8 女子2人でショピングデートだね
「ごめ~ん待った?」
そう言って明里がバス停にやって来る。
「あっ、うんオレ…イヤ…ワタシも今着た所…よ」
オレは少し使い慣れない女言葉で明里を迎える。
明里はオレを品定めをする様に上から下まで眺めて言った。
「ふ~ん今日はちゃんとした格好をしてるようね」
「ちゃんとした格好って……」
明里はこの前の市民プールに行った時のちょっと露出の多い格好の事を言ってる様だ。
それでオレは今日着て居る物を確かめるように自分をみて見る。
髪を二つに分けてシュシュでまとめコサージュが付いたストローハットを被って居る、それから肩口に大き目のリボンが付いた白いパフスリーブのブラウス、膝丈のフリルスカートにレースソックスとカカトの低いストラップシューズで手に少し大き目のバッグを持っている。
「女友達と遊びに行くと云うより男の子とのデートファションと言う感じだけど…まあ良いかなぁ」
明里の評価にオレはちょっと剝れて明里の格好を見ると。
少しダブッとしたシャツにリュックを背負いそれからキュロットとスニーカーと云う至ってラフな格好だった。
「それでオレを今日…」と言いかけた時、明里はオレの口を指さして言った。
「ダーメ、昨日ケータイで言ったでしょう、私といる時は真、琴、ち、ゃ、ん、も自分の事をワタシと言って、言葉全体も女言葉にする様にって、コレから私達女の子同士でショピングをするんだから」
「あ…うん、分かっ…たわ」
「それにしても真琴ちゃんて小学校の頃は男の子だったのでしょ、それが今ではこんなガーリーな可愛い服着ちゃって」
「あはは…まぁね」
オレは曖昧に笑って誤魔化す。
そんな事を話し合っていると、バスが停留所に着いた。
オレ達はバスに乗り込み近くのショピングモールに向かう。
オレがバスの吊り革につかまっていると、バスに同乗している地元の男達から視線を投げ掛けられる。
その様子に気付いた明里がオレに小さい声で話し掛けて来た。
「あんた周りの男達から注目されてるわよね、まぁもっとも真琴ちゃんは“鄙には稀な”と言う形容詞が付きそうな位の美少女だもんねぇ…どう?気にならない」
明里はちょっと呆れとからかいを含んだ声音で言う。
「あぁ、ワタシも三年間女子をやっていると、さすがに慣れちゃった…わよ」オレは平然として返すと。
「フーン」と明里はやや詰まらなそうに言った。
ショピングモールに着くと明里はオレの手を取ってズンズン中に入って行く。
「先ず水着を買いに行くわよ」
「えっ水着?」
「私いま学校指定の水着しか無くて、この前プールで真琴ちゃんが可愛い水着を着てたのが羨ましかったのよね」
オレ達は水着を扱っているお店に行って売り場を見て回った。
「真琴ちゃん見たいなビキニはちょっと恥ずかしいかなぁ、ワタシはそんなにスタイル良く無いから」
「えっと、そおかなぁ…明里って良いスタイルしてると思うよ」
オレはそう言って明里の身体を改めて見ると、けっこう減り張りのある身体をしていた、特に胸はオレよりワンサイズ以上は大きい見たいだ。
「コレなんかどう?」
そう言ってオレの水着と同じデザインで真っ赤な水着を見せる。
「そ…そんなの私には似合わないと思うし、恥ずかしいよ」
明里はそう言ってパレオやキャミソール付きの大人しいそうな水着を選ぶ。
「え~っ明里はJKなんだから冒険しょうよ」
オレは今度はTバッグのブラジリアン水着を見せると。
「もう!そんな絶対イヤよ‼」
明里はオレをポカポカと叩き出す。
(ハハッなんか本当にオレと明里で女子同士のショピングしているなぁ、男の子だった時に好きだった女の子何だけどなぁ…)と思う。
試着室で明里が何着か試着してセパレートながらキャミソールとショーパン付きのを買う事になったが、オレは紐ビキニやタンガぽいのを勧めて明里にまた怒られて却下された。
その後オレもパレオ付きの新しい水着を買って店を出る。
それから2人でショピングモールをブラブラと色んな店を見て回る。
(これってまさに…女子2人でショピングデート…てぇ感じだなあ)とオレは感慨に耽った。
