知らせ
日曜日、Kさんに声をかけた後、僕はお父さんから缶コーヒーをもらって、家に帰ってきました。
Kさんとあまりスキンシップができなかったし、会話もできなかったからなのか、その日の夜、僕は、なんとなく寂しく感じ、心がしんみりとして物悲しかったので、優しい感じの音楽を聴いて、心を落ち着かせていました。
次の日の月曜日、僕は会社に行き、
「Kさん、今日は痛みどうかな~。」
と思いながら仕事をしていました。
そして、午後四時を過ぎた頃でした。
営業課の部屋に行くと、電話を終えた同僚が少し神妙な面持ちで、僕に話しかけてきました。
「ヒロピーさん、聞いた?今、Kさんのご両親から電話があって…
Kさん、さきほど亡くなられたそうですよ…。」
あぁ…と僕は心の中で思いながら、
「ああ。そうですか…。」
僕はその同僚に、一言答えました。
病気と闘っていたKさん、天国へと旅立って行ってしまいました。
ついに、その日が来てしまった。そんな感じでした。
その同僚は、目に涙を浮かべていました。会社の多くの同僚は、僕がKさんのお見舞いによく行っているのは知っていたので、まず僕に教えてくれたんだと思います。
僕も、その知らせを聞いて、そして同僚の表情を見て少しうるっと来ましたが、涙は出ませんでした。
いつかその日が来ると以前から覚悟していたからなのか、同僚の前だったからなのかはわかりません。
僕はそのままその日の業務をこなしていました。ただ、心に重りをつけられたような感じでした。
従業員約三十名の会社ですが、社内放送がかかりました。
「えー。さきほど連絡があり、Kさんが本日何時何分、亡くなられました。ご冥福をお祈りしたいと思います。」
社長の声でした。
Kさんが亡くなった日時は、今でもはっきりと覚えています。
その放送を部屋の中、一人で聞いていた僕は、作業の手が止まり、悲しみがこみあげてきました。
同僚からは見えない物陰に行って、うう…と泣きながら、ティッシュペーパーでしばらく涙を拭いていました。
昨日の夜、物悲しかったのは、これを予感してたからなのかな…と思いました。
昨日のお見舞いで、次の人生でも会おうねとかけた言葉が、僕と彼の最後の会話になってしまいました。
そんな言葉をかけたということも、僕の中の何かが今日のことを知っていたからなのかな…と思いました。
廊下を歩いていると、すれ違った同僚が僕に聞いてきました。その方の目は赤く腫れていました。
「最近、お見舞いに行った?」
「はい。昨日行ってきました。」
僕は悲しみをこらえながら答えました。最近、痛みが辛そうだったり、ずっと寝てたりしたことを話しました。
その日は、会社の中の空気も悲しみに包まれていました。
仕事を終え家に帰り、僕は自分の部屋に入りました。
しーんとした部屋の中でベッドに腰かけ、僕は昨日のKさんの様子を思い出していました。
涙がいつまでも溢れ出てきました。




