4 早速テコ入れ水着回だぜ!
朝9時だと云うのにもう夏日がカンカンと照っていジリジリと気温が上がって来る。
その夏日の中、県営のプールの入口にTシャツに短パン姿の俊と遊馬のDT男子2人組が立って居た。
その立って居るDT男子2人の様子を薄手のキャミソールに超ミニのフリルスカートと云う我ながら露出がちょっと多くて恥ずかしいかなぁと思う格好で、水着等が入れてある大きいビニール製のバックを肩に掛けて、髪をポニテにしたオレが少し離れたコンビニの看板の陰に隠れながら、観察する様に覗いて居た。
(約束の時間には待ち合わせ場所に着いて居るとは、愁傷、愁傷)
オレは独り納得した様にウンウンとうなずいてDT男子2人の観察を続ける。
DT男子2人は所在無気にキョロキョロしながら道行く人々を見ている様だ。
(ウンウン、オレが来るのを今か今かと思って落ち着かない見たいだねぇ)
オレはほくそ笑んでDT男子2人の様子の観察をし続ける。
それから十五分ほどするとDT男子2人達はソワソワし出して、プール入口から中を覗いたりケータイを取り出したり仕出した。
オレのケータイにメッセージ着信のバイブレーションがする。
(オレが中々来ないので心配になり焦り出した見たいだね…たかが十五分ほど待たされた位でアタフタする何て堪え性が無いなぁ)
などとオレは考えて少し渋い表情をする。
遂にはDT男子2人は何か言い合いを始めながらオタオタとしてる。
(ヤレヤレ潮時かな、そろそろオレの艶姿を見せてやるか)
そう思ってコンビニの看板の陰から出てDT男子2人組の処に行こうとした時。
「やぁ彼女一人?オレ等とどっか遊びに行かない」
オレの後ろから今時何の工夫も無い使い古された古典的ナンパの声掛けをして来る奴が居た。
振り返るとリーゼントに短ランとボンタンと云う平成ヤンキーと云う様な格好をした若い男子が居た。
(オレと同年代位か…しかし地方都市にはこんなレッドデータブックに載る様な絶滅危惧種見たいな奴が未だに居るんだなぁ、こう言う奴らは文化財保護のため、文化庁辺りが収集して博物館で展示するか。
或いは保健所が捕獲して何処ぞの動物園で周知啓蒙のために一般公会でもすれば良いのに)
等と思いつつオレは、うへぇ…と云う表情になった。
声を掛けて来た男子以外に似た様な格好をした男子が他に2人居て、オレを逃さない様に囲んで来る。
「オレ等とカラオケ行こうぜカラオケ、おごるからさぁ」
声を掛けて来たリーゼント頭の男が極力親しげな顔で言ってくるが、他の2人は邪な思惑が表情に浮かんで居る。
オレは怖気が振るってトラウマが疼く。
(お前等の魂胆はお見通しだ、そのカラオケ部屋に連れ込んで不埒な事をスルつもりだろ、お前等の顔がそう言って居るぞ)
オレがそいつ等を無視して外方を向いて行こうとすると。
最初に声を掛けて来た男子が無遠慮にオレの右手首を掴んで引っ張って来る。
「こんな処で一人で居てもつまんないだろうが、オレ等と楽しくヤろうぜ」
「あの、友達と約束が有るので離してもらえますか」
オレは出来るだけ穏便に済まそうと、しおらしく言うが経験則的にまぁ穏便には済ま無いだろうなぁとオレは思った。
「その友達が女の子ならココに呼んで一緒に遊ぼうぜ」
「そうだそれが良いよ」
ますます邪な顔になって他の2人の男子がそう言ってオレとの間合いを詰めて来る。
オレの手首を掴んだ男子は兎に角グイグイと引っ張って行ことする。
(こんなのにこのまま連れて行かれたら…薄い本的展開の妄想がオレの頭の中をグルグル回る…そんな生命の連鎖を産まない情欲と快楽の贄にはオレは成りたくは無い、それでなくともこちとら元男でそう云う事には忌避感が有るから、いま色々と苦労して居るんだよ)
