表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/8

番外編 筋肉温泉と整う者たち

元盗賊団のアジト。

その奥に――

温泉があった。

岩に囲まれた天然の湯。

湯気がゆらゆらと立ち上り、どこか落ち着く空間を作っている。

ロゼッタが肩を回しながら言った。

「好きに使いな」

セリアーナの目が輝く。

「いいんですか!?」

フィオナも頷く。

「今度は……ゆっくり入れそうだな」

カイシンが感慨深そうに言う。

「やっと入れるのう……」

竹助が小さく呟いた。

「……すまない」

セリアーナ

「まだ気にしてたんですか!?」

――女風呂。

湯気の中。

三人は、それぞれの距離感で湯に入っていた。

セリアーナは肩までしっかり浸かり、満足そうに息を吐く。

「はぁぁ……気持ちいい……」

フィオナは縁に腰かけ、足だけを湯に入れている。

「……確かに、悪くない」

シエルは――

浴槽の隅。

身体を小さくして、静かに湯に浸かっていた。

まるで警戒が抜けていない。

その時。

ガラッ。

戸が開いた。

ロゼッタが入ってくる。

堂々と。

隠すこともなく。

その身体は――

しなやかで、引き締まり、それでいて豊か。

“完成された女の身体”。

セリアーナが固まる。

「……」

フィオナも目を逸らしかけて、止まる。

「……っ」

シエルだけが、ため息をついた。

「相変わらずだな」

ロゼッタは軽く笑う。

「何が?」

一歩、湯に入る。

そして三人を見渡し――

「……可愛いねぇ」

沈黙。

フィオナ

「どういう意味だ!?」

セリアーナ

「まだ成長途中なんです!」

シエル

「バカを言うな!」

ロゼッタは肩をすくめる。

「まだまだだねぇ」

湯気の中。

空気が少しだけ柔らかくなる。

その時だった。

――向こう側。

男湯から、声が聞こえてきた。

「も、もう無理だ……!」

「いや……まだだ……もっと……!」

「限界だ……!」

「気持ちいい……!!」

沈黙。

女性陣が、ゆっくり顔を見合わせる。

セリアーナ

「……え?」

フィオナ

「……何ごとだ?」

シエル

「……嫌な予感しかしない」

ロゼッタが眉をひそめる。

「何が起こっている?」

――少し、時はさかのぼる。

男湯。

竹助、カイシン、そして元盗賊たちが湯に浸かっていた。

カイシンが満足げに言う。

「最高じゃのう……」

竹助も頷く。

「あぁ」

だが。

一拍。

「……まだ足りない」

カイシン

「え?」

竹助は立ち上がった。

岩壁を見上げる。

「ここに作るか」

カイシン

「何をじゃ?」

次の瞬間。

ドドドドド!!

拳が炸裂する。

岩が砕ける。

一箇所は床に穴。

もう一箇所は、横に洞穴のような空間。

元盗賊

「な、何してんだ!?」

竹助

「……こんなところか」

カイシン

「だから何をしておる」

竹助

「ここに水を溜められるか?」

「水?」

「頼む」

カイシンは首をかしげながらも手をかざす。

「……よく分からんが」

「よいぞ」

水魔法。

床穴に水が溜まる。

竹助

「いい」

そして振り向き、洞穴を指差す。

「全員、この中に入れ」

元盗賊

「は?」

洞穴の中。

狭い空間。

湿気。

竹助が動く。

スクワット。

腕振り。

呼吸。

筋肉が熱を生む。

空気が変わる。

カイシン

「こ、これは……!」

「熱いのう……!」

元盗賊

「やべぇ……!」

「出る……!」

竹助

「待て」

ピタリと止まる。

「あと、少しだ」

「えぇ!?」

熱気がこもる。

汗が噴き出す。

呼吸が荒くなる。

限界。

その時。

竹助が言った。

「よし、出るぞ」

全員が飛び出す。

「はぁぁぁ!!」

「生き返る……!」

カイシンも肩で息をしている。

竹助は指差した。

「次は、水風呂だ」

元盗賊

「え?」

ザバァァ!!

冷水。

「冷たっ!!」

「死ぬ!!」

だが。

数秒後。

竹助

「上がるぞ」

「早くない!?」

外気。

岩の上に寝転ぶ。

風。

体が軽い。

カイシン

「……これは……いいのう……」

元盗賊

「……なんだこれ……」

竹助は静かに言った。

「これぞサウナ」

沈黙。

「そして、“整う”ということだ」

一拍。

「よし」

「繰り返すぞ」

元盗賊

「よっしゃぁぁぁ!!」

カイシン

「サウナか」

「良いのう」

――現在。

女湯。

沈黙。

ロゼッタが呟く。

「……馬鹿だねぇ」

フィオナ

「……否定できん」

セリアーナ

「なんなんですかそれ!?」

シエル

「……あいつらしい」

湯気の向こうで。

また叫び声が響いた。

「気持ちいいぃぃ!!」

ロゼッタは肩をすくめた。

そして小さく笑う。

「……まぁ、悪くないか」

静かな夜。

温泉に、笑い声が溶けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