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エターナル・アース  作者: 沼口ちるの


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第六話:ソロプレイヤーの脆弱点

1. 観測される絶対の力

レイジ(伊達ソウジ)は、アヤの提案した「取引」を拒否しなかった。彼は、アヤがゾルグ率いる『鉄壁の傭兵団』を相手に、いかに五対一の集団戦を制するかを、完全に観測する必要があったからだ。


闘技場の観客席は熱狂に包まれていた。ユノたち『きらきら☆乙女連盟』の少女たちも、観客席の隅で固唾を飲んで見守っている。


レイジは、アヤの動きに集中した。


試合開始の合図と共に、ゾルグたちは連携を取り、アヤを包囲しようと動く。ゾルグは巨大な戦斧を振りかざし、同時に他のメンバーは遠距離からの牽制と魔法の詠唱を開始した。


「一人を相手にするには十分すぎる布陣だ。集団戦のセオリー通り」


レイジは、ゾルグたちの動きを冷静に分析した。この配置ならば、アヤは最低でも数発の遠距離攻撃を受けることになる。


しかし、アヤの動きは予測を超えていた。彼女は防御を捨て、逆に敵の包囲網の穴、最も弱く連携が途切れる一点に向かって、まるで弾丸のように突進した。


ガシャン!


アヤのブラックオニキスが、包囲網の外縁にいた魔法使いに叩きつけられる。重装甲の彼女が、敵のリーチの内側に入り込むという常識外れの戦術。魔法使いは詠唱を中断させられ、そのまま一撃で戦闘不能となった。


「ぐっ、二人を失った!」ゾルグが焦りの声を上げる。


アヤはその後も、驚異的な判断力で、ゾルグたちの連携が途切れる瞬間の、最も危険な選択肢を突き続けた。彼女のプレイスタイルは、防御ではなく、攻撃によって敵の行動を強制し、戦場を支配することに特化していた。


五分も経たないうちに、ゾルグもまた、アヤの容赦ない追撃の前に膝を突いた。


WINNER:アヤ

闘技場は静寂に包まれた後、熱狂的な歓声に包まれた。


レイジは、観測を終えていた。


(彼女の強さは、私の「一点突破」と異なり、「絶対的な威圧」による戦闘支配だ。正面からの戦闘は、私の最も避けるべき状況だ)


2. ぼこぼこにされるレイジ

アヤは、闘技場から静かに退出した。彼女の視線は、観客席のレイジに向けられていた。


「約束通りだ、レイジ。次は君の番だ」


レイジは、アヤのPvPの誘いに応じるつもりはなかった。彼は、アヤとの戦闘データは得た。あとは、この場を静かに離脱するだけだ。


「無駄だ。私はルールに乗らない」


レイジがそう言い残し、観客席の影に消えようとした、その時だった。


「どこへ逃げる、ソロ野郎!」


背後から、怒声と共に大斧が振り下ろされる。倒されたはずのゾルグと、『鉄壁の傭兵団』の残党が、闘技場の観客席で、レイジに襲いかかったのだ。


彼らは、アヤに敗北した屈辱を、同じソロプレイヤーであるレイジに晴らそうとしたのだ。


「ルールだと? 俺たちは負けたが、お前は勝者でもねえだろうが! ここで集団リンチの現実を教えてやる!」


PvPエリア外での、集団による奇襲。レイジは、PvPにおける「ルール」という安全装置の外側、彼の最も苦手とする無秩序な集団戦に引きずり込まれた。


「くっ……」


レイジは、即座にダガーを抜いたが、多人数による無秩序な包囲は、彼の得意とする一点突破を封じた。彼が一人を戦闘不能にしても、他のメンバーが即座にそれをカバーし、回復を施す。


「どうした、レイジ! 絶対零度の観測者様よ!」


ゾルグは回復ポーションを飲みながら、大斧でレイジの防御を打ち砕く。レイジの強さは、アヤのような集団制御ではない。彼は、敵の連携を分断してこそ真価を発揮する。


しかし、この狭い観客席では、分断は不可能だった。


レイジの身体は、ゾルグの大斧、魔法、そして剣士たちの連携攻撃を受け続けた。彼のHPはみるみるうちに減少し、彼の黒いアバターは、土埃と泥にまみれていく。


「これが、ソロの限界だ! 覚えとけ!」


ゾルグの最後の一撃が、レイジの胸部に叩き込まれた。


YOUAREDEFEATED

レイジ(ソウジ)は、屈辱的な敗北を喫した。彼の冷徹なソロの美学は、PvPのルール外で、集団の力によって無残に打ち砕かれたのだった。

ユノ(ピンク髪の少女、タンク)の視点

私は、観客席の隅で、その光景を見ていた。


レイジさんが、ゾルグたちに囲まれて、殴られ、蹴られ、倒される。PvPエリア外で、卑怯な集団リンチだった。レイジさんは、アヤさんの時みたいに、一瞬で敵を倒すことができなかった。


レイジさんが最後に倒れた時、私は立ち上がって叫びたかった。卑怯だって。でも、足が動かなかった。


私たちは、レイジさんに「指導者」になってほしいなんて言っていたけれど、結局、何もできなかった。助けることも、何も。私たちがいたら、レイジさんの邪魔になるだけだって、また証明されちゃったみたいで、すごく悔しい。


あの時、もし私たちがレイジさんの盾になっていたら……。でも、今の私たちには、そんな強さはない。


アヤさんは強すぎる。ゾルグさんたちは卑怯すぎる。そして、レイジさんは……一人で戦いすぎ。


レイジさんは、今、何を考えているんだろう。悔しいのかな。寂しいのかな。私たちは、レイジさんの力になりたい。でも、どうすればいいんだろう。このままじゃ、本当に何もできないまま終わっちゃう。

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