死んでくれないかな?
人は醜い生き物だといつかの偉人が唱えた。その言葉はみなの心に深く刻んだ。
その一方で、この言葉を嫌う人も出てきた。否定する人も。肯定する人も。
ただ僕――九条翔が思うに人は醜いと思う。だってこんな辛い現実が目の前にあるのだから。
「ほら。これをみたら分かるでしょ? あんたの幼馴染の夏美が悪口言っているのが」
目の前にいる花白琴音が俺にスマホを突きつけて来る。
その画面に視線を移す。
悪口言い放題チャットと書き綴られたタイトル。
そしてその一味に入っている夏美。そこで画面中央に夏美がチャットをしているのが分かる。
翔はそこに視線を移し微かに瞳を動かす。
(夏美)「幼馴染の九条がきもすぎて無理なんだけど。誰か助けて―!!」
はっきりと書かれたチャットは、翔に関することだった。夏美はバレることを考えていなかったのか、名前を直接書き込み、なんの工夫すらしている様子はなかった。ただ単に悪口が書きたいだけだったのか。
だが確実なのはこの悪口は翔に対しての悪口ということ。
(夏美)「本当にあいつ死んでくれないかな」
醜いというか、なんというか、簡単に口に出してはいけない言葉がチャットには綴られていた。
そこで翔は胸に痛みが走り、呼吸が荒れ。視線を横に向けた。
何なんだよ、これ。俺に関する悪口? どうして? どうしてなんだ? だって夏美とは良好な関係を築けていたはずだ。
毎年プレゼントをあげる仲だったし、たまに帰っていたりした。
だから、そんなはずはないと、思う。
考えられる思考は目の前にある確信的な証拠によってまた変わる。
つまり、俺は嫌われているのか?
「あんた泣きそうな面するね」
琴音は空気を読んでいないのか、読んでいないだけなのか、分からないが悲惨なことを口にする。スマホを自分のとこに持っていき琴音は再度翔を見つめる。
滲んでいる視界がやんでいくれない。
俺が何をしたんだ? ただ単に仲良くしたくて、友達と思っていただけで、それなのに「死んでくれないかな」なんて書かれたりして。どうして、ここまで言われる必要があるんだ?
翔の中に悲しみが溢れ出す。だけど、それは悲しみに近い怒りのようだった。
どうして? 悲しい。俺が悪いことをしたか? いや、なんでなんだ。
なんていう訳の分からない言葉だけ脳を埋め尽くしている。心の中に侵略してくるさびと言うか分からない感情だけがある。
「なんで、なんだ?」
自然と漏れた言葉。自分でも驚くほど怒りが混じっていた。ふつふつと熱くなっている目頭と冷静だけど考えられない頭が伝えて来る。
悔しいと。
分からないが悔しい。自分だけが仲が良いと思っていた。自分だけがだ。自分だけが思っていたんだ。
なんて哀れなんだ。なんて惨めなんだ。
「さぁね。でも確かに言えるのは日頃からあんたに関する悪口は言ってたよ? きもいとか。ブスとか。生きてる価値がないとか」
「そ……う」
「でね。相談があるんだよ。翔君」
先ほどの声色とは変わっている声。悪魔的な囁きを告げるかのように琴音は翔を見つめ続ける。
視線に気付いた翔は滲む視界の中で琴音を見つめた。
甘い囁き。悪魔の取引のように。誰も居ない教室に声が響く。
「冴えない私たちで努力しない?」