オレはちょっとこの平成ヤンキー三人組に、いささか理不尽な怒りが湧いて来て、穏便に済ます事をヤメた。
オレの右手首を掴んでいる手を左掌で包む様にして押さえ、その上で掴まっている右腕を相手の外肘側にグルリと回すと。
「うぐぅ!」
そう言ってリーゼント頭の男子は前のめりに膝を付く。
相手の手首、肘、肩、背中、腰を同時に征する二カ条という合気道の技だ。
「な…何をしゃがる!」もう一人の平成ヤンキー男子がオレの右肩を押さえ様として来る。
その押さえ様として来る右肩の捕まる予測位置を、タイミングを合わせて体捌きで瞬間ズラすと、不良男子は掴もうとした手が宙を掴んでしまいバランスを崩す。
そして前のめりにツンのめって押さえ込んでるリーゼント頭の男子にぶつかって転げる。
コレも合気道で良くやる技だ。
「オイッこのぉ!」更にもう一人の平成ヤンキー男子が左から突っ込んで来ようとしたので、踏み込んで来た足の脛に履いているミュールの土踏まず側の部分で蹴ってそのまま蹴った足を相手の足の甲に有る“太衝”と言うツボに踵のヒールで踏みつける。
コレは中国武術と云った処だね。
「ギヤッ」と言って平成ヤンキー男子は足を抱えてうずくまる。
そして空かさず押さえて居るリーゼント頭の男子の手首を左手で閂に極めて右手首を抜き取り、リーゼント頭の男子の開いてる脇の下に有る“極泉”と云うツボに右肘打ちの当身を入れる。
「ぐふぅ!」と呻きながらリーゼント頭の男子はタタラを踏む。
コレは古流柔術だね。
そして素速く平成ヤンキー男子達の囲みを抜けて距離を取ると。
バランスを崩して転けて居た間に、瞬くまに2人の平成ヤンキー男子を征したオレを見て、もう一人の平成ヤンキー男子は後退る。
「おおーい、大丈夫かぁーっ」
DT男子2人が近くのコンビニの看板の辺りで平成ヤンキー男子三人と揉めてるオレ達に気付いたらしく、おっとり刀で駆け付けて来る。
不埒なヤンキー男子3人はソレを見ると不味いと思ったのか、這々(ほうほう)の体で逃げ出した。
オレは性転換して女になってから、バカな男の欲望の対象に自分がなる事をある日思い知ったんだ。
オレのトラウマ…自分の不用心さから危うく女としての貞操の危機に会い、それでオレは男の欲望に対してPTSDになりかけた。
だからそう云う事にならない様に、オレは必死に以前から習っている合気道の他に、古流柔術や中国武術それに特殊部隊用の実戦的な近接格闘術等の護身の技を三年間ずっと習得修行して来たんだよ。
オレは気を取り直して少し勝ち誇った様な表情になり、遁走する平成ヤンキー男子を見送った。
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「う〜〜ん」
オレは県営プールの女子脱衣所から出て来て大きく背伸びをする。
「お待たせどうこの水着」
クルリとひと回りしてオレを待って居た俊と遊馬に水着姿を見せつける。
「「あ…うん」」
俊と遊馬は何処か生半可な返事をして、それから目のやり場に困った様に外方を向く。
(おうおう、結構イケた見たいだなぁ、さすがに感じ過ぎて前屈みになる程では無かった見たいだけど、なんたって俊と遊馬のDT2人に、オレを以前の男友達じゃあ無くて異性として意識してもらうために結構大胆な水着にしたんだからな)
オレの着て居る水着は当然ビキニで色は白地にピンクの水玉、トップはオレのやや控え目ながら円やかに膨らむ双丘を包む三角ブラ、アンダーは優美な曲線を描く腰回りと両太腿の間になだらかに窄まっていく股間を覆うヒモパンだぁ!
