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再発

Kさんが復帰してから約5年が経過しました。


その間、一緒に車に乗って外の仕事に向かった時もありました。数分間の時間でしたが、彼が運転する様子を助手席から見ると、いつものだらしない彼ではなくてキビキビ運転をしていて、その違和感に僕はときめきました。

カラオケに行ったり、居酒屋で飲んだりもしました。一度だけ、二人でカラオケに行ったことがありました。カラオケに行くと、いつも彼が受付をしてくれて、

『何時間にします?』

『機種はどれにします?』

と振り向いて僕に聞いてきました。

彼が唄う曲は毎回ほぼ同じでしたが、マイクを持って一生懸命に唄う彼の横顔は僕をきゅんとさせました。僕が知らなかった曲も、何回か彼と行くうちにサビを覚えているくらいになっていました。

Kさんはさぼり癖があって、仕事中にも携帯ゲーム機で遊んでいたりするので、僕は頭をペシッと叩いて注意することもありました。

でも、愛されるキャラクターで、憎めない性格でした。


Kさんの腰や肩を揉んだりつついたりするブームは徐々に去っていき、同僚はもうしなくなっていたのですが、僕は彼とのスキンシップを止めるつもりはなく、相変わらず肩を揉んだりしていました。

近くに他に誰もいないときは、

「ねえ。二人でどこかに旅行でも行かない?」

と誘ったりもしましたが、下心が彼にばれていたのか、彼にはスルーされていました。

僕は口数は少ないのですが、彼が楽しそうに話したり面白いリアクションをするのを傍で見ているだけで楽しかったです。彼の雰囲気が大好きで、一緒にいるだけで、なにか安心できる気持ちがしました。ずっと彼を見つめながら話を聞いてるだけで幸せでした。


そして、部屋に二人きりになると、僕も大胆になって、インターネットをしている彼の後ろで、脇の下から両手を入れて彼の胸を揉んだことも二、三回ありました。

Kさんは、

『ぎゃ~っ!』

というかんじでおどけていましたが、僕の気持ち、気付いてくれていたのかな…?


Kさんて、次の日も仕事だというのに、明け方まで海外ドラマのDVDを見て目が充血していたり、毎日、糖分が多そうなジュースを飲んだりしていました。

そして、毎年、健康診断に引っ掛かって、再検査の通知が届いていました。

僕は、

「再検査行ったほうがいいよ。」

と言ったのですが、彼は、

『大丈夫。』

と言って、なかなか行かないような人でした。


そんなある日、居室に人だかりができていました。

何かなと思い近づくと、Kさんが床に倒れていました。びっくりしました。

急に、足に激痛が走ったとのことでした。

『そのうち治るから、放っておいて。』

Kさんが、そう言いました。

後で知ったのですが、このときまで、もうすでに何回か痛みで倒れたことがあったようです。車の運転中に起きなかったことが不幸中の幸いだったかもしれません。


僕たちは遠目から彼の様子を気にしながら、仕事を続けていました。

ただ、彼が以前から足を引きずるような感じで歩いていたのは気付いていました。

階段の上り下りも、普通の人の倍の時間ほどかかっていることも見ていました。

『足の感覚が無いときがある。』

と言うのも聞いたことがありました。

退院後、定期的に、病院へ経過観察や治療のために通っていることも知っていました。


僕は、彼の足の血行が悪くなっていたり、神経が圧迫されているのではないかと思い、生活習慣病の可能性もあるから、

「本当に病院に行ってきたほうがいいよ。」

と言ったのですが、結局病院へは行かずに、数日間普通に仕事をしていました。


しかし、その後、Kさんが何日か会社を休んだある日、社長が朝礼で仰られました。

「Kさんが入院して手術することになりました。」

僕は少しショックでした。

このとき、5年前に手術した病気が、徐々に再発してきていたようです。




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