17 熱血少年漫画じゃ無くてラブコメ路線希望
「ほえ〜っ、小鳥遊さんてぇ、三年前は男子だったんだぁ」
お惣菜パンに齧り付きながら森谷千秋は驚いた様に言う。
「森谷さんコレは私達だけの秘密だからね!」
明里が大まかにオレの事を説明して、それから真面目な顔で森谷千秋に詰め寄り言う。
「ラジャー!森谷千秋隊員は秘密は守ります」
森谷千秋も真面目な顔になり、敬礼しながらコクコクと頷く。
オレと俊はそんな森谷千秋を見て苦笑して、明里と遊馬はヤレヤレと言う顔をした。
(オレとしては自分がTSして居る事を殊更に秘密にしょうとは思って無かったが…まあTS女子だと知れ渡ると色々と面倒な事が起こるかも知れないし、それで良いかなと思った)
オレ達は食堂を出て、これまた人の居ない中庭の隅のあずま屋のベンチに座って話し合って居た。
「へ〜え、TSってモッキュモッキュ性転換ってモッキュモッキュ意味だったのねモッキュモッキュ」
森谷千秋はモッキュモッキュとお惣菜パンを咀嚼しながら感心した様に言う。
オレは自分で作ったお弁当、明里も弁当持参で森谷千秋は食堂で買ったお惣菜パン、俊と遊馬は食堂で買ったチャーハンとうどんを持ち出して食べている。
「それでマコちゃん、今日のは放課後どうするの?」
「放課後?特に何も考えて無いけど…俊と遊馬はどうしてるんだ」
「僕はマンガ部があるから」
「ワイは水泳部なんやけど」
「千秋は帰宅部でーす」
「そおか、皆んな部活かぁ…オレだけで帰るのもなんだから…何処かの部に入ろうかな」
オレはそう言ってちょと考える風にした。
「おう、良いじゃん、真琴に薄いピッチピチの競泳水着は似合うぞ、ワイの水泳部は歓迎するぜ」
遊馬が鼻の下を伸ばしてそう言うので、オレと俊と明里に呆れた様な顔をされて顰蹙を買う。
「小鳥遊さんの薄いピッチピチの競泳水着ですかぁ、千秋も見たいです」
唯一の理解者を得て遊馬は千秋と握手をした。
「ふ~ん、だったら私は天文部で今日は部活が無いので、放課後マコちゃんをアチコチの部活に案内しようか」
「おう、それは良いな、たのめるか明里」
明里がそう言うのでオレはそれに乗る。
「千秋も一緒に行きまーす」
なんかちっこいのも付いて来るらしい…。
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キンコンカンコーンと終業のチャイムが鳴った。
「小鳥遊さん私達と放課後遊びに行かない?」
この教室でカースト高めと思える女子の一団が、帰り支度をして居るオレの席に来てそう言った。
「ああごめんなさい、今から知り合いに案内してもらって、部活の見学に行く事になって居るの」
オレがそう言うと、その女子達は驚きやや不満そうに顔を見合わせて居る。
「マコちゃん部活見に行こう」
丁度その時明里がオレを迎えに来た。
オレは彼女達に軽く会釈して明里と教室を出る。
「なぁに、あの娘達、吊るし上げでもされてたの」
明里が面白そうに笑って聞いて来た。
「あはっそんなんじゃ無いよ」
オレも笑いながら返す。
そしてオレはクルリと後ろを振り返り、いつの間にか真後ろに付いて来ていた森谷千秋を見る。
彼女はニパッと屈託無い笑みを向けて来た。
「一緒に行く?」
オレはヤレヤレと肩を竦めながら言った。
まず最初は校庭で運動部を見る。
サッカー部に女子ソフトボール部が校庭で練習をして居て、男子硬式野球部は近くの河川敷に有る別のグラウンドで、練習してるそうだ。
他にテニス部や陸上部もその別グラウンドだそうだ。
体育館ではバスケットボールと卓球部…何故かバレーボール部は無かった。
「どう?マコちゃん何処か入る」
明里が聞いて来るが、オレは球技や陸上には興味が持てなかったので頭を横に振る。
次に体育館横にあるプールに行くと、水泳部が準備運動をしていた。
「おう!真琴、水泳部を見に来たのか」
そう言って、準備運動をして居る水泳部員達を、監督して居るらしい遊馬がニコやかに声を掛けて来た。
「どうや、水泳部に入らんか、ワイらの部には今女子部員が少なくて、大歓迎だよ」
遊馬がオレに迫る様に勧誘して来る。
「う〜ん、もっといろんな部を見てから考えるから」
