第27話 進軍、筋肉は戦場を支配する
中央戦線。
そこは、もはや戦場とは呼べなかった。
蹂躙。
ただ、それだけが起きていた。
メギストラは、歩いていた。
ゆっくりと。
まるで散歩でもするかのような足取りで。
その周囲に展開される、巨大な魔力圧。
目に見えないそれが、空間そのものを押し潰していく。
次の瞬間。
ドンッ――
騎士が吹き飛ぶ。
冒険者が地面に叩きつけられる。
トロールが膝をつく。
誰も、何が起きたのか理解できない。
「つ、強すぎる……!」
「これが……四天王……!」
声が震える。
足が、止まる。
ただ歩いているだけで、戦線が崩壊していく。
理不尽。
それが、そこにあった。
その光景を見て。
フィオナが、剣を握り締める。
「あいつを……止めなくては!」
シエルが、低く呟く。
「……化物すぎる」
セリアーナが、必死に前を見据える。
「でも……私たちがやるしかありません!」
三人は、同時に踏み出した。
■対峙
メギストラの前に、立つ。
空気が、さらに重くなる。
メギストラが、わずかに視線を向けた。
「……勇者の仲間か」
興味は、薄い。
だが、無視もしない。
フィオナが剣を構える。
「貴様を倒す」
シエルが、ナイフを握り直す。
「勝ち目は薄いけど……やるしかない」
セリアーナが、魔力を練る。
「みんなで力を合わせましょう!」
メギストラは、ほんのわずかに笑った。
「……いいだろう」
軽く手を振る。
その瞬間。
周囲にいた魔王軍の兵たちが、すっと離れていく。
別の戦場へと、散開する。
フィオナが、目を細める。
「……何のつもりだ」
メギストラは、肩をすくめた。
「さぁて」
「私の部下がいなくなって、良かったのはお前たちか――」
一拍。
「それとも、私かな?」
次の瞬間。
空間に、巨大な魔法陣が展開される。
一つではない。
二つでもない。
幾重にも重なり合う、複雑な術式。
フィオナの目が、見開かれる。
「なん……だと……」
シエルが、吐き捨てるように言う。
「……ほんと、化物」
セリアーナが、即座に手をかざす。
「結界魔法、展開します!」
光が広がる。
だが。
「……どこまで持つか……!」
声が、わずかに震える。
メギストラは、楽しそうに言った。
「私はね」
一歩、踏み出す。
「部下がいない方が、思いきり戦えるのさ」
微笑む。
「――巻き添えを考えなくていいからね」
その瞬間。
魔力が、爆発的に膨れ上がった。
■別戦線
その頃。
ザッコスは、戦場を駆けながら視線を巡らせていた。
(どこだ……)
剣を弾き、敵を蹴り飛ばしながらも、意識は別にある。
(敵の動きが良すぎる……)
連携。
配置。
引き際。
すべてが、統制されている。
(指揮官がいる)
その瞬間。
視線が、止まる。
戦場の奥。
わずかに動かず、全体を見渡す影。
(……見つけた)
ザッコスの目が、鋭く細まる。
「ガルドさん!」
叫ぶ。
ガルドが振り向く。
「何だ!?」
ザッコスは、短く言い切った。
「ここ、任せていいですか」
一瞬の沈黙。
「敵の指揮官を見つけました」
その一言で。
ガルドは、すべてを理解した。
(……なるほどな)
一人では無理だ。
即座に判断する。
「トロール王!!」
巨体が、振り返る。
ガルドが指示を飛ばす。
「ザッコスと共に向かえ!」
トロール王が、静かに頷く。
ザッコスが、わずかに笑う。
「……いいんですか?」
「トロール王まで、いただいちゃって」
ガルドは、剣を構え直す。
「こちらも長くは持たん」
一歩、前へ。
「早く倒してこい」
ザッコスは、頷く。
「了解しました」
次の瞬間。
二人は、戦場を切り裂くように駆け出した。
狙うは――
敵の頭脳。
戦場の流れを支配する存在。
ポウサン。




