二人の距離
二月に入ると、Kさんの顔が腫れたり頭痛が治まらなかったりしていたのですが、先生に相談して薬を変更するとその症状も和らいできたようです。薬の相性もあるんでしょうね。
歩道や日陰には、まだ雪が残っていました。
その頃になると、僕はお見舞いに行って二人きりになる度に、Kさんの手や腕にキスをしていました。
彼も特に拒否をする素振りもなく、それが普通になっていました。少し前の僕には考えられない行動です。
僕は自分でもまさかと思いましたが、キス魔なのかもしれない。でも、好きな人に素直に気持ちを表現できるようになってきたのかもしれません。
そして、病室で彼の傍で顔を見てるだけで、彼の手を握ったりキスをしているだけで、僕の下半身の部分は硬くなっていました。
家に帰ると、毎日のように、彼とのえっちな行為を想像しながら自慰をするくらいでした。
そんなある日、僕は彼の手から腕にキスをして、そのまま顔を近付け、彼の頬にキスをしました。その後、僕たちは少しの間、見つめ合いました。彼も少し驚いたのかもしれません。
僕は唇を重ねようとしましたが、彼は口をタオルで隠して唇は許してはくれませんでした。
それでも、僕はとても嬉しかったです。
その日、お父さんに挨拶して帰ろうとした時です。
病室を出ようとした僕が、
「じゃあね。」
と言って彼に手を振ると、彼も片手を上げて笑顔で、小さく手を振ってくれました。
え?あのKさんが、手を振ってくれた?僕は驚きました。
お父さんからは見えない角度だったというのもあるのでしょうけども、彼はあまり自分の気持ちも言わないし、そんなことはしない人だと思っていたので、僕は嬉しいと同時に意外な気持ちでした。
少しずつではありますが、彼も心を開いてくれるようになり、僕は二人の距離が縮まっているのかなと感じました。
家に帰ってからも、僕はその姿を思い出し、可愛かったなーとにやけていました。




