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第8話:ゲームは達成率百パーセントを目指す

俺は今日も自室でハリセンを片手に奴隷共に教鞭を振るっている。


全く俺は教育実習生なんかじゃねえのによ…。


マリアに任せようとしても「ご自分で出来ることはやってください」とにべもねえ。


「いいか!急所を一突きするには瞬間的に体重を乗せてやることが重要だ。深く突き刺せば、それだけ相手を即死に追い遣る事が出来る。心臓や脳なんてガキでも知ってるような急所じゃなくて済むんだ。そんでもって急所を一突き出来たことを確認できたら速攻で獲物を抜いて返り血を避けるんだ。そこんとこ分かってるのか?なあ、赤点まっしぐらのコサインさんよ!」


「そんなの軍人じゃないただの村娘の私に分かるはず無いわよ!」


「くっくっ…軍人じゃないねえ…」


俺はサインに視線を向けてみる。


サインは相変わらず置物の人形を装ってやがるな。


だが、その澄ました面も何処まで持つやらかねえ。


「返り血が残れば、証拠が残りやすい。それに血の匂いがついて感づかれることがあるということでしょうか?」


「その通りだ!さすがは試験で最高得点を取ったタンジェントだぜ。おい、コサイン。少しはタンジェントを見習いやがれ!」


「うっさいわね!私には無理に決まってるわよ!」


全く人が優しくしてりゃあつけ上がりやがって…。


これはそろそろ現実とやらを見せつける必要があるな…。


「マリア、手配はもう済ませているか?」


「はい、何時でも…」


「じゃあ、これから小娘共には体験学習をさせてやる。準備しておけ」


「畏まりました…」


俺の隣に立っていたマリアは音も無く消えていった。


「凄いです…」


「何者なの、あのメイドは…」


コサインとタンジェントは夢でも見たかのように消えていったマリアについて語っていた。


全く、この程度で驚いてもらっては先が思いやられるぜ。


「さてと、ずっと座学をやっていてマンネリ気味だっただろ。ここで気持ちを入れ替えるためにも“良い場所”に連れて行ってやるよ」


「良い場所…」


今までほとんど口を開かなかったサインが初めてか細い声を出してくる。


なかなかの美声じゃねえかよ。


メガネ系がメガネを外して美人に見えるように無口系はやっぱり声優のようなコケテッシュな声でないといけねえってもんだ。


「そうだ、サイン。“良い場所”にだ…」


………。


……。


…。


俺と奴隷娘共はマリアに先導されてサザーランド屋敷の地下へと降りていく。


「まさかこの家の下にこんな場所があるなんて…」


気が強いコサインも僅かだが、声を震わせている。


タンジェントに至っては顔を俯かせてコサインの裾を摘んで付いてきやがってる。


それに比べてサインは悠然に表情一つ変えずに歩いているな…。


けど、それももう終わりだ。


サイン、てめえの人形面を引っぺがしてやるぜ…。


………。


……。


…。


地下の最下層まで辿り着いた先には沢山の鉄格子が付いた部屋が立ち並んでた。


「何なのここは?」


コサインとタンジェントは互いに抱き合っている。


「見て分かんねえのか?犯罪者を閉じこめる収容所に決まってるじゃねえかよ」


「収容所…ですか…」


タンジェントは虐めてやりてえほどに怯えながら聞いてくる。


「そうだ。サザーランドが何故忌み嫌われていて、その代わりに王家には絶大な信頼を寄せられているか教えてやろうか?」


「サザーランドはヴァルハラが溜め込んでいる汚物全てを受け持っているから…」


コケテッシュな声が響き、俺はサインを見て笑う。


「ははははっ…その通りだぜ、サイン。今日はよくしゃべるじゃねえかよ…」


俺の言葉にサインは再びだんまりをしてしまう。


だが、俺には分かるぜ。


てめえが今滅茶苦茶焦燥感に駆られていることをな…。


「マリア、奴等は何処に囚われているんだ?」


「この先で御座います」


さてと、本格的に俺の自作になるリアルギャルゲー「暗殺者育成遊戯」を攻略しようかねえ…。


………。


……。


…。


「ここで御座います」


俺達は他のどの部屋よりも堅固な作りになっている牢屋に辿り付く。


「さてと、ここに収容されてるのは窃盗やら万引きやらのケチな犯罪者じゃねえ奴等が飼われている所だ。マリア」


「では、開けます」


マリアは扉の施錠を外して重々しく開いていく。


そんでもって中身の連中を見たときに一番反応したのが、サインだ。


「ああ…」


俺はこれが見たかったんだ!


無口系が感情豊かになる歴史的瞬間をな!


まずはサインの怯えた顔を脳内のCG観賞に早速収納だぜ!


「どうした、汗が出てるぜ。熱くなったのかよ、サイン…」


「くっ!」


サインは殺気に満ちた目で俺を睨んでくる。


これでサインの憎しみに満ちた顔のCGをさらにゲット!


サイン編CG観賞の達成率はまだ一割にも満たねえが、これからじっくりと百パーセントを目指してやるさ。


牢屋の中には裸にひんむかれて血塗れになっている野郎とアマ共が臭い息を上げて俺を見上げている。


「こいつ等は俺達ヴァルハラ帝国に刃向かった邪教国家グラディウスの敗残兵共だ」


サインの苦しげな顔が見えてくるぜ。


案外すぐにサイン編CG観賞を百パーセント達成出来るかもしれんな…。


「マリア」


「はい、これを…」


マリアが俺に手渡したのは果物ナイフ。


「さてと、教科は解剖学実習、そんでもって抜き打ちの実技テストだ」


俺は手渡されたナイフを小娘共に突き付けて笑みを浮かべる。


「こいつ等を殺せ…」


………。

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