お昼頃になると2人揃って空腹を覚えたのでフードコートに向かった。
此処のフードコートはセルフサービス形式で屋台形式のお店が壁際に並び、屋内広場に五十席位のテーブルが用意されて居た。
オレは無難にチャーハンを選択し明里は赤いコンニャクが入った麺物を選択していた。
オレ達はそれぞれの料理を持ってテーブルに着く。
オレは明里の赤いコンニャクが入った麺物が懐かしく思え、オレもそれにすれば良かったと後悔する。
ある程度食事をして人心地が付いた頃、明里が聞いて来た。
「真琴ちゃんさぁ…男の子の時…私の事好きだったでしょう」
オレはもう少しで口の中のチャーハンを吹き出すところだった。
一頻り咽てティッシュで口元を拭うと、明里がコップの水を差し出して来る。
水を一口飲んで落ち着いたところで、オレは明里にやや恥ずかし気に言った。
「き…気付いてたのか?」
「ん~~私は最初は気付かなかったのよ、でも私の周りの女友だち達が、アンタが私の事を好きらしいって言って来たのよね」
「えっ…言って来たって…どういう事?」
「にわか女子の真琴ちゃんには分かんないかなぁ、小学校高学年ともなると女の子同士でもう恋バナ何んかが流行ってね、そう云う事に敏感になるのよ」
「敏感になるって…」
「誰それがあの娘の事を何時も目で追っ掛けているとか、あの娘が運動会で転んで怪我した時あの男の子が凄く心配して保険室まで連れて行ったとか、あの男の子がお誕生会であの娘からもらった物を凄く大事にしてるとか…」
(オレは思い当たる節があって納得する)
「あぁ…なるほど…ね」
「それでねぇ…皆んなからそんな事言われたので私もアンタの事を意識し出してね…いつの間にか何となくアンタの事を私も好きになってたのよね」
「あはっ、あははっ…そうだったんだ」
オレは今更の事に虚しい笑いが出る。
「今のところ…私が唯一好きになった男の子だったのに、こんな可愛い女の子になちゃって…もう!」
明里は少し膨れっ面になってオレの頬を引っ張って来た。
「ひたひ、ひたひよ明里」
オレの頬を引っ張る明里に抗議する、それから明里とオレとで二人見合って何故かクスクスと笑い合って居た。
「…それで…どうなの、真琴は女の子に性転換何てしてしまって…その、イロイロ大変だったンじゃあ無いの?」
明里は興味が有るが軽々しく触れて良いものか分からなので…恐る恐る言い難そうに聞いて来る。
「うん、まぁ最初の頃はショックでかなり落ち込んだよ、でも今ではもう大丈夫だよ」
オレは出来るだけニコやかにして明里に返事をする。
「へえ、そうなんだスゴイね」
明里は感心した様に言った。
「オレ…ワタシはもう女の子…イヤ女性としてこれからも生きて行くつもりだよ」
「女性として生きて行く…ソレってつまり何時か男と結婚したり子供も産んだりするって事?」
明里が更に感心した様にして聞いて来た。
「あ…うん、そのつもりで、色々と努力中だょ…」
オレはやや困った様な表情で尻すぼみ的に言うと。
「えっなぁに?…色々と努力中て、何か上手く行って無いの」
明里は身体を乗り出して聞いて来る。
「まぁ…そのぉ、オレ…ワタシが何時か子供を産むと云う事は…男とアレをしなくちゃ…ダメな訳で……」
オレがモジモジしながら言うと。
「あぁ~SEXね!」
明里が衒いなく言うのでボクはますます恥ずかしくなった。
「そのソレもそうなんだけど、ソレ以前にオレが男に恋愛感情を持てるかも難しいだろうし…」
オレが落ち込み気味に言うと。
「あーそれはそうか、だったら別に結婚や出産何てしなくてもいいんじゃ無いの、最近では女の人でも一生独身と云う人も珍しく無いから」
明里が励ます様にオレに言う。
「イヤそれはダメなんだ、恋愛や結婚が出来なくても子供だけは作ら無いと」
オレが真剣に言うと。
「子供だけは作ら無いとダメって…どういう事なの」
明里が意外そうに聞いて来た。
「コレはオレ個人の想いと言うか、決意と言うか……」
そう言ってオレの記憶は三年前に遡って行く。




