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龍と銃  作者: 健兎
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「もう少し急げる!?」


少し後ろを歩くサエを気にしながらも例によって雑な道を急ぐ。


(…完全に遅刻だ。崖を戻ってくるの大変だったからな…)


濡れた服を着替えていたのも結構な時間の無駄になってしまっていた。おかげで動き易くはなったが。


(仕方ない。こうなってしまった以上はこれ以上遅れないようにしなきゃ)


巨大な木の根を跨ぎながら考える。さっきから振り返ったりして様子を見るが、危なっかしくもちゃんとついてきている。


(わからないことだらけだ…)


何故こんな一般的な戦士系女子と非戦闘職癒し系少女が招集されたか。

何故こんな山奥の村なのか。


何故何も説明が無いのか。


そもそもそんな事言ったら何故そんな状況でここに来る気になったのか。


(まあいい…。それを聞くためにも今は急がなくちゃ)


村まではもう少しのはずだ。気を引き締め一歩踏み出す。



揺れる。



「!!」


「じ、地震!?」


木が揺れ葉が揺れ小鳥が飛び去る。


「地震なんかじゃない! この、体の内側から揺れる様な感覚………これは………」


頭上を影が覆う。


人の腕一つが指一本程の大きさを持つ鉤爪が地面を捉え、風と砂が舞う。



「…龍!!」



アガガガガガガガァァアアア!!!! と木を指で引っ掻く様な歪んだ音が耳を貫く。


骨が楕円形に繋がり、それを覆う様に厚く皮が張り付き、ヒレの様に見える、羽。それが一度に二枚、葉や枝を裂きながらこちらに向かう。


「!!」


後ろで硬直しているサエを押し倒しながら身を伏せる。

直後、巨大な羽は頭上を交差する。


「、」


身を起こしながら、背中にある刀を取り出す。

龍の方はこちらが目的ではなかったようだ。羽を動かしながら上を見ている。


(どうする!? 向こうはまだこっちに気づいてない! でもいつばれるか…)


それより、


(小型だけど…、今まで龍を一人で狩った事なんてないし…)


両手で持っている筈の刀が今にも崩れ落ちそうになる。もっともそれは対人用の刀とは異なる物だった。

細い刀身はたっぷり2m程はあり、ギザギザと細かく、ときに粗く波打っている。刃の傷ではなく、これは仕様である。

正面の龍も然り、龍には魚類とは異なる『鱗』が存在する。その姿形、性質はそれぞれだが、その鱗は硬質で普通の滑らかな武器ではとても剥げない。そして鎧の様に体から生える鱗がある限り肉に刃は届かない。その鱗を剥ぎ取るのに適した形になっているのだ。


「…………」


後ろを振り返る。


「…………」


そこには混乱している一人の少女が。無理もない。戦闘職でも無い限りここまで龍に迫る事はない。


(…自分一人だったら逃げ切れるかもしれない。でも今はもう一人いる。知り合って間もないが流石に見捨てるわけにはいかない)



「どうする……」



「心配無い」



応える様に、声がした。

龍とユウの間に誰かが割り込む。

龍が素早く反応する。

爪、牙、角、尾、羽、その他色々、全身が武器となっている龍の体。通常、龍の種類を見極めてから戦闘をするものだが、


変わった形の二枚の羽が左右から襲いかかる。


持っている武器を横に構える。


(駄目だ! 龍の攻撃は一撃一撃が桁外れの攻撃力! 『防ぐ』ではなく『避ける』が基本!)


甲高い音が響き、声の主が後ろに吹き飛ぶ。が、両足を踏ん張って地面に留まる。そして、その体はおろか武器にも傷一つ無い。


後姿しか見えないが男性、というよりは少年だった。青年、という程でも無い。年齢、身長共に推測だがあまり変わらない。短めの髪は胡桃色と紫水晶色の謎の二色構成。服装は動き易さを重視して精製されたのか簡素なシャツとズボンのみ。濡れたため一度着替えたこちらの二人と大差ない。

そして武器。あり得ない程大きい。腕の長さ程の柄の先にあるのは彼の体程もある巨大な板。それが二枚で間にある何かを挟んでいる。その板もただの板では無い。材質は恐らく鉄か石。側面には対龍武器お馴染みのギザギザ模様が。そして最も目を引くのは表面。武器の先端に向けて菱形の物が一つ一つびっしりと張り付いている。


「龍の……鱗!?」


その質問に答える間もなく龍目掛けて跳ぶ。人を丸呑みできそうな位の口を開けて迫り来る龍に対し、あの重い剣(?)を下顎に当て、振り上げる。

顎が勢いよく上がり、口が閉ざされる。


(いや、それ以前に…)


さらに腕を回して頬に当て、横にフルスイング。


アガガガ!! と歪んだ声を上げ龍が横に傾く。


(今も、何か……)


休む暇も無く追撃に入る。倒れこむ龍に向けて三度目の地面を蹴る。倒れた龍の脇腹から肩までを狙うように斜めに武器が振り下ろされる。龍の鱗が青い血と共に舞い上がる。


(……白い煙、いや霧…?)


彼の武器の板に挟まれた中心部。剣を下げた今も煙のように立ち込めている。


「…大丈夫だったか?」


改めて振り返り、こちらを見る。


「あ、あ…うん」


後ろにいるサエを見るがこちらも大丈夫なようだ。もっとも、初めて龍との戦闘を見たせいか驚き過ぎて硬直している。ある意味で大丈夫ではないようだ。


「えっと…、まずはありがとう。…それで、あなたは?」


武器の事も気になったが、後回しにする。


「モイ。この先の村に新しく来た『龍狩』の一人だ」





『龍』について


全く進まずに終了。他の人は来月で。今回は一応『龍』の描写にややこだわってみました。この世界での龍は様々でお伽話の竜やRPGのドラゴンなど、一般的なイメージの龍もいますが、基本的にはそれらの龍を形を留めながらアレンジします。ギリギリイメージがつき、かつ他には無いようなのを目指しています。


では来月もよろしくお願いします。




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