オレは遊馬の勧誘を躱して居ると。
「遊馬センパーイ、いつまで準備運動やるんすかぁーっ」
「もうかれこれ三十分も準備運動してますよーっ」
水泳部員達から不満の声が上がる。
「水に入る前には入念なストレッチが必須だ、でないとワイ見たいに溺れて死ぬ事になるぞ!」
遊馬は部員達を振り返り叱咤する様に言う。
「溺れて死ぬ?」
オレが遊馬の言った事を怪訝そうに言うと。
「遊馬くん、中学三年の時準備運動を疎かにして泳いで居る時、足が吊って溺れかけたそうよ」
明里がそう言うと、遊馬が訂正して来た。
「かけたんじゃ無い、溺れ死んだんだ!」
遊馬の言う事によると、プールから引き上げられた時には心肺停止状態で、人工呼吸や心臓マッサージでも息を吹き返す事も無く、駆けつけた救急隊員の電気ショックで辛うじて心音が回復したそうだ。
「ワイはその時確実に死んどった…人間どんなに若くて健康でも、死ぬ時は死ぬんだとその時にワイは思った…んだ」
その時プールサイドに一陣の涼風が吹き、夏場とは思えぬ鳥肌がオレの背に走った。
「だから…ワイは生きてる今の一瞬刹那を思うがままに生きた方が良いと悟ったんだ」
遊馬がキャラぽく無い真剣な表情で言う。
「と…云う訳で、真琴ぉ…水泳部に入ってこの競泳水着を着てくれ!」
遊馬はドコから出したのか、どう見てもオレの身体のサイズよりワンサイズは小さい水着を出して、欲望丸出しで迫って来た。
そんなワンサイズ小さい水着なんか着たら、アチコチはみ出て大変な事になる。
「もう一度涅槃で悟り直して来い!」
オレはそう言って遊馬をプールに蹴り飛ばした。
「あかん…また足が吊った…溺れるう〜…ああ蓮の花畑が…見えて来た…」
プールでアップアップする遊馬を後目に、オレ達はそこを去った。
次に文化部が入っている校舎に行くと、吹奏楽部に文芸部や手芸部等諸々在ったけど、特にオレがやって見たいと思う部は無かった。
校舎の奥まった所には、古代文化研究会と言う怪しい部室があり、ココはあの昔の教師見たいな格好をした古典の先生が顧問をして居る、良く分からない活動をして居る部らしい。
美術部の部室に行くと、入口には美術部兼マンガ部と書かれて居た。
マンガ部の部室内は、カンパスやイーゼルと言った美術部らしい備品は隅に追いやられ、大量のマンガ本と数台のパソコンが置かれていた。
部員は四人程居て、男子三名女子一名らしく皆んな背を向けパソコンに向かい黙々と何か作業をしていた。
一人は痩せぎすな感じの男子で、もう一人は肥満体型の男子だ。
女子のもう一人はヒョロっと背が高く長い髪をシュシュでまとめて垂らしていた。
「オイ、俊、ちょといいか」
オレが俊に声をかけると、部員全員がコチラを振り返り、驚愕の表情をする。
「えっ何!女子がこの部室に居る、しかも美少女だぁ」
「わ…わたしも一応女子なんだけど…でもこんな女子力MAX見たいな娘が何故ココに」
「こ…コレは幻想か…小生が日ごろ妄想する嫁そのものだぁ」
「ああ…真琴さん…部の見学かな」
俊がオレに親しげに話し掛けると、他の三人は俊を見て驚いた顔をする。
オレ達とマンガ部員達で席に付き部活動について俊から聞いた。
「ふ~んそっか、冬コミに向けて同人誌を出そうとしてんだ」
オレが感心した様に言うと、俊は恥ずかしそうに頭を掻きながら言う。
「今までマンガ部では、マンガやアニメを見て考察や評論ばかりしてたから、一度は自分達で何かを作り出そうと云う事になってね…」
「良いんじゃね、オ…私も夏コミケでコスプレをして、積極的にイベントに参加するのって良いなあと思ったもの」
オレがそう言うと、他三人の部員と明里に森谷までザワリとした。
「ちょとマコちゃん!コミケでコスプレしたなんて初耳だわよ」
そう叫んで明里がオレに詰め寄り。
「ひえ~っ小鳥遊さんてえ、コスプレイヤーさんだったのですか」
森谷千秋が興奮して言う。
「今年の夏コミケのコスプレって、どれだ?」
そう言いながら肥満体型の男子がケータイで調べ始める。
「あっ、この人ドコかで見覚えがあるなぁと思っていたら、みゃりーさんの夏コミケのコスプレでキララとアーヤのアーヤをコスってた人だ」
