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天使

入院していたKさんが体調を崩してから約五カ月、僕は彼のことを考えていない日はありませんでした。


毎週お見舞いに行き、年が明けてからは平日にもよく会いに行き、メールも毎日のようにしていました。

仕事をしながらも、痛みが出てないか、ちゃんと食事をしたか気にかけていました。

僕の想いを伝えまくりました。彼の体に、何回もキスをしました。

良くなるように祈りました。

汗を拭いたり、飲み物を移し替えたり、体をさすったり、手紙を渡したり、おそらく今の僕にできることはやりきったと自分では思っています。

彼のことを愛しきったと、自分に自信すら感じていました。

悲しみの涙は出てきますが、不思議と後悔はありませんでした。


Kさんも、たぶん彼のこの人生でやることは、やり終えたのではないかと僕は考えていました。

二人きりだった時、彼は僕に、小さい時に親からよく叩かれたり蹴られたりしてたのが辛かったと話してくれました。

でも、たぶんKさんが入院して、ご両親が付き添いをされる日々が、家族の癒しの時間にもなっていたんじゃないかなと僕は思いました。


そして僕も、彼に出会うことで、僕の人生や生き方は一変しました。

僕は彼からいろんなことを教えてもらったように思えます。


僕の心の中の気持ちに気付くこと

自分の心を開き、想いを相手に素直に伝えること

僕がこれほど人を愛することができるということ

愛する人を失うかもしれないときの哀しみ

心からの想いを伝えるときのドキドキ

二人だけの秘密の会話をしたときの、きゅんとする気持ち

手を繋いで、嬉しさで泣きそうになる瞬間

触れ合って、見つめ合って、キスをするときの喜び

大好きな人と一つになりたいという想い

何気ない日々が、一瞬一瞬が、かけがえのない時間であること

命の尊さ


以前も書いたかもしれませんが、僕は他人にほとんど興味がありませんでした。

でも、Kさんという存在が、僕に愛というものを思い出させてくれました。

人をこれほど愛しているということ、愛することができるということに自分自身で驚き、他の人にも優しくできそうでした。

彼は僕が秘密にしていて今まで誰にも言えなかったことに光を当ててくれました。そのときの僕の心から安心できた気持ちは言葉では表現ができないくらいです。

僕のことを全て知ってくれている、受け入れてくれている。

もう何も恐れるものはないとも思えることができそうでした。

両親、家族、同僚、好きな人、嫌いな人、関わってくれている人への感謝、この一瞬の大切さ、命のきらめき、自然のきらめき。


そういったものが、僕の心の中にしっかりと刻みこまれていることがわかりました。

一種の救いでした。


僕にとって、Kさんは天使のような存在だった…そう思いました。




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