいものとか感じ取れるみたい。オレ、チョイスは天才的だったからくれたのかな?
うーん。終わったけど、まどかはまだだよね〜。
魔力の確認しとこう。なんかが減った気がする。
能力把握!
魔力 :24/25
やっぱり、減ってる!鑑定で1魔力使うのか〜。
うーん。魔法を創る前に、魔力を感じ取れるようになったほうが良さそう。
使いまくって、体で慣れるのが一番じゃないかな〜。画面は閉じとこ。
まどかを見る。なんか考え込んでる。もうちょっとかな〜。
辺りを警戒しとこっと。
歩けども歩けども、周りの景色変わんないよ!日陰もないし〜。
まどかは……なんかブツブツ言ってる。自分の世界に入っちゃてるな〜。
うーん。待ちきれない!氷魔法の開発にかかろう!
火のイメージは動。激しく動いてる感じ。なら氷は静。全てが固まった状態。火魔法と交互に練習すれば、習得できるんじゃ?
まどかをチラ見する。大丈夫。自分の世界に入ってる。大きな魔法じゃなくて、指先に発現させるくらいなら歩きながらでもいいよね。
早速魔法の練習を!
指先に、ちっちゃい火をイメージする。出来た!!魔法使えた!!オレ、魔法使いだ!!
また、体の中のなんかが減った気がする。これが魔力かな。
能力把握!
魔力 :22/25
2魔力減ってる!ちっちゃい火なのに、2魔力も減るの???MAXならもっといっぱい減るの?……ここでぶっ放すのは、ダメだよね。
次は、氷の前に水をいってみよう!
指先に、ちっちゃい水の塊をイメージする。……呪文があったほうがイメージしやすいな。
ウォーターボール!……出来た!!呪文も有効!!せっかく出したし、味見しよ。
水の塊に吸い付いてみる。……全部飲んじゃった。あんまし美味しくないな。非常用の水ってことで。
次は本命の氷!!
手のひらにちっちゃい氷をイメージする。冷たさを思い出す。……振り絞れ!頑張れ、オレ!呪文……呪文はフリーズ!……出来た!!氷できた!
早速食べてみよう。頂きます。
ヒンヤリして気持ちいい。口の中の氷を噛み砕く。まさしく氷。間違いなく氷。練習したら、もっと大きいのもできるようになるよね。
一個目クリア〜。初日から幸先いいね!!
「とおる?今、ガリッって聞こえたんだけど?」
「まどか!まどか!オレ、氷魔法できた!氷冷たくて、気持ちいいよ!」
「ええっ!?もう?っていうか、魔法使ったの!?」
「だって、まどか自分の世界に入ってたんだもん。指先にちょっとの大きさだよ。心配ないよ」
「あっ、ごめんなさい。夢中になるとほかの事忘れちゃうのよね。……それより氷、氷できたのよね!?」
「まどかにもあげる。冷たくて気持ちいいよ。呪文も出来たよ。見てて!フリーズ!」
まどかに向けた手のひらの上に、氷が現れる。
「まどか。食べてみてよ。ちゃんと氷だよ」
「ありがとう。頂きます。」
まどかが口に氷を入れる。目を閉じて味わってる。ガリッて音がした。
断続的に、音がする。
「ねぇ、まどか、どう?」
「間違いなく、氷ね。冷たくて気持ちいいわ。ありがとう。どうやったのか教えてもらえる?」
「あのねぇ〜。まずは火をイメージして魔法を試したの。次は水の塊作ったの。呪文も有効だったよ。ウォーターボールって唱えたの。あんまりねぇ、美味しくなかったから、非常用の水にしたらいいと思う。氷をイメージしてね、振り絞っても出てこなかったから、呪文をね、フリーズって唱えたら、出来た!」
「……とおる!天才!すごいわ!」
「えへへ。イメージが大事みたい。それで足りないときは呪文がいいみたい」
「あっ、能力把握でスキル確認してみて。増えてるんじゃない?」
「えっ!?見てみる!」
能力把握!
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<能力把握>
名前:山本 とおる
種族:人間
性別:男
年齢:十五歳
体力 :25/25
魔力 :16/25
攻撃力:18
防御力:15
賢さ :18
素早さ:15
器用さ:18
言語
ラマン語
ダマスカフ語
エルフ語
スキル
能力把握
直感 LV4
鑑定 LV3
精霊魔法 LV1
水魔法 LV5
火魔法 LV5
風魔法 LV4
土魔法 LV4
光魔法 LV4
闇魔法 LV4
氷魔法 LV1
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出来てる!新しいスキルできてる!!
「まどか!まどか!新しいスキルできてる!!氷魔法って最後に追加されてるよ!!」
「やったじゃない!初日で新しいスキルができるなんて!!すごいわ!!」
「えへへ。次は雷〜。……うーん……まどか。雷ってどうやったら、いいと思う?なんかイメージ難しいや。」
「雷なら、まかせて。ちょっとチャレンジしてみるわ!」
まどか、どうするんだろう。歩くのをやめて、まどかを見つめる。
まどかも止まって、目を閉じた。
うん?腕を伸ばして、どうするのかな?あっ指先に火が……今、火が光った!?
「感覚はつかんだわ。危ないから、もう少し離れて」
「わかった。さっき、火が光ったよ!」
「今度は雷だすわよ!」
まどかから離れる。息を詰めてまどかの指先を見つめる。
「サンダーボルト!」
まどかが呪文を唱えると指先が光った!!雷だ!!
「まどか!すごいよ!!雷でた!!」
「ちゃんとできてた?」
「できてた!スキル確認してよ!」
まどかの言葉を待つ。まどかと目が合う。満面の笑みを浮かべている!
「やったわ!とおる!雷のスキルできてる!!」
「やったー!!まどかも天才じゃん!!ふたりとも初日で新しい魔法創れたじゃん!どうやったの?教えて!オレも雷出したい!!」
「勿論よ!あのね、火はね、煙が熱と光を持った形態で、気体の示す一つの姿なの。気体がイオン化してプラズマを生じている状態なのよ。だから、最初に火魔法を使ったの。その時に、プラズマが発生しやすいようにイメージしたの。その感覚をつかめたから、今度は呪文を使ってイメージを固定して、発現させたの!」
「火ってプラズマなの?」
「プラズマの一種ということよ。理論がわからなくても、とおるなら、今見たんだからできるんじゃない?」
「やってみる!」
まどかと同じように腕をのばす。まどかが出した雷をイメージする。火からプラズマが出る。プラズマだけを取り出す。
「サンダーボルトォ!!」
指先から雷が飛んだ!できた!できた!!
「まどか!オレも、オレもできたよ!雷できた!」
「おめでとう、とおる!」
「やったー!えへへ。まどか!ありがとう!」
「ねぇ、とおる。ちょっと休んで、先に重力の魔法を創らない?荷物を背負って移動するなら、軽くなったほうがいいでしょ?それに、気になることがあるから、とおるの意見を聞きたいの」
「うん。そのほうがいいかも〜。あっ、オレもまどかに聞きたい事あるよ。荷物降ろして、座って話そうよ」
「そうね。あっちに……ちょっと地面が見えるところがあるわ。あそこまで行きましょう」
「ラジャー!」
二人並んで、歩いてく。
まどかとなら、合体魔法とか複数人での複合魔法とかもできる!!
次は重力魔法か〜。楽しみ〜。