第0話:さらば、今の人生
気まぐれに更新
俺は雨の中を死にものぐるいで走っていた。
殺し屋から逃げているんだ。
俺はいわゆるヤクザで下っ端構成員として生計を立てていた。
自分でも言うのも何だが、それなりに女にはもてて粋がっていたのだ。
だが、調子に乗りすぎて組長の女に手を出したのが運の尽き。
組長は激怒して俺にこうやって殺し屋を差し向けている。
全く女に手を出したぐらいで殺し屋差し向けるとは、なんて玉の小さい組長なんだろうか。
だが、そんな玉が小さい組長にやられようとしている俺は梅干し以下の野郎なんだろうな。
右下腿に何かが刺さって躓いてしまう。
水たまりにこけてしまい、自分の右足を確認する。
投げナイフでやられてしまったか…。
拳銃ではなく刃物で殺すあたり、かなりの凄腕の殺し屋なんだろう。
地面に蹲ってくる俺に近づいてくるのは何て事も無いただのサラリーマンのような風貌の野郎だ。
「ははっ…」
こんな何処にでもいるような個性の埋没した野郎なんかにやられてしまうとはな…。
これが俺の結末だというのか…。
どうせならアニメに出てくるような神秘的で綺麗な女暗殺者に殺されたかったぜ…。
まあ、足掻いたって仕方ねえ…。
来世を楽しみにして、今の人生おさらばといこうか…。
殺し屋が俺を無表情で見下ろし、刃を光らせてくる。
今度生まれ変わる時はアニメのような刺激的な世界がいいな…。
目の前が真っ赤に染まり、俺は笑いながら殺されていった…。
………。