エピローグ:効率の残響と孤独の再会
1. 伊達ソウジ:破綻した効率の代償
数日後、伊達ソウジは、静かな自室でデータの再検証を続けていた。『エターナル・アース』のサーバーは完全に停止し、復旧の目処は立っていない。彼の部屋は、未だに「ナンパ師」としての派手な白い軽装と、金髪のウィッグが残されている。
彼は、自分のログに刻まれた「絶対零度の効率神」への昇華データを何度も見返した。
「論理的には完璧な結論だ。極限の憎悪は、全ての論理と価値観を無に帰す。私の効率計算は、感情という特異点の存在を証明した」
ソウジは、満足していた。彼は、データとして究極の真実を手に入れた。
しかし、彼の身体と心には、今まで感じたことのない**「疲労」**が残っていた。彼の効率的なルーチンは乱れ、食事や睡眠のリズムが完全に崩れていた。彼は、アヤの憎悪とユノの感情の波に触れたことで、自己のシステムにノイズが混入したことを自覚していた。
(最も非効率な感情が、最も効率的な私のルーチンを侵食している。これは、アヤの復讐か?)
ソウジは、初めて「自己の制御不能な状態」に恐怖を感じた。彼は、効率のために感情を排除したが、排除したはずの感情の残響に、現実世界で苦しめられていた。
2. きらきら乙女連盟:現実の絆
一方、ユノ、アリス、リサの三人は、ゲームが消えた後も、頻繁に連絡を取り合っていた。彼女たちは、レイジの冷酷な計算、アヤの屈辱、そして自分たちの非情な戦略を共有した、唯一の仲間だった。
ユノの自宅。アリスとリサが訪れ、三人でリビングに集まっていた。
「アヤ先生……本当に、神様になっちゃったのかな」ユノは、悲しそうに呟いた。
「神じゃないわ。彼女は、私たちの経験の結晶よ」アリスは言った。「レイジの効率も、私たちの絆も、全て彼女の憎悪というフィルターを通って、あの結末になった」
リサは、少し前向きな表情を見せた。「でも、私たちはバラバラにならなかった。ゲームがなくなっても、私たちはこうして会っている。レイジの効率計算は、私たちの絆までは壊せなかったわ」
彼女たちは、ゲーム内の非効率な感情の力を信じ、現実世界でもその絆を深めていた。アヤの憎悪という極限の経験は、少女たちの友情を、永遠に壊れない鋼鉄の絆へと変えたのだった。
3. 天野アヤ:孤独な日常への帰還
アヤの現実世界での名前は、天野アヤといった。
彼女は、ゲーム内のアバターと同じように、現実世界でも孤独な存在だった。彼女は、自室の椅子に座り、ぼんやりと外を見ていた。
彼女の心は、ゲーム内のあの極限の憎悪から解放され、今は静かな平穏に包まれていた。彼女は、全ての屈辱から解放されたのだ。
その時、彼女のスマホに、見知らぬ番号からメッセージが届いた。
メッセージ:天野さんへ。伊達ソウジです。あなたが証明したデータは、私にとって究極の真実でした。一度、現実で会って、この「非効率な現実」について、効率的に議論しませんか?
アヤは、そのメッセージを見て、初めて静かに、微笑んだ。それは、憎悪や狂気ではなく、ただ純粋な、諦めと、わずかな興味が混ざった笑みだった。
「伊達ソウジ……現実世界でも、私に効率という名の屈辱を与えようとするのか」
アヤは、メッセージを消去せず、スマホを静かに置いた。
彼女の復讐は、ゲームを終わらせただけでなく、現実世界で、彼女と、彼女を追い詰めた者たちとの間の、新たな「効率と感情の戦い」の序章となったのだった。
[『エターナル・アース』 完]