女子の部員が突然思い出した様に言う。
「小生も覚えてます、みゃりーさんは小生の推しのコスプレイヤーさんで、今年の夏コミケのコスプレもアップされた動画や写真はみんなチェックしてるから、バディ役のレイヤーさんが凄いキレイな人だなぁと思っていましたから」
痩せぎすな感じの人も言う。
「おう、あったあった、この動画に映ってる!」
そう言って肥満体型の人がケータイで動画をみんなに見せてきた。
それはオレがあのコミケで、超ミニスカのメイド姿でパンチラしながらポーズを決めて居る動画が映し出されていて、正直直ぐにでもその動画を消し去りたいと思った。
「キヤーッ、マコちゃん綺麗ーっセクシー!その動画のURL教えて」
明里が興奮気味に言う。
「ホエーっ、小鳥遊さん凄いですう、千秋もその動画欲しいですう」
森谷千秋までもが興奮して言った。
オレはもう顔を真っ赤にしながら、苦笑いを浮かべるしかなかった。
それから暫くは、マンガ部の部員達と明里、森谷、がオレのコスプレやみゃりーさんのコスプレの事で盛り上がって話し込み、部室を出た時にはオレはドッと疲れて居た。
「この校舎の屋上の建屋に、私の天文部の部室が在るのだけど、マコちゃん行く?」
疲れた顔をしたオレに気を使って明里が聞いて来る。
「ああ、いや…ソコはまた今度で…」
オレは疲れた声で言った。
オレ達は帰ろうと校舎の廊下を歩いて居ると、三人の男子が廊下の向こうから向かって来るのが見えた。
「おっスンゲー美少女が居るぜ」
三人の真ん中で微妙に制服を着崩して居て、髪をブリーチして耳に幾つものピアスをした、まぁソコソコ整った顔立ちの男子が言う。
「ああ、あの娘じゃねえか、二年生にかなりの美少女が転校して来たって噂の」
三人の左側で同じく制服を着崩して、ノーネクタイでニット帽を被りキツネの様な顔立ちの男子で、何やらクチャクチャとガムでも噛んで居るらしいのが言う。
「おお、こりゃぜひ俺達とお近付きにならにゃならんな」
三人の右側でジャケットを脱いでYシャツだけで、他の二人とは違う四角い顔に太い眉毛、目も鼻も口も厳ついと言う感じの男子が言った。
三人はオレと明里と森谷を囲む様に前に立ちはだかった。
オレはそいつ等を無視して脇を通り抜けようとしたが。
ブリーチ頭の男子が壁に腕をドンと付いて、オレ達の通り抜けを止めて来る。
(オイオイ、今時壁ドンかよ…参ったね、さてどうしょうか)
等とちょと考えて居ると、オレ達が男子に囲まれて怯えて居るかと思ったらしく、猫なで声でブリーチ頭が話し掛けて来た。
「ヘヘッそう怖がんなよ、別に取って食ったりしないよ」
「俺達はお友達になりたいんだよ」
「そうそう」
キツネ顔の奴と厳つい奴も追従する。
「先輩達は三年の梅木さんと稗野さんと岩田さんですよね、お三人ともあまり評判が良く無いですよね」
明里が三人を見廻して、フンと云う感じに言う。
「評判が良く無いってどう言う事だぁ」
厳つい男子が威嚇する様に言って来た。
オレは明里を庇う様に前に出る。
「オイ、岩田ぁ女子を怖がらせたらダメだろう」
ブリーチ頭が言うと、キツネ顔の男子が言う。
「梅木よお、そうは言ってもコイツらもうブルっちまってるんじゃん」
キツネ顔の男子が言う通り、去っき挑発的な事を言った明里はオレの後で強くオレの肩を掴んで来て居る、それに森谷もオレの腰に縋り付いて震えて居る。
オレは溜息を吐き、リーダー格らしいブリーチ頭を睨みつつ言った。
「ねえ、あなた名前は何て言うの」
オレの怯えない姿にちょと鼻白んだブリーチ頭の男子は、吠え返す様に言う。
「俺は三年の梅木だ、ここらじゃちょいと知られたもん何だぜ」
「あなたがここいらでどう知られて居るか何て、私は転校して来たばかりで知らないの」
オレが切って捨てる様に言うと、梅木はカッとなった様に更に言い募ろうとした。
「お前…「あなたとお話がしたいわ、ソコの空き教室で二人きりで」
梅木の声に被せる様にオレが言うと。
一瞬毒気を抜かれた様な顔をして、それから嫌らしくニヤ付きながら言い返して来た。
「いいぜ…ソコの空き教室でゆっくりと二人だけで話し合おうかぁ」
オレは梅木の返事を聞くなり、空き教室に向かって行こうとすると、明里と森谷がオレの腕を取って首を横に振る。
「大丈夫だよ、オ…私に任せて」
オレはそう言って二人の手を握る。
それから梅木に付いて来る様に目配せして、空き教室の戸を開けて中に入った。
「岩田に稗野ぉ、後の二人の女共を見張ってろよな」
梅木はキツネ顔の男子と厳つい男子に指示をして、オレの後を付いて空き教室に入って来た梅木は後手に戸を閉める。
「お~い梅木よお、ある程度遊んだらオレ達にも回してくれよー」
教室の外から稗野と言うキツネ顔の男子の声がする。
空き教室の中で、オレが梅木に背を向け立って居ると、梅木はやや鼻息を荒くして近付いて来た。
梅木が直前まで近付いて来た時、オレはクルリと向き直り真正面から対峙する。
そしてオレはスカートの裾を持ち一気にたくし上げた。
オレのその予想外で大胆な行動に、梅木は驚きタタラを踏む。
今日のオレの下着は、転校初日と云う事で気合いを入れるため、下ろしたての上下お揃いのブラジャーとパンツで、淡いピンクのチエック柄で小花の飾りが付いている。
梅木は一瞬驚きはしたが、直ぐに嫌らしく笑ってオレのパンツをマジマジと見てきた。
「もっと近付いて見ても良いわよ」
オレがそう言うと、梅木は更に嫌らしい笑いを深めて言う。
「ああ…そうさせて貰うぜ」
梅木は膝まずきオレの股間に顔を近づけて来る。
ピンクのチエック柄の布に包まれた、滑らかな曲線を描き両太腿の間に窄まって行くソコに梅木が手を伸ばそうとした時。
ガツン!
オレの膝蹴りが梅木の顔面を襲う。
「ぐぎゃっ」
梅木は短く悲鳴を上げ、顔を押さえて床を転げ回る。
「なんだぁ」
梅木の声を聞き、教室の戸を開けて最初に入って来たのは、キツネ顔の男子だった。
「お前ぇ、何しゃがった!」
鼻血を出してのたうち回る梅木を見て、キツネ顔の男子はオレに掴み掛かって来た。
オレに延ばして来たキツネ顔の男子の腕を、オレは左手の手首の側面の硬い処で打払う。
手を打払われて走った激痛に、キツネ顔の男子の動きが一瞬止まる。
空かさずオレは下から右手を振り上げる様にしてキツネ顔の男子の顎をかち上げる。
更にオレは右足を大きく踏み込み、猿臂を水月に叩き込む。
「ぐふぅ」
そう言ってキツネ顔の男子は、身体をくの字に曲げて倒れた。
そうして次に入って来るだろう厳つい男子に身構えようとしたが、そいつはもう既にオレの寸前まで突進して来ていた。
「ゲフッ」
オレは厳つい男子の果敢なタックルを腹に受け、真後ろに倒されそうになる。
(コイツ、ラグビー上りか、突っ込みのスピードが半端無い)
タックルはMMA等の格闘技でも良く使われる技で、威力も強く汎用性も高く、倒してマウントを取ったり寝技に移行したりと展開性にも優れた技なのだ。
厳つい男子はこのままマウントを取って、オレをボコるつもりなのだろう、しかしタックルは格闘技では有効でも実戦武術では命取りだ。
オレは後に倒れる時、左手を後頭部にあてて床で打つのを防いだ。
だああーん!
オレと厳つい男子は縺れる様に倒れ込んだが、直ぐに厳つい男子が悲鳴を上げる。
「いでででーっ」
オレの右手の指を厳つい男子の鼻の穴に突っ込んだのだ。
鼻に指を突っ込んだままオレは上に吊り上げると、厳つい男子は悲鳴を上げ鼻に突っ込まれた手を払おうと腕を上げた、それをすかさずオレは抱え込み三角絞めを掛ける。
オレのムチムチの太腿に締め上げられながら、オレのピンクのチエック柄のパンツを拝みつつ厳つい男子は気絶した。
(ヤレヤレ…熱血少年漫画じゃ無くてラブコメ路線が希望…何だけどなぁオレは)
そう思いつつオレは立ち上がる。
自分の頭を相手の身体に密着させるタックルは実戦では不利だ。
目に指を入れられる、耳に掌打を受けて鼓膜を破られる、喉仏を潰されて窒息する等非常に危険だ…だからこそ戦国を生き残った古武道には体当たりはあってもタックルは無いのだ。
オレは三人を倒して明里達の処に戻ると、明里と森谷がオレに抱きついて泣いて来た。
そしてフト見ると明里と森谷以外にもう一人の女子が居て、キラキラとした瞳でオレを見て言った。
「師匠と呼ばせて下さい!」




