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龍と銃  作者: 健兎
1/4

川の流れが比較的穏やかな場所に舟を停めてもらう。船頭に立つ漁師に礼を言って金を渡す。

現在は陸路が基本になっているためか周囲はぬかるんだ土の上に木の板が山の入り口まで置いてあるだけだった。家もなければ人もいない。先の漁師はとうにいない。


静かに風が流れる。


聴こえてくるのは自然の音。

辺りに生えている草木が揺れる音。

川の流れる音。

小さな虫や小鳥の音。


そして低く響く、


龍の鳴き声。







「…陸路…を、……使うべきだったか…………」


息を切らしながら近くのそこそこの大きさの岩に座り込む。

舟を降りた場所からも村が崖の上にあるのは見えたが、本当に崖をそのまま上がってるような道だった。


(早く行かないと集合に間に合わないよな…………、よし)


水分補給をして、再び崖のような道を登る。


(………さすがは龍がいる場所)


水龍などの一部の龍を除き、大抵の龍の生息地は高い所だ。


「よいしょ」


少し平らな場所に出る。道しるべ程度に小さな板が続けて置かれていて、更に山奥に上に続いている。


(…道に迷わないだけでも良しとしますか………ん?)


正面に誰かがいる。崖ギリギリに立ち、目を輝かせて景色を観ている。


(わぁ……)


亜麻色の腰辺りまで届く波の様にうねる髪が風にのって舞う。小柄で色白な身体に合わせたような小さな顔。飴色の瞳は景色を写し、実際の景色より美しく輝く。まるで異国の人、それよりも、おとぎ話の妖精のような印象を与える。同性から見てこの評価、もし男性が見たらどう思うか。


「……!」


その瞳がこちらの姿を捉える。


「あ……」


咄嗟に話す言葉が出ない。どうしようかと狼狽えていると先に向こうがこちらに向かってくる。ふわふわ、といった感じだろうか。なんとなく危なく思う。



そして突然の突風。



「危ない!!!」


まるでそうなる事がわかっていたかのようにスムーズに飛び出す。


「あ……」


何が起こったかわからないような表情をしたまま崖を落ちていく少女の腕を掴む。


「!?」


その彼女の重さにこちらも引っ張られる。


(重……!?)


いや、実際彼女はかなり軽かったが、妖精だとかふわふわだとかこっちが勝手に評価していたため力加減を間違えたのだ。慌てて崖に踏みとどまろうとするが、


「「わぁあぁぁあああ!!!」」


二人一緒に崖下の川に落ちていく。



下が川なのはわかっていた。しかしこの距離を落ちるのは当然まずかったし、何より川に入りたく無い理由があった。


「…ぷ……ご…」


川は深く体が丸々埋まる。必死に手を振り抵抗するも冷たい水は容赦なく口に、鼻に侵入する。そんな中、何かが手を掴む。直後、

体が引き上げられる。



恰好いい。


頼れそう。


そんな自分とは無縁の何かが彼女にはあった。しかしまだまともに出会ってもいない時に助けられるとは思ってもいなかった。そしてその後今度は自分が彼女を助けることになることも。


「掴まって!!」


岸から精一杯手を延ばし彼女の

腕を……掴む。


「んんっ!」


全身を使って彼女の全身を引き上げる。



「……はぁ…はぁ…」


「……はぁ…はぁ…、」


大胆にも大の字に寝転び息を調えている彼女にこちらも息を切らしながら進む。

小麦色…、とまではいかなくともこの辺りでは見ないくらい褐色系の肌。背は平均より高いくらいだが、手足は細い。そしてある部分。平均的なサイズなのかもしれないが自分と比べると格段に大きい。改めて自分の体つきに失望する。


ーーーーーの前にやる事があった。


「…あの…」


むくり、と彼女が起き上がる。



「…すいませんでした!!」



頭を地面に押し当てて土下座する。


「……えっと…、あの?」


「助けていただきありがとうございました!」


「……とりあえず顔上げて、ね?」



慌てて彼女の顔を地面から離れさせる。綺麗な髪は水に濡れ、土で汚れていた。その他腕や顔までにも泥が付着していて焦る。


「あの……その」


「いや…、私の方こそごめん…。助けてもらって…」


「そ、そんな! 元はといえば私が…」


「いやいや…、」


「いえ……」


「「…………」」


謝罪しあって、互いにキリが無いと気がつき、顔を合わせる。


「………ぷ」


「………ふ」


なんだか典型的な感じだが、互いに笑みがこぼれる。


「…でも、本当にありがとうございました…。咄嗟に手を出してくれて」


「…こっちも溺れたところを助けてもらったし、お互い様だよ。…ところであそこで何をやってたの?」


「…恥ずかしながら、景色を見ていたんです」


「……景色?」


「はい。あそこ、森の中でも開けた場所だったので、この川とか遠くの山とか、を………」


「景色、………」


確かに景色が良かったのかもしれない。だが、実際あそこにいたときそれを確かめようとは思わなかった。


(……………)


「そ、そういえばまだ聞いてなかったですね…、名前。私はサエっていいます」


「私は…、ユウ。年は17。よろしく」


「よろしくお願いします。私は…15です。あの、もしかしてですが…、『龍狩』の方ですか?


「え? そうだよ。まさかサエ…ちゃんも?」


年下とはいえいきなり呼び捨てはなんとなく気が引けた。

『龍狩』とは名の通り龍を狩る組織らしい。らしい、というのは実は新設なのでまだ何もわからないからだ。


「どうしよう…。私、龍どころか戦闘すらした事ないのに…」


「私も…、龍は狩ったことはあるけど別に何かに招集されるようなレベルじゃないし…」


「「………」」


一応呼ばれた理由を考えてみる。が、二人とも心当たりなどない。


「…二人で考えていても意味ない、ですかね…」


「そ、そうだね」


「と、とりあえずお互いの荷物や着替えはさっきのところだし…、早く行きましょう」


濡れた服の端を絞りつつ立ち上がる。



「そろそろ時間だが…」


村の中央にある大きな時計を見上げる。


そして既に集まっている三人を見る。


「…………」


「5分前集合は当たり前だと思うけどねー……」



「……………」



「? どうしたの?」


「……龍が来る」


「へ?」


「ちょっと行って来る」


「おい!?」


「ちょっとあんた!?」


制止を振り払い一人森へ行く。





『この作品』について


中途半端な終わりになりました。これを考えたのが二月で三月中盤には投稿しようと思っていたら結局超ギリギリに…。

さて今回書きたかったのは『ファンタジー』。『ヒーロー☆スター』では『異能力』しか書けなかったので。後は結構自由に制限なしにやっていこうと。月1ペースですがお付き合い頂けると幸いです。また評価等も。ではまた来月。


P.S.ここでは後書き的な感じで色々書いていきます。



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