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エターナル・アース  作者: 沼口ちるの


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第七話:絶対零度の堕落、効率のための屈服

1. 屈辱のデータ解析

レイジ(伊達ソウジ)は、リスポーン地点で静かに立ち尽くしていた。彼の脳内では、前日の「鉄壁の傭兵団」による集団リンチのデータが、繰り返し再生されていた。


彼の敗因は一つ。PvPルール外の、無秩序な集団による**「絶対多数の暴力」**への対策の欠如だ。レイジの「効率」は、戦闘ルールという土台の上に成り立っていた。そのルールが取り払われた瞬間、彼は、彼が最も軽蔑する「集団」という非効率な力に圧倒された。


(くそ、計算が狂った。私の最強への最短ルートは、集団戦の脅威という、最も非効率な要因によって塞がれた)


レイジは、アヤという「最強のソロ」は回避できたとしても、ゾルグたちのような「集団の暴力」からは逃げられないことを悟った。このままソロを貫けば、最強に到達する前に、何度も集団に潰され、時間と資源を浪費することになる。


彼は、己の信条と、自己の目標達成を天秤にかけた。


2. 効率のための屈服

レイジは、闘技場ロビーへと戻った。そこには、前日の勝利に酔いしれるゾルグたち『鉄壁の傭兵団』が陣取っていた。ユノたち『きらきら☆乙女連盟』は、レイジに声をかけることもできず、遠巻きに見つめている。


ゾルグはレイジの姿を見ると、勝ち誇ったように笑った。


「おう、ソロ野郎。懲りずに戻ってきたのか? もう一度、地面を這いつくばりたいか?」


レイジは、ゾルグたちの中心へと、迷いなく歩み寄った。そして、周囲の全員が息を呑む中、彼は深々と頭を下げた。彼の冷徹な顔には、計算された表情が張り付いていた。


「ゾルグ殿。昨日は、私の愚かな独断専行が、あなた方を苛立たせてしまった。私は、集団の力、そしてリーダーの卓越した統率力を過小評価していた」


ゾルグは目を丸くした。


「あ、あぁ? お前が、頭を下げて……集団の力を認めるだと?」


レイジは、さらに言葉を続けた。彼の声は平坦だが、ゾルグの優越感をくすぐるように調整されていた。


「私は、あなた方の集団戦における技術に感銘を受けた。私の持つソロでの効率的な戦闘データは、あなた方『鉄壁の傭兵団』の集団の力をさらに高めることに貢献できると確信している」


レイジは顔を上げ、彼の目には、かつての「絶対零度」の孤高の輝きはなかった。そこにあるのは、「道具」としての価値を示す冷たい光だけだった。


「どうか、私をあなた方のギルドに加えていただきたい。最強への最短ルートは、最強の集団に身を置くことだと、私は結論を出した」


闘技場のロビーは、完全な静寂に包まれた。ユノたちは絶句し、その場に立ち尽くしている。


ゾルグは驚きから一転、歓喜の笑みを浮かべた。


「ハハハハ! 最高だぜ! あの生意気な絶対零度のレイジが、俺たちの軍門に下るとはな! いいだろう。俺たちは、使える道具は歓迎する」


ゾルグはレイジの肩を掴み、大声で宣言した。


「レイジ! お前は今日から『鉄壁の傭兵団』の一員だ! ただし、お前は俺たちの犬だ。わかったな!」


「承知した」レイジは即座に答えた。彼の心の中では、屈辱も感情も一切なく、ただ**「最短ルートの確保」**という計算だけが残っていた。


彼は、自分が最も嫌悪する「集団」に、一時的な安寧と、最強への足がかりを求めたのだ。絶対零度のソロプレイヤーは、その信条を曲げ、効率という名の「堕落」を選んだ。


3. 最強の観測者

闘技場の陰、人目に触れない場所で、一人の黒い重装甲のアバターが、その光景を全て見ていた。アヤだ。


彼女の顔には、冷笑が浮かんでいた。


「やはり、その程度か、レイジ」


アヤは静かに闘技場を後にした。彼女の予想は確信に変わっていた。


「孤独を突き詰められない者に、『最強』の資格はない。彼は、自ら集団という名の**かせ**をはめた。これで、私の邪魔になる要因は、完全に消えた」


アヤの足音だけが、静かな通路に響いていた。

アヤの視点

私の予想通りだった。レイジは、集団という名の暴力に屈した。


彼は「効率」のために、彼が最も重視していた「孤高の美学」を捨てた。ソロプレイヤーにとって、集団への依存は、自らの力を否定することに等しい。彼は、自ら最強への道を断ち切ったのだ。


あの時、彼が私とのPvPに応じていれば、まだ道は残されていた。だが、彼は最短ルートという名の「安全な道」を選び、ゾルグという低級な集団の犬になることを選んだ。


これで、彼が私にとっての脅威となる可能性は完全に消滅した。彼は、もう「ソロの最強」ではない。ただの、集団に埋もれた凡庸なプレイヤーだ。


彼の行動は、私が信じる「絶対的な孤独と力」こそが真理であることの、何よりの証明となった。この世界で、私に並び立つ存在はいない。

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