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第7話:ファンタスティックなストーリー

文字数少なめで気ままに更新させます

俺が住まう国ヴァルハラ帝国では王族の血を連ねる四大貴族がいる。


アルセイド家、リンガイア家、ライプニヒ家、そして俺が住まうサザーランド家だ。


アルセイド家は代々騎士を輩出する名門貴族で将軍や騎士団長は主にこの家から出されている。


王族の血が最も濃く、今の王族の血が途絶えれば即座に王位につくだろうと言われている正真正銘の大貴族らしい。


リンガイア家は政治方面で活躍する高級官僚や宰相等と国の要職についている王族に次ぐ権力を誇る家柄だと呼ばれている。


ちなみにアルセイド家とリンガイア家は政敵同士とも言われる犬猿の仲だというのは周知のことだ。


ライプニヒ家は商いを営む貴族で四大貴族の中で随一に財力を誇る名家だ。


軍事資金や国家予算も管理していることで王族に対する発言権も強いらしい。


政治方面で活躍するリンガイア家と親睦を深めていることから王族からは油断ならない貴族とも言われている。


そして、我等がサザーランド家。


主に王家の暗部を引き受ける闇の一族として名を連ねている闇組織だ。


王家の血塗られた歴史には常にサザーランドが存在し、他国との戦争においても情報戦や暗殺、破壊工作等と汚れ役を一手に引き受けている。


それゆえに王族のイヌとも毒蛇とも他の貴族共からは揶揄され、蛇蝎の如く忌み嫌われているらしい。


けど、その代わりに王族からは最も信頼されているとのことだ。


まあ、要するにサザーランドは王家の懐刀ともいうべきポジションだな。


そんなポジションだからこそ、四大貴族の中で国内外含めて最も多く敵を作ってるわけだ。


「サインは王族の血を引いた大貴族、さらには将軍という要職についていた元軍人です」


マリアは優秀な秘書というべき働きを見せ、見事にサインの過去を洗い出してくれた。


こいつはマジでとんでもねえメイドだぜ。


いや、寧ろ冥土じゃね?


オヤジギャグを頭ん中で炸裂させながら俺はマリアに渡された書類を見通す。


「ただ者じゃねえと思ってたけど、まさかここまでのタマだとはな。しかも糞オヤジが始末した敵対国の要人の身内じゃねえかよ…」


ここで一旦話が飛ぶが、ヴァルハラ帝国の王族は聞いた話によると他国に何らかのいちゃもんを付けては戦争を仕掛ける世界規模の傍迷惑なバトルマニアらしい。


その傍迷惑なバトルマニアの犠牲になった国の一つに神聖グラディウス皇国という如何にも清廉潔白を掲げる正義面をした国があった。


神聖グラディウス皇国は平和を旨とした宗教国家であり、当時のバトルマニアなヴァルハラを非難するまさに目障り極まりない国。


そこでヴァルハラ王族はグラディウスを邪教徒が蔓延る国だと世界中に宣伝して聖戦発動とか言って戦争仕掛けたわけだ。


もちろん宣伝したのはサザーランドの力によるもの。


けど、いざ戦争に突入するとグラディウスは強いの何の、ヴァルハラは忽ちの内に劣勢に立たされ、ピンチになっちまったわけだな、これが…。


そのヴァルハラを手こずらせていたのが、当時のグラディウスで軍神と讃えられていたガレサ・ルシフェルト将軍。


軍神様の神懸かりな指揮でヴァルハラに侵攻されていた国々が解放され、ヴァルハラ包囲網が完成されてしまって、まさに絶体絶命の大ピンチ!


そこで白羽の矢が立ったのは我等が王家の懐刀サザーランド!


サザーランドは即座に王家の要望に応えて刺客を送り、ガレサ将軍を暗殺まさに必殺仕事人!


それからというもののヴァルハラは飛ぶ鳥を落とす勢いで瞬く間に奪われた領土を奪い返していってグラディウスに猛反撃を開始!


まさにやられたらやり返すバトルマニアに相応しい某SF映画の帝国の逆襲とも言わんばかりにグラディウスを追い詰めていく!


そして、ついにグラディウスは滅亡し、聖戦はヴァルハラの大勝利でもって幕を閉じて感動感涙のファンファーレ!


ヴァルハラは大陸の覇者として世界征服を実現させましたとさ…。


めでたし、めでたし…。


とまあ脳内でつい熱く語ってしまったが、そのサインというのはグラディウスの軍神ガレサの妹だったということが判明したわけだ。


サインはまさにサザーランドの血塗られた歴史が生み出した亡霊とも言える存在だったわけだな…。


まさか胸が大きいだけで面白みがねえと思っていた女に大河ドラマの主人公にでもなれそうな素晴らしい背景があったとは良い意味で裏切られてしまったぜ…。


「ガルム様が彼女を引き取ったのは偶然か必然なのかは分かりませんが、サザーランドにとって危険な存在だということは確かです。殺りますか?」


「まあ、待て。祖国を滅ぼした元凶である我が家に拾われ、暗殺者として育てられる英雄の妹。最高にファンタスティックなストーリーじゃねえかよ!オペラの題材にでもすれば大盛況間違いなしってもんだぜ!はははははっ!」


「ガルム様?」


無表情な冥土が僅かに戸惑う顔に萌えながら俺は某少年漫画の新世界の神になった気分で足を組んで馬鹿笑いをしてやる。


これは偶然なんかじゃなくて必然、定められた運命ってもんだ。


運命の女神が俺と彼女を引き合わせてくれたに違いねえ。


暫く笑ってから頬杖を立てて、優秀な殺人メイドに気怠げに見据えていく。


「何もすることはねえ。泳がせておけ…」


「ですが…」


「別に糞オヤジに伝えても構わねえぞ。自分を殺すかも知れない女を最高の暗殺者に仕立て上げる。まさに最高の酔狂だぜ!そうだ!俺はこんな刺激的なライフを求めていたんだ!ははははははっ!」


ひたすら馬鹿笑いする俺に飽きれたのか、マリアはため息をついてきた。


「私は旦那様から貴方に従うように言い付かっております。ですから、貴方がそう望むのであれば、私はただ従うのみです」


マリアは再び元のむっつりになって慇懃無礼にお辞儀を見せてくる。


これは意外だぜ。


糞オヤジの回し者として、てっきり諫言やらをほざいて俺を戒めるかと思ったんだがな…。


「てめえも体外酔狂な女だな」


「ガルム様ほどではありません」


「くっくっくっ…違いねえな…」


さてと、俺の人生をチップにした魅惑的なゲームの始まりだ。


ゲームのタイトルは如何にもR指定ですよって感じで…。


「暗殺者育成遊戯」


とでも言っておこうか…。


………。

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