ヒモパンとは言ってもサイドの結び目は飾り何だけどね。
(フフフ、今日は…テコ入れの水着回だぜ…何のテコ入れかは知らないケドね)
等とオレは心の中で呟く。
ココの県営プールは50メートルの競泳用プールに流れるプールそれに子供用の浅いプール更に小さく短いながらウオータースライダーらしき物も有ると云う中々の設備のプールなのだが。
やはり観光地のレジャー施設とは違い、地元密着で近隣ご近所の憩いの場見たいな所となって居る。
お客は大半が親子連れやおじさんおばさんで若い子は少ない見たいだ…何が言いたいかと言うと、少し大胆な水着を着てる若い女子と若い男子2人を従えたオレ達は…いささか…イヤかなり目立って居る様だった。
辺りの注目を浴びつつプールサイドまで来ると、オレは早速プールに飛び込もうとする。
そんなオレの肩をガシッと捕まえて止める奴が居た。
「ダメだよ真…さん、プールに入る前に準備運動しないと、足が吊ったり思わぬケガのもとだよ」
そう言って遊馬は準備運動を始める…ソレも準備運動と言うのととは違いかなりガッツリしたストレッチをやり出した。
(あ~そう言えばコイツは空気読まない運動脳筋キャラだっけ)
オレは少々呆れ顔になって居ると。
「ホラッ俊に真さんも準備運動をして!」
そう言ってオレ達に即してくる。
仕方無しにオレと俊は諦め顔で準備運動を始めた。
ザブーン!
オレはプールに飛び込み俊と遊馬もそれに続いて来る。
プールに入ってからはオレは童心に戻り、DT男子達にオレを異性だと認識させると云う事を忘れて、俊と遊馬と泳いだり水を掛け合ったりして燥いだ。
オレと俊と遊馬で文字通り男子三人だった頃に戻って遊んだ。
そんな調子でオレは勢い余って俊と遊馬に無遠慮に抱き着き、胸を押し付けたりすると、俊と遊馬は顔を赤らめ前屈みになり腰から下を水から出そうとはしなくなった。
そんな感じで一頻り遊んで水から上がり、近くのビーチチェアーに横たわるとそこでオレは当初の目的を思い出した。
(おっといけねえ…今日プールに来た目的を忘れる所だったぜ、さて俊と遊馬にオレが異性だと意識させるには…)
そう思って自分のビニール製のバックを漁ったが、しかし目当ての日焼け止めクリームは見つから無かった。
(しまった!…日焼け止めクリームを忘れて来たか、コレでは水着回お約束の…ねぇ~クリーム塗ってくれるぅ…と言う日焼け止めクリーム塗りのイベントが出来ないではないかぁ!!)
オレは鈍感ラノベ主人公が、ヒロインを女の子と意識仕出す時の定番の重要なイベントが出来ない事にいささか慌てた。
(こんな重要なイベントアイテムを忘れる何て…淑女新人養成所の教官に見つかったら、三つ指お辞儀三百回はヤラされるだろうなぁ)
オレは自衛隊レンジャー教程以上と言われる養成所にしばらくの間放り込まれた事がある。
ソコでは女性としてのマナーや女らしい所作に仕草、更には女として男とどう言う関係を築くかの戦術、戦略、等を軍隊式に叩き込まれると云う教習内容で、それはもうフェミ過激派が知ったら爆弾テロでも起こしそうな養成所だった。
オレはソコで地獄を見て、今でも淑女特訓を受けている悪夢を見る程だ。
(仕方無い…無い物はどうしょうも無い、ここはラッキースケベ作戦に切り替えよう)
オレはそう思って腕を後ろに回してブラの留め具を外そうとする。
(キヤー、ブラが流れちゃったーっ、俊くん遊馬くん取ってぇーっ作戦だ)
ところがブラの留め具が中々に外れ無い。
(そう言えば、このブラの留め具はやけに堅牢な作りで硬くて、身体の前で留め具を留めてブラをグルリと回して着けたんだった)
こんな回りに人目があるところでブラを回して外す訳にも行かないなあと思って居たら、俊と遊馬がやって来た。
「オイ皆んな何か飲み物か食い物でも買いに行こうぜ。」
遊馬が言うと。
「ボクはちょっと疲れたから遊馬が買って来てくれ」
と俊が言う。
「良いぜ何にする俊?」
