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結局、岩の撤去には岩自体が普通の岩ではないので最低でも二ヶ月程の時間を要する事に。村からの唯一の出入り口を塞がれた今(他の方位は崖や樹海などがある)、この村は完全に孤立してしまった。
そしてここは十字路の中央に位置する小さな温泉。村人達が集まり、例の岩を眺めながら情報を交換している。
「梯子とかも駄目だって。あの表面妙に突き出たり凹んだりしているのが原因みたい」
「本当に出入り口があそこだけとは…。地形上仕方ないのか?」
「あの巨樹を利用すれば出る事はできるだろうけど、そしたら戻ってこれないんだよな…」
「じゃああの木から出てる空中足場は……駄目か」
「他の村への連絡は?」
「さっき鳥飛ばしたって」
「二ヶ月も肉も魚も抜きなんてーーー!!」
「村の貯蓄と自給自足で二ヶ月持つことを幸せと思えよ」
そして誰かがこう言った。
「…こんな時でも、龍は来るんだよな…」
そんな訳で。
「ここが新居。確か男が右、女子が左だったよー」
陽が傾き始めた頃に未だ胡散臭さの抜けない、どころか龍の予測によりさらに色々疑惑の付きそうな先生、に連れられ、一同が来たのは村の橋の方にある集合住宅のような場所だった。
道に面した所には一見、ただの大きめな家だった。木を四角く積み上げた豆腐のような家。だが中に入ると温泉のように一つ大きな部屋があり、その後ろに男女別々の入り口があって、その奥に個室があった。
ユウはとりあえずサエの次、入り口から二番目の部屋に入る。奥にまだ幾つかあるようだが女性陣は二人だけだ。(ミコは自宅があるため。)
六畳間程のスペース。入り口と反対側の壁に一部布が掛けられており、窓になっていた。荷物(といっても貴重品類と衣類の類のみ)を置き、川に落ちた時に濡れた衣類を窓際に置いて、再び入り口の大部屋に向かう。部屋の外、廊下代わりの縁側の先は庭になっていて、そのさらに奥は男子部屋の縁側となっていた。
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「……で、こうなってしまった以上、仕方ない。とりあえずここの龍に関する情報をくれないか」
大部屋の中央にある丸テーブル。それを囲むように六人が座る。
「ここは色々と特殊なんでね。君達のいた所の考えは一部通用しないと思ってくれ」
「まずは………、そうね。この村周辺に出没する龍は主に5、6種類。基本はやっぱり地属種小型。あとは火操種、風乗種、木食種かな…。あとは気候条件や場所によっては水飲種に雷落種…」
…ここまでは一般的だ。ユウも全てと交戦経験があるわけではないがある程度なら対策がわかる。
「ここからがだいぶ独特。まずは天棲種、龍喰種なんかが出る。他にもここではなんでも出るし…、しかも大体が中型。つまり並大抵の力じゃやっていけないってこと」
「「え!?」」
「じ、じゃあどうして呼ばれたんだ…?」
「わ、私なんて武器持ったことすら無いのに…」
「ま、期待しているよ☆ とりあえず今日はもう遅いし解散。明日は龍が来なければ自由行動。それじゃあおやすみー」
「え、ちょ…」
「………」
「じゃああたしも帰りますかなー」
「あ、ミコ…君。もう少し聞いておきたいことがあるんだけど…」
自室に戻る者もいれば外に出て行く者もいる。四人はそれぞれ自由に動く。
「「…………」」
取り残されたのはユウとサエ。
「と、とりあえずユウさん……」
「……なんだい、?」
「さっき言っていた龍について……教えてください…」
「………ソウダネ…」
((………やっていけるのか??))
『龍のサイズ』について
龍の名前が一気に幾つか出てきましたが、順に説明していきます。
今回はサイズについて。
龍の大きさは三種類。
小型・全体の五割を占める。龍の幼体が基本的だが、種によっては成体でこのサイズもある。一番小さいのは手のひらサイズ、大きくても大人一人位である。
中型・小型より大きめ~家数軒分程。四割程度。龍を狩ることで生活している人にとっては一般的なサイズ。しかし種によっては十分危険である。
大型・基本的なサイズは小さな村一つ分程。全体の一割しかないが、基本的にどんな種類であれ出会ったらお終いである。目撃数は過去五十年で僅か八件。しかしうち三体は未だ討伐できていない。五年前に、山一つを軽々と越える龍を見た、との報告もあるが、詳細は不明。