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抑えられない気持ち

治療が続いていたKさん。


体の中に膿がたまると、数時間かけて大きな注射器を刺して吸い取ったりするとのことでした。体の内側は麻酔も十分に効かないために、とても痛いと教えてくれました。

それがどれほどの痛みなのか、数時間も耐えるということがどれほど辛いことなのか、僕は話を聞いて励ますしかできませんでした。

しかし、僕にメールをしたり話をしてくれることや、僕がお見舞いに行くことで少しでも痛みや辛さが和らぐのなら、いくらでも僕の時間を使っても惜しくはないという気持ちでした。


お見舞いに行くと、Kさんはよく海外ドラマのDVDを見ていました。家族の方が、いつもレンタル屋さんで借りて来られているようでした。

僕はKさんが好きなB’zのライブDVDを買っていったり、彼が好きな歌「島人ぬ宝」が入ったBEGINのCDを持っていったりしました。

また、三国志も大好きなので、ある日、本屋さんで三国志特集をしている雑誌を見つけると購入し、僕は病室に携えていきました。


彼がその雑誌を目にすると、おっという感じで興味を持ってくれました。

彼はページをめくりながら、この武将にはこういうエピソードがあるとか、この戦いではこういう戦術が用いられたとかを身振り手振りしながら、嬉しそうに話してくれました。

僕は、彼の話に相槌を打ちながら、話半分に手を握ったり足をさすったり、顔を撫でたり髪の毛をといてあげたりしました。


彼の手を握りながら、僕は言いました。

「Kさん。」

ん?という感じで、彼がこっちを向きました。

「好きだよ。愛してるよ。」

続けて僕が言うと、彼は読んでいた雑誌をパタンと閉じ、

『きゃ~。』

と言いながら、恥ずかしいのか逆の手で顔を覆いました。


やっと言葉で直接言えた僕。

わかっています。彼が病気と闘っているときにこんなことを言うのは、彼に余計な不安や心配事を与えるかもしれないと。でも、僕は抑えられませんでした。

手で顔を覆っているKさんに、僕は自分の顔を近づけ、再び優しく言葉をかけました。

「僕の気持ち、わかってくれてる?」

すると、少しの沈黙の後、

『うわぁ~。』

彼は毛布を上に引っ張ると、そのように言いながら今度は毛布で頭を覆いました。


「ごめんね。今日はもう言わないから。」

毛布の上から、僕は彼を軽く抱きしめました。




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