16 美少女転校の登場だよ、これから物語が始まりそうだね
姿見の前でオレはクルリとひと回りする。
「うん、完璧、何処からどう見てもJKだ」
オレはそう言って鏡に映る今日の自分の髪型や服装をチェックした。
今日のオレは転校する高校の制服姿で、髪をハーフアップにして赤いリボンで止め、半袖カッターシャツに赤のリボンのタイ、そして今時珍しい紺のジャンパースカートと言う姿で、自分に気合いを入れるためにちょっぴりファンデとリップでメイクもしてる。
「ウ~ン我ながら美少女だ、これなら勝つる!」
オレは自分に意味不明な気合いを入れ、ガッツポーズをして言う。
恵美姉ぇと奈っちゃんに見送られながらオレはマンションを出る。
田舎の路線バスに乗って目的の高校前で降りる。
生徒達の登校時間より少し遅めに来たので、本鈴前とは言え校庭や廊下には生徒達は一人も居なかった。
オレは職員室に行き、オレの入るクラスの担任に挨拶に行く。
担任や教務部長と教頭等に挨拶をした後、担任に連れられて二年生の教室に向かう。
オレが転入するクラスの教室の前で待たされ、程なく教室の中から担任に呼ばれて中に入ると、一瞬ドヨッとしたざわめきが教室内に起きた。
(フフン、美少女の転校生登場だよ、これから物語が始まりそうだよね…)
オレはそんなバカな事を考えながら教室内の生徒達をグルリと見回す。
男子達の制服はジャケットにYシャツで学年で色が違うネクタイをして居る。
女子は当然ながらオレと同じ制服だ。
そんな制服達の中に俊が居るのを見付け、俊もオレを見た。
オレはちょっとドヤ顔で俊に微笑む。
すると俊はまさしく鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をした。
(サプラ〜イズ!どうやら成功した見たいだな)
それからオレは正面を向き、ハッキリとした声で挨拶をする。
「私は小鳥遊真琴と言います、よろしくお願いします」
そう言って軽くお辞儀をする。
先生がオレが座る席を示し、その席に座るとソコは俊の机から二列ほど離れた席で、席の前後左右のクラスメイト達から、チラチラとオレを見て来る視線が感じられる。
まぁ皆んなオレに興味深々なんだろう、転校生自体珍しい上に二学期に入ってからと言うのもそうそう無いからな。
HRが終わり別の先生が入って来る。
その先生は刈り上げの髪に古風な黒く丸いフレームのメガネを掛け、ハイカラの襟に蝶ネクタイそれにスリーピースのスーツと云う、明治か大正の教師見たいな格好の人だった。
先生は古典の先生でその授業が始まる。
教科書は受領していたので持って居たが、事前に配布されたプリントで古典の授業をするらしい。
「先生、このプリントは私もらってません」
オレがそう申告すると、右隣の女生徒に見せてもらえと言われる。
右隣の女生徒は、高校生とは思えないほど背のちっこくてやや茶髪の髪をボブカットにして花飾りの付いたカチューシャを付けて居る、クリクリとした目にアヒル口の可愛いらしい娘だった。
机を寄せてその間にプリントを置いてもらった。
「わたい森谷千秋と言うの、小鳥遊さんよろしくね」
「私こそよろしく」
互いに軽く挨拶をする、そしてプリントを見ると『日本霊異記及び東雲物語、その内容と成たち』と記されていた。
(何だよこの古典の授業は…先生はオカルトマニアか何かか…?)
先生が突然に御札を出して真言でも唱え出すんじゃないかと困惑する。
「ねぇ小鳥遊さんて何処から来たの?」
森谷千秋が小声で聞いて来る。
「私は一応東京都から引っ越して来たの」
「わあ、やっぱり東京なんだ、小鳥遊さんすっごいキレイだもんね…」
「ありがと…?」
「東京のどの辺、渋谷とか原宿とかの辺?」
「いえ、私が居たのは立川という東京都でもちょっと郊外の方で…」
ソレから森谷千秋は授業そっち退けでオレに話し掛けて来て、根掘り葉掘りとオレの事を聞いて来たり、東京に関する情報も聞きたがったりして些か閉口する。
授業終わりのチャイムが鳴ると、先生がまだ教室内に居るのも構わず、俊がオレの席に飛んで来た。
「まっ…真琴!どっ…どーいう事だよ」
「ワオッ、名前呼び、雨宮くん小鳥遊さんと知合い?」
オレと一緒に居た森谷千秋が、興味深そうに聞いて来る。
「えっ、あっ、その…ま…真琴は、知合いと言うか」
森谷千秋が居る事が念頭に無かったらしい俊は、些か慌ててしどろもどろに言う。
「雨宮くんとは私、同中なのよ」
「えっ同中ってどう言う事、東京から引っ越して来たんじゃ…」
「私、この八幡市に三年前まで住んでいたの、三年ほど東京に居て先月またココに帰って来たのよね」
オレがそう言うと、私の席に興味深々で近寄って来ていたクラスメイト達が、一斉に私に話し掛けて来た。
「小鳥遊さんってココの出身だったんだ」
「八幡市の何処に住んでいたの?」
「雨宮くんと小鳥遊さんってどう言う関係?」
「小鳥遊さんって東京でモデルとかしてなかった?」
「やっぱりちょっとメイクしてるわよね、どこのブランド」
クラスメイト達がオレを囲み一度に沢山の問い掛けをして来る。
俊はそんな集団から弾き出され、遠巻きにオロオロしてオレを見てる。
オレが周りのクラスメイト達の対応に困って居ると。
「はいはい!そんな一度に話し掛けてもマコちゃんが困るでしょ‼」
オレとクラスメイト達の間に明里が割り込んで来て、周りを押さえる様に言った。
「えっ由田明里さん、あなた隣のクラスでしょう」
突然割込んで来た明里に、クラスメイトの一人がそう言うと。
「私と小鳥遊さんとは夏休み中に知り合って、ラインを交換したりショッピングデートをしたりして、今ではあーちゃんマコちゃん呼びの友達になったの」
明里がドヤ顔でオレに抱きつきながら言う。
あーちゃんマコちゃん呼びはオレはまだして無いが、ラインを交換したのは事実だ、夏休みが終わって東京に帰っている間の俊と遊馬の動向を教えてもらうためだ。
「夏休み中に知り合ったってどう言う事?」
クラスメイトの一人が聞くと。
「マコちゃんは夏休み中コッチに来て居て、私と同中の一ノ谷遊馬と雨宮俊とで過ごしたのよ、それからこの高校に転校する手続きのため一度東京に帰って、それから今日転校して来たのね」
明里が簡潔にオレの事情を説明すると。
「へ〜っ、一ノ谷くんとも同中なんだあ」
森谷千秋が何だか目をキラキラさせてそう言う。
「なんだなんだ、おう、本当に真琴が居る⁉」
隣の教室から来た遊馬が、人集りの中にオレが居るのを見て驚いていた。
「遊馬、真琴が転校して来たよ」
俊が遊馬に駆け寄りそう言うと。
「て…転校ぉ〜っ、どぉ言う事だ⁉」
遊馬は上擦った声で聞き返す
そしてココで休み時間終了のチャイムが鳴った
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それから毎休み時間、ほぼ同じ様な状態となり、お昼休みのチャイムが鳴るなり明里がオレを呼びに来た。
「お昼は食堂で食べましょう、後で一ノ谷くんが雨宮くんを連れて来るから」
オレはそう聞いたので明里に付いて教室を出る。
教室を出る時に…茶髪の髪がちょこちょことオレの後に付いて来てるのには気付か無かった。
この高校には体育館横に生徒用の食堂が有り、お弁当を持って来てる子以外は大抵ココで食券と引き換えに麺類や定食、他にはサンドイッチやお惣菜パン等が、食べられる様になって居た。
食堂はセルフサービスのカウンターと、三十個ほどの長椅子長テーブルが配置されていて、オレと明里に後から合流した俊と遊馬で人が居無い端っこに座る。
「由田明里!お前知っていたな」
開口一番に遊馬が明里に詰め寄ると。
「当然よ、夏休み明け直ぐにラインで教えてもらったもの、なんたって私達お友達だもんね~っ」
そう言ってオレの腕に明里は寄りかかって来る。
オレは自分で作ったお弁当を開きながら相槌を打つ。
「いつか帰って来るとは言ってたケド、こんなに早くそれに僕達に何故黙ってたんだよ」
俊がやや困惑気味に言う。
「う〜ん…サプライズ?」
オレが少し戯けた風に言うと、俊は机に頭を突っ伏した。
「ワイは真琴が転校して来てくれて嬉しいぜ、それにあの花火の日に言った事…本当に良いのか?」
遊馬が念を押す様に聞いて来る。
「うん、TS女子に二言は無いよ!」
オレは真顔で言い切る。
「TS女子ってなぁに?」
「ほ…本当にボクと遊馬のどちらかと…その…アレする事前提に付き合うとか…」
俊が顔を真っ赤にして言い難そうに言う。
「アレってなぁに?」
「もちろん今直ぐじゃ無いよ、先ず第一にオレ達まだ高校生だからね…」
「ほえ、小鳥遊さんオレっ娘なんだぁ」
「マコちゃん、高校生だって良いじゃん、もうSEXしてる娘いっぱいいるよ」
明里がさも意外にそうにオレを見て言う。
「SEXって…小鳥遊さんするの?」
「そお言う訳には…SEXをするって妊娠する可能性が有る訳で…赤ちゃんを産んで育てるって、社会的にも経済的にもそれに精神的にも未熟なオレ達じゃまだ無理だから…」
オレが更に真剣な顔で言った。
「小鳥遊さん、赤ちゃん産むんだぁ」
「え〜っなんだよう、ワイ等期待してたのに」
遊馬がこの世の終わりかの様に落胆した表情で言う。
「も…もちろん、オレも以前は男子だった訳でぇ、お前等の女子に対する見たい触りたいと云う欲求は凄く分かるから…たまになら…下着や裸を見たり触ったりしても……いいかも」
オレが恥ずかしそうにして言うと。
「本当だな!絶対だぞ」
遊馬が食い付く様に手を上げて言い。
「えっ、そっ、それは嬉しいかも…」
俊も少し恥ずかしそうに手を上げて言う。
「あーっあたしも、マコちゃんの裸の身体を見たり触りたいで〜す!」
明里も便乗する様に手を上げて言うと。
「千秋も〜っ!」
そこでオレ達以外の声が混ざって居る事にようやく気付く。
するとオレの横に、ちょこんとテーブルの上に茶髪の頭だけ出して手を上げて居る、森谷千秋が居た。
「ところでぇ…去っき言ってた、小鳥遊さんが以前男子だったって…どゆこと?」
森谷千秋は真摯な瞳をオレ達に向けて聞いて来た。