「コーラと食い物は何でも良いよ」
「真…さんは何が良いかなぁ」
遊馬が少し躊躇しながら聞いて来る。
「オレの事“さん”付けで呼ばないでくれよ…それから名前は“真”だけど性転換してからはは“琴”の字が付いて“真琴”になったから、呼び方は同じでもその積りで呼んでくれ」
オレがそう言うと。
「ハハッ高畑版の“赤毛のアン”見たいだなぁ、彼女もAnnでは無くAnneと言うEの付いたアンと呼んでくれと言ってたっけ」
俊がちょっと面白そうに言う。
「飲み物はお茶で食べ物は焼きそばでお願いしますね」
オレがそう言うと、遊馬はニカッと笑って。
「わかった、お茶と焼きそばだね、真、琴、」
後の“琴”の部分をやや強調して言って遊馬は売店に向かった。
俊とオレ2人になり、俊は隣りのビーチチェアーに腰を下ろす。
それから俊は所在無気にチラチラとコチラを見てくる。
(俊が何か話し掛けたそうだなぁ、そう言えば俊はどちらかと言うとコミュ症気味で2人きりだと自分から話しかけるって中々出来ない奴だったなあ)
そう思ったオレはコッチから俊に話し掛ける事にした。
オレは上体を起こし俊の方を向いてやや胸を強調する様な姿勢を取って言った。
「ねえ…この水着はどうだい、結構可愛いだろ?」
「えっ、うん、すごく可愛いよ」
「しかしまぁ、こんな可愛い水着を着る様になるとは三年前は思いもしなかったよな」
オレはちょっと苦笑いをしながら頭を掻いた。
「だろうね…」
俊はコチラを見ずにボソリと言ってそれから黙った。
(ウ~ン、ギコチ無い、会話がギコチ無いぞ俊)
そう思ってオレは俊がもう少し食付き易い話題は無いかと考えた。
「そう言えば、お前の部屋に有ったフイギュアの中にこの水着と良く似た水着を着ている女の子のフイギュアが有ったなぁ、もっともアッチはボーダー柄だったけど」
「ソレって棚の一番上の右側に有ったヤツかい?」
直ぐに俊は食い付いて来た。
「あぁそうだと思うよ、」
俊のメガネの奥にある普段眠そうな目が見開かれ、キラーンと光る。
「ソレは“冴えない彼女の育て方”と言うラノベ原作のアニメのヒロインの加藤恵のフイギュアだよ、“冴えない彼女の育て方”と言うのは近年のラノベ原作アニメとしては出色の出来で、オープニングに出て来る四人のメインヒロイン達に呼吸しているかの様な作画をさせてこの娘達は記号としてのキャラでは無くリアルに生きてる女の子達なんだと主張して……」
(しまった、俊のスイッチが入ってしまった、コイツはアニメや映画にマンガの薀蓄や考察に付いて語り出したら止まらないんだった)
「メインヒロインの加藤恵が着てるボーダーのビキニ水着は、第一期の1話と同じく第二期の1話に水着回と言うサービス回を持ってきて……」
「お…おう、そうか、そりゃ面白そうなアニメだな、ソレより…」
オレは何とか話題を変えようとしたが、口角に泡を滲ませて喋る俊は、止まら無かった。
「それでボクは思うんだ、ボーダーの水着や下着がアニメやマンガそれにAVビデオ何んかもにも頻出するのは何故か、元々は昭和50年代後半から少年漫画でちょっとHなラブコメ路線が流行って、そこでパンチラなんかの時にお尻の丸み等を作画として表現し易いと云う事からボーダー柄は良く描かれいた物が、いつの間にかHなパンツと云うマストアイテムなってしまいAVビデオの中でも女優さんがよく穿かされて……」
(高校生のお前が何故18禁AVビデオ内のパンツの事を知っているのかと言う事は、武士の情けとして突っ込ま無いでおこう…)
オレは叮寧した顔で空を仰いだ。
「アレッ、俊くんだ君もココに来てたんだ」
そう言って競泳用の様な水着を着てボブカットでちょっと綺麗目の女の子が俊の隣に立つ。
俊は話しのコシを折られた事にやや不満気に女の子を見て言う。
「あ~何だ、由田明里じゃないか」
(由田明里!その名前を聞いた時オレの中に戦慄が走った……彼女は三年前にオレが淡い恋心を抱いていた女の子だったからだ